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引きこもり賢者、一念発起のスローライフ 聖竜の力でらくらく魔境開拓!  作者: みなかみしょう
第十四章『北から来るものと例の件』

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185.我ながら緊張感がないなと思っていると、周囲のドワーフ達が驚愕していた。

 俺が席に座ると同時、店内の雰囲気が様変わりした。


「おお、噂の客人じゃ客人じゃ」


「飲み物と食べ物じゃ! 客人! 食べられないものはないか!?」


「ここの肉料理はドワーフ伝統の調理法じゃ、これを食べておけば自慢できるぞい!」


 周囲のドワーフがそれぞれ料理や飲み物を持ち寄ってきたのである。テーブルと椅子も同時に動かされ、店内の配置がいきなり変わってしまった。


「……これは大丈夫なのか?」


「気にするでない。ドワーフの多くは出不精じゃが、同時に外からの情報に飢えておる。イグリア帝国の皇帝が来てから聖竜領については話題の種じゃったからなぁ。特にここではの」


「んだんだ。役職付きがおおいからのう」


 ディリンの隣にいるドワーフが楽しそうに笑いながらそう言った。そうか、ここにいるのはドワーフ王国の重鎮かその関係者なのか。歓迎しているのも本音なら、知らない地域の情報収集についても本音というところだろう。


「わかった。俺の知っている範囲で良ければできるだけ答えるようにする」


 その一言に周囲がおおっとざわついた。


「なかなか豪快な客人じゃのう。情報は出し渋る方が価値がでるもんじゃぞ?」


「俺は聖竜領のことなら知っているが、イグリア帝国の政治的秘密なんかは知らないからな。領地に来ればわかるようなことしか話せないんだ」


 事実である。実際のところ、視察をしたディリンは聖竜領の大体の所を把握している。今更珍しい情報など吐き出せない。


『アルマス。そこの肉料理、気になるのじゃ。保存を効かせる方法か調理法か、いや、魔法で保管して持ち帰るとかじゃな……』


『聖竜様、落ち着いてください。後で対応しますから』


 聖竜様といえば見慣れない料理にご執心だった。 

 我ながら緊張感がないなと思っていると、周囲のドワーフ達が驚愕していた。


「い、今目が金色になったぞい。噂どおりだ」


「うむ。これこそアルマス殿が聖竜様の眷属である証よ。こうして偉大なる六大竜の一つと話をしておるのじゃ」


 驚くドワーフに説明するディリンの言葉でようやく俺に原因があったことに気がついた。なんかこういう反応も久しぶりである。


「偉大なる六大竜、聖竜様はなんと?」


「ドワーフの料理など、見慣れないものが多いから興味を持っておいでだ」


 事実をそのまま話すと聖竜様の印象に影響するので少し遠回しにしておいた。


「聖竜領の石像に供え物をすると消えるのじゃ。それは儂も見てきたぞ」


 ディリンの補足に再びドワーフ達がどよめく。


「そ、それは凄い。ちょっと見てみたいのう」


「五十年ぶりに外に出る時が来たかもしれん……」


 一部が真剣に聖竜領への旅行を検討し始めた。そのうち聖竜様のところに来るかもしれないな、土産付きで。

 そんな将来のことを考えつつ、俺は手近にある肉料理に手を付ける。味付けは濃厚で、肉は程よく堅い。食べ応えがある。酒と相性が良さそうだ。スティーナ辺りが好みそうだな。

 

「さあさあ、せっかくじゃから歓迎しつつ色々聞くと良い。アルマス殿、無理な質問には答えないで良いのじゃ。ここの食事代として雑談していくといいのじゃ」


 ディリンのその発言から、本格的な質問が始まった。


「山を動かしたというのは本当かの? 『嵐の時代』の生まれだとも聞いたのだがの?」


「どちらも本当だ。聖竜様の眷属になってそろそろ四四〇年になる。地形を動かすのは聖竜様のお力だな」


「聖竜領では普通に薬草を育てるだけで凄い力を得ると聞いただが」


「植物の効果が強くなるのは一部の畑だな。あと、俺が育てるだけでも結構違うようだ」


「ゴーレムを大量生産して土木工事しているというのは本当かのう? どこから魔力を確保しとるんじゃ?」


「春に来ればゴーレムの工事を見られるだろう。魔力は俺が供給しているよ」


「やたら沢山メイドがいると聞いたんじゃが……」


「事実だ……」


 順調に進んでいた質問だったが、次の発言で空気が凍った。


「アルマス殿はその杖で魔剣を折ったと聞いたんじゃが。本当かのう?」


 老ドワーフの中でも一際逞しい人物の問いかけに、周囲の面々も表情を厳しくした。

 恐らく、鍛冶に関わるものなのだろう。

 武器として最強ともされるドワーフの魔剣。それを俺が折ったことがあるのは事実だ。

 サンドラ達が聖竜領に来た最初の年、俺は目の前に立ちはだかったマイアの持つ魔剣を容赦なく叩き折った。


 もしかしたら、ドワーフ達の誇りを傷つけるかもしれない。

 そう思いつつ、俺は過去の出来事をそのまま伝える。 


「本当だ。聖竜様から授けられた杖に魔力を込めて、俺はドワーフの魔剣を折った」


「……なんと」


 質問した老ドワーフは絶句していた。今更だけど、罪悪感が芽生えてきたな。


「……素晴らしい! 是非ともその杖の材質を教えて欲しい! 見るだけ! いや、ちょっとだけ一部欲しいのう! 魔剣を何本か用意するからいっそ実演も!」


 怒ったりがっかりするかと思ったら、興奮気味の俺ににじり寄ってきた。恐い。


「ドワーフとしてはアルマス殿の杖が気になりますのじゃよ。魔剣を折った素材がわかれば、もっと強い魔剣が作れる」


 彼らの好奇心は俺の予想以上だったようだ。

 困ったな、杖の素材なんて知らないぞ。聖竜様に聞いてみようか。

 そう思った時、場に新たな人物が現れた。


「面白い話だな。我にも是非聞かせてくれ」


 聞こえたのは張りのある若々しい男性の声だ。

 周囲の老ドワーフ達が自然と道を開け、年若いドワーフが俺の前に立つ。


「ギオーグと申す。このドワーフ王国で、王などをやっている者だ」


 ドワーフ王国訪問初日。俺は大物を釣り上げていた。

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