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引きこもり賢者、一念発起のスローライフ 聖竜の力でらくらく魔境開拓!  作者: みなかみしょう
第十二章『三年目すごく忙しい春』

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142.賑やかな春のはじまり

 暖かい日が続き、聖竜領に春が来た。

 昨年も忙しかった春だが、今年は比較にならない賑やかさだ。

 

 まず、降雪と共に停止された全てが再開された。

 クアリアから職人達がやって来て、領内各所で泊まり込みで南部との街道工事の作業が続く。それに加えて聖竜領とクアリア間の街道工事も始まった。例のレールを敷設するのは近くて作業のしやすいこちら側からという話になったためだ。

 

「レールというのは思った以上に重そうだな」


「ゴーレムが使えなかったら大変な作業になってたわね。冬の間、ロイ先生がクアリアに行って色々相談してたわ」


「その成果だな。これなら、作業時間も短そうだ」


 俺とサンドラはレールの敷設作業を確認するため、聖竜領側の街道を見に来ていた。

 目の前では細身で長い指を持ったゴーレムが、鉄でできたレールを持って、設置用に一度掘り返して加工された街道に置いていた。

 一度作った街道を再加工するために新たなゴーレムがいくつか考案され、それらは順調に稼働しているようだ。


「この街道でレール馬車が走るようになれば、資材の運搬が早くなるから色々と便利になると思うの。本当は街道自体を広げたかったのだけどね」


「さすがにそこまで手は回せないか」


「ええ、効率重視ね。お金の問題もあるし」


 クアリア間の街道は聖竜領にとって生命線だ。ここが迅速になれば今年待っている数々の開発が捗ることだろう。本音を言えばもっと手を加えたいのだろうが、人材は有限だ。クアリアに各地からの職人が集まっているとはいえ、そこまで人手が回らない。


「農地の方も上手くやれているみたいだな」


 今いる街道は比較的見晴らしのいい場所で、聖竜領西部の農家が点在している地域が目に入った。

 そこでは農家の人々がゴーレムに命令を出し、畑を耕しているのが目に入った。昨年作った水路が太陽の光を反射して、牧歌的な光景を生み出している。

 子供達も手伝って、一家総出の作業をしている中、元気そうに畑の様子を見回るアリアの姿が見えた。


「水の確保もできたことだし、今年は少し農地を広げるように言ってあるの。今後人が増えるから自給できる食糧は多くないとね」


「すると、農家も増やすのか?」


 俺の問いかけに、サンドラが頷いた。


「近いうちにマノンがクアリアから連れてくる予定なの。職人達も沢山来るからそこらじゅうで建築が始まるわ」


「すでに準備は進んでいるしな」


 聖竜領内は今、建築系の職人が懸命に働いている。ダン商会の宿屋の近くに、別の商会の建物をはじめ、準備が進んでいる。近いうちに資材が運び込まれるそうだ。


「来年の春には村らしい形になっているでしょうね。港町の方は、少し先の話になりそうだけど」


「そうなのか? いや、さすがに手が回らないな」


「ええ、東都とやりとりしたのだけれど、南部の湖と海岸の間に一つ集落を作って、代官を置く予定なの。まあ、人が見つからないのだけれどね」


「マノンじゃ駄目なのか?」


 苦笑するサンドラに言うと、彼女は真顔になった。


「絶対だめよ。マノンがいなくなったらわたしの仕事量が増えてしまうもの。そうでなくても、クアリアとのやりとりをお願いできる人は他にいないし」


 強い意志でもって言われた。マノンはサンドラの仕事をかなり代行している。今もクアリアに行って細かい話をしているところだ。帝国貴族の内情に明るく優秀という貴重な人材を、領主も近くに置いておきたいのだろう。


「それもそうか……。すると、代わりの者を探さないといけないか」


「先の話だけれどね。……一応、お父様にも相談してみるわ。仕事の人選なら間違えないだろうから」


「あまり本人の前でそういうことを言わないようにな」


 サンドラの口から父親のことが出るようになったのも、冬の間に起きた大きな変化だろう。仕事上とはいえ、こうしてやり取りできるのは良いことだ。


「ふと思ったんだが、俺はともかく、サンドラのスローライフはどんどん遠ざかっていくな」


「……やっぱりそう思う?」


「ああ、そう思う」


 帝国皇帝を始め、多くの要人に目を付けられた聖竜領はしばらく開発で賑やかになるだろう。すると当然、領主であるサンドラの仕事は増えていくわけで、最終目標であるスローライフは遠ざかる。


「俺は基本、森の中で畑の世話と魔力供給をすればいいんだが、サンドラはそうもいかない。大変だな」


 気軽に言うと、サンドラが恨みがましい視線を向けてきた。


「……絶対に巻き込んでやるわ。最初に来た時、一緒にのんびり過ごせる場所を作ろうって言ったのに」


 なんだか怒っていた。


「なにもそんなに怒ることないんじゃないか?」


「アルマスだけのんびり過ごすなんてさせないわ。それにきっと、何かしら厄介事がおきるもの」


 縁起でも無いことを言うな。ただでさえ忙しいのに。


 サンドラの機嫌は近くで黙って控えていたリーラが「お嬢様、その辺りで」というまで直らなかった。

少し書けたので更新再開です。

多分、週一回か二回の更新でいくことになります。

良ければ今後もお読み頂けると嬉しいです。

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