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「妖狐の血」

第16話「妖狐の血」

黄昏時、晴明が屋敷の庭を眺めている

「晴明よ、本当に俺が出るべきなのか?」

そう1人呟き手を眺めている、その手は白く綺麗で戦いなどとは無縁のように思えた

「ただいま戻りました!」

智也とメディカが屋敷に戻ってくる、同時に書斎の前に魔方陣が紡がれアンデルセンが戻ってくる

「上手くいってよかった、これで失敗してたら遅刻するところだったな」

アンデルセンは晴明の横に腰掛ける

「晴明から聞いたぞ、俺のことはギリギリまで隠し通してくれよ」

「勿論、それにしてもその晴明という呼び方はどうにか出来ないのか、こっちが聞いていてややこしい」

晴明はフッと笑う

「じゃあ俺のことは晴明(はるあき)と呼べ、昔晴明にそう言われたことがあってな」

晴明(はるあき)か、同じあって違うお前にはピッタリかも知れんな」

「じゃあ俺は日が落ちるまで待機させてもらうよ」

はるあきは立ち上がりその場を去る

「アンデルセン今日の作戦はあるの?」

入れ替わりで智也が来る

「今日は一点集中でいく、契約者のいる幻想種三体の相手をするよりも先に葛の葉を倒しその後に幻想種を倒す方が幾分か楽だろう」

「じゃあ葛の葉の相手は私がするわ、智也はダムザが現れたらそっちの相手をして、昨日私と戦ったやつならアンデルセンでも対処できると思うわ、問題は3人目だけどどんな奴だったの?」

「夢魔の類だ、戦闘慣れしているわけでは無さそうだったが魔力は桁違いだぞ、それにだ葛の葉の相手は晴明がやる、お前にはやらせんぞ」

アンデルセンの提案に僕とメディカは驚きを隠せない

「あいつに母親と戦えっていうわけ?無理に決まってるでしょ、そもそも一度負けてるじゃない」

「晴明なら大丈夫だ俺が保証するあいつの母だからこそ葛の葉はあいつがやらなくては意味がない、だからお前は2人の足止めを出来るか?智也はメディカの言った通りダムザを頼む」

晴明さんが葛の葉と戦うことには不安が残るがもうじき日が落ちる、そろそろ備えなければならない

「じゃあ僕とメディカは昨日よりも中心よりで戦うね」

「そうね、葛の葉は晴明に任せることにするわ、でも危なくなったら私も手を出すわよ」

メディカと僕は所定の位置まで歩いて行く、今回はユリアとマキアも最初からついて来るようだ

誰もいなくなった庭でアンデルセンは書庫の扉を開ける

「出番だぞ探偵」

そう言ってアンデルセンは指輪をホームズに向かって投げる

「僕も戦場に出るのかい?出来れば智也には会いたくないんだがね」

「お前の役目はこの屋敷の警備だ、きっとサキュバスはまたここに来る、何の為だかは知らんが結界を破ろうとしているしな」

「陰陽師は魔術師とは違うんだろう?屋敷の名に五芒星が付いているくらいだ、屋敷自体が彼の力と関係してるんじゃないか?」

「確かにそれはあり得るな、流石は探偵と言ったところか」

「褒めてくれても何も出ないがね、サキュバスの相手は僕に任せてくれ、守るだけなら何とかなるだろう君はどうするんだい?」

「俺は司令塔として動きたいところだが今回はそうもいかんらしい、どうやら本気でやらんとこちらに勝算は無いみたいだからな」

「それは結構、僕も君の力を見てみたかったんだ、あっそうだ」

ホームズはふと何かを思い出したようにポケットを探る

「君から預かっていた紙だよ指輪を返してもらったんだからこっちも返さないとね」

ホームズは紙をポケットから取り出しアンデルセンに渡す、だがアンデルセンは受け取らない

「それはお前が持っておけ、指輪は返したが契約を切る気はないぞ、一方的だが了承はしてくれるよな?」

「弱いところをついてくるね、だが今の僕には君と契約する以外の選択肢がない、次の制約は何だい?」

「それを所有し続ける事だ、指輪は確かに強力だが俺を倒すには至らんだろう、今のお前が1人で俺を倒すにはそれを使うしかないというわけだ、だがそれを使えばお前は代償を払う単純だろう?」

「了解した、どの道君を裏切るつもりは無いよ、ではこっちもそろそろ動こうか」

ホームズは書庫を出て屋敷の裏に回る

「では俺は開戦の狼煙でも挙げるとするか」

アンデルセンは本を手に持ちニヤリと笑う


戦場

晴明(はるあき)が1人ただずんでその時を待っていた、日が落ち世界が静寂に包まれる時こそが怪異達の時間なのだ、そしてそれは同時にはるあきの時でもある

「血が呼んでいるのか....葛の葉、貴方が妖狐であるなら俺がやらねばならない」

辺りに妖気が満ちる、遠方に怪異の大軍が見える

「純血なる妖狐の力を見せてやろう」

はるあきに妖気が吸い上げられその身に尻尾が宿る、これこそが妖狐の証、怪魔の力を持つ安倍晴明のもう1つの一面なのだ

その時を屋敷の方から叫び声が聞こえた

「物語をここに紡ぐ、機兵が終わらすは戦か人かその答えを身を以て知るがいい<機械兵-レプテム>!」

妖気に満ちた大地に100以上の魔方陣が現れる

「相当大規模な魔法ね、あんたは派手なのが好きわけ?」

「まあ見ていろ今夜で決着をつけるなら怪異はいるだけ邪魔だからな」

魔方陣から光と共に何かが出てくる

「あれってゴーレム?」

智也が地下で戦ったものとほぼ同じ見た目をした機械兵がずらりと並び千を超える怪異に向かって進撃を始める、それを皮切りに怪異も進撃する

「魔法が残っていた時代のものとは比べ物にもならんがこれだけいれば少しは戦況も変わるだろう」

怪異が機械兵とぶつかる果たしてこれでどれだけ削れるのだろうか

「なんか微妙な感じじゃない?」

押されてこそいないが怪異と同じレベルの戦闘能力しかないように見える

「人の物語では物の怪の類には効かんということか、では次だ物語をここに紡ぐ、祈りと共に千の矢は放たれる、ならば其れは邪を砕く神罰とならん<祈祷を放つ弓-プレイヤーショット>!」

アンデルセンの手に弓が現れる、アンデルセンが矢のないそれを引くと空中に無数の魔方陣が現れ魔法の矢が落とされる、矢は怪異と戦っているゴーレムも巻き込み残滅していく

「これは無差別攻撃だ、上手いこと避けてくれよ」

アンデルセンはさらりと口にする

「何よそれ!」

智也とメディカは必死にその矢を避けながら怪異を倒していく

「作家!これは俺の戦いだ要らぬ事をするな!助けなど必要ない、燃え盛れ我が血よ<蹂躙せし煉獄-妖炎不知火>!」

はるあきが手をかざすと目の前を紅蓮の炎が貫き怪異もゴーレムも消し飛ばし奥への道ができる

燃え盛る大地をはるあきが器用に矢を避けながら奥へと走り抜ける

「今夜の晴明さん何かおかしくない?」

僕は戦いながらユリアへ話しかける

「あれは式神を使った魔法なんかじゃない妖術だよ、一体どうなってるんだ」

「助けはいらんときたか、ならばお手並み拝見といこうか」

アンデルセンが手を振り降ろすと天空から落ちる矢が止まりゴーレムが砕け散る

「矢が無くなったのはいいけどあれは本当に晴明なわけ?」

メディカが光の剣を持ち戦場を舞いながらアンデルセンに尋ねる

「晴明のもう1つの一面ってとこだ、詳しいことは戦いが終わった後に説明する、今は目の前の事だけ考えておけ」

「はいはいわかりましたよっと」

メディカは目の前の敵を斬り伏せながら答える

一方晴明(はるあき)は怪異を蹴散らしどんどん先へと進んでいる

「葛の葉よ俺はここにいるぞ<風妖術-荒ぶる風雲の刃>!」

旋風が木々を裂き怪異を吹き飛ばす、風が止んだ時にははるあきの周囲がまるで円状の型にくり抜かれたように何も無くなっていた

「今宵は随分騒がしいのお」

美しい声が戦場に響く、そして妖力が一点に収束し人の形を作り上げる

「やっと会えたな母上、今宵の俺の身は晴明にあらず、人にもあらず、存分にその力を振るうがいい!」

「坊やはどうしました?」

葛の葉は静かに尋ねる

「貴方がこの世界に召喚されたのは俺と戦うためであろう、ならばあいつの事など気にするな」

「我が用があるのは坊やだけじゃ、早々に立ち去るなら危害は加えんぞ?」

「俺は貴方を越えるために此処にいる、晴明は俺の召喚に巻き込まれただけだからな、悪いが封印させてもらった」

その一言で葛の葉の態度が一変する

「そうですか、なら貴方は死になさい!<貫き灰と化す魔-獄魔荊>!」

荊がはるあきに向かって螺旋を描きながら伸びていく

「そうだそれでいい!貴方は俺と戦うそれこそがこの戦争が与えてくれた機会なのだからな焔よ燃やし尽くせ<妖炎不知火>!」

炎が荊とぶつかり焼き尽くす、だがその炎は葛の葉までは届かない

「我が魔の伝承を此処に、空を裂き天より至る数多の光よ罪人を裁きたまえ<妖々樹雷-ロンゴルキア>!」

雷鳴が轟き葛の葉の足元に一閃の雷光が走るするとそこから雷の芽が生えはるあきへ向かってその枝を伸ばし成長していく

「雷樹とはな面白い、だが超えてみせよう<妖魔刀-闇夜>」

晴明(はるあき)の手元に妖力が集まり刀を形作る

「全て切り落とす!」

咲き乱れた雷の花が次々に宙へ舞う、大樹から切断された花はやがて弾け雷弾となりはるあきへ襲いかかる

「これしきのことっ!」

雷弾を受けながらも次々に雷樹を切断していく、闇が舞い光を散らす、幻想的な風景が広がっている

「我は此処で散るわけにわいかぬ!」

苦しそうな表情で叫ぶ

「俺は貴方を越える!」

雷樹が根元まで切断され葛の葉が無防備な状態になる

「貰った!<妖烈-破炎拳>!」

炎を纏った拳が葛の葉に迫る

「我はまだ負けぬ!魔の伝承を此処に、我が身は偽りっ....がはっ」

詠唱のさなか葛の葉が吐血する、その血がはるあきの腕にかかる

「ようやく終結か」

屋敷の屋根から戦いの様子を眺めているアンデルセンが呟く

「そうなのかい?今夜は随分と静かだったけど」

屋敷の裏でホームズが問いかける

「そうだな、今夜は幻想種も現れなかったしな」

「何かまずい事が起こらなければいいんだけどね」

ホームズが不穏なことを言う

「聞いてるかい?」

返事をしないアンデルセンに問う

「おかしい、何故とどめを刺さない晴明(はるあき)!」

晴明(はるあき)の拳は葛の葉を貫く寸前で止まっていた

「この血は...では貴方は!」

「だから言ったでしょう、貴方の役割は違うのですよ」

先程とは違いおっとりとした声で呆然と立ち尽くす晴明(はるあき)に話しかける、そして晴明(はるあき)に荊を突き刺す

「俺の勘違いだったか...アンデルセン聞いているんだろう晴明を...頼む...」

晴明(はるあき)は目を閉じる

「あの馬鹿が一体どうなってるんだ!」

アンデルセンは1人で叫んでいる

「この状況はまずいんじゃないかい?」

ホームズの問いかけでアンデルセンは我にかえる

「わかっている、物語は繰り返す<ライズ>!」

太陽の輝きとともに日が昇る、怪異達は光に当てられ影のように消えていく

葛の葉ははるあきを連れて夜の世界へと帰っていく

「こちらの損失は1人か、中々にまずい事になってきたぞ晴明」

晴明と晴明(はるあき)、そして葛の葉を繋ぐ血の因果

続くは明るい未来か暗黒の結末か

次話 人間か妖狐か


第16話いかがだったでしょうか?

この戦いにもいよいよ決着がつくかと思いきやまたもや葛の葉を倒すことは出来ませんでした

晴明(はるあき)が最後に気づいた事は一体...

では次の物語で


0時を超えていたのを忘れて次の日に予約してました、申し訳ありません!

本編は朝7時に投稿予定

感想等はこちらまで

https://mobile.twitter.com/atorietsubasa

※プロフィールにもURL貼っています

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