チート転生
前回の摩利子
メガネに追いかけられてマッチョと激突。
目を開けるとそこは、光差し込む雲の上で、目の前にはいかにも天女様といった出で立ちのお婆さんがいた。
あぁー、これ私死んでるパターンっぽいです。死因がマッチョと衝突死とか我ながら情けない……。呆然としている私にお婆さんが話しかける。
「あぁ摩利子ちゃん……。まだ若いのになんて可愛そうに……」
「やっぱり私死んじゃいましたか……。あれ? 私の名前ご存知なのですか?」
いわゆる神で、なんでも見通しておりますって感じなのだろうか?
「もちろんよ、お社のお掃除いつもありがとうね」
にっこりと微笑むお婆さんの回答で、なんとなく目の前の人物が誰なのか分かってくる。
実家にいくつかあるお社のうち、私が掃除していたのは、敷地の隅っこにこじんまりと祭られていた摩利支天様のお社だ。
私の名前の由来が摩利支天様だって理由で、掃除は私の日課だったし。
「卑しくも摩利支天様からお名前を頂戴しました摩利子でございます……」
私はガクブルする膝を折り、恐れ恐れ頭を垂れる。土下座である。
ふと思い出したのだ。ダディが「お社あるしカッコイイからこの子は摩利子ー」って名づけことを、それを知った今は亡き祖父が「神の名前を与えるとは何事ぞー!」っと激怒したらしいことを……。もし、摩利支天様お怒りだったら……。
「摩利子ちゃん、そんなに畏まらなくても大丈夫よ。私は摩利支天のただの従者ですから」
ガクブル震えていた体が正常に戻る。
「なんだーお婆ちゃん私と同業者じゃないですかー」
肩の荷がおりて普段の口調でお婆ちゃんに話しかける。
「もぉー私、神様だと思って全力で恐縮しちゃいましたよー。それに摩利支天様をさっき呼び捨てにしてましたけど、神様居ないところでも一応様つけないとダメですよー神様なんだし」
っと軽口を叩く。ビビリ損である。
「いやねぇ、孫を様付けで呼ぶのも気がひけてねぇ。ほんとうちの孫がお世話になりました」
にっこりと微笑むお婆ちゃん改め摩利支天様のご祖母様。
再び私はガクガクする膝を折り、おでこをこすりつける様に頭を垂れる。摩利子渾身の全力土下座である。
「ご祖母様とは露知らず! ご無礼! 私、申し開きのできないことを! どうかこのまま頭をお踏みください!」
神様の祖母に対して、なんて軽率な行動をとってしまったのだろう。慌ててなんかMっぽいこと口走っちゃうし。
「もーやーねぇ、私はただのお婆ちゃんなんだから、そんなことしなくても大丈夫よ」
恐る恐る顔を上げると、にっこりと微笑みがキープされたご祖母様のお姿。怒ってない、ギリセーフ。
とりあえず畏まらないでいいらしい。ぶっちゃけ私どうなっちゃうのかとか、色々聞きたいことはある。
しかし、見たこと無いけど荒ぶった神様? とかマジ怖い、私なんか多分消し飛ばせると思う。細心の注意が必要だ。
「そうでございますか、ではいくつかご質問させて頂きたく、摩利支天様は何処へ御出でですか?」
神様の従者が目の前にいるのだから、近くにいても当然、生前文献でしか見ることができなかった神様を拝謁できるとなれば、巫女としてはそれはもう喜ばしいことだ。
「あの子ねー「ここ最近マジ日本が平和で出番ないわー」とかいって、暇そうにしてたんだけど、10年位前に「我、新たな世界で武神と成り!」とかいって、それからずっと部屋に閉じこもってTVゲーム? とかいうのをやっててねぇ。お婆ちゃんTVゲームとか詳しくなくてね、少し触ってみたけどよくわからなくてねぇ。あの子は、TVの中の世界を救うとかいってたけど……。あれは何なの?」
うぉい! 神様引きこもってたのか! 一気に拝謁したい気持ちがダダ下がる。
それにしてもこの質問、なんと回答したらよいのやら……。
ご祖母様ちょっと寂しそうな顔してるし「それただの引きこもりです」とか本当のこというのは気が引けるる。私も外には出るけど、ゲーマーなので悪くは言いたくないなぁ……。私は少し思案してから言う。
「ゲームの世界は混沌とし、常に新たな救世主を求めおります故……。ご祖母様、死後の世界とはどの様なものなのでしょうか? 私はどの様になるのでしょうか?」
苦しい。ご祖母様の質問の回答が苦しい。まぁ嘘じゃない。
新たな質問で話の内容をそらす。
「そーねぇ、通常は新たに生まれ変る事になるわよ。まぁ、巫女だった摩利子ちゃんは、ここで従者として暮らしてもらっても構わないし、他に何か望みがあれば言ってね。叶えられることだったら叶えてあげるわよ」
なんと望みを叶えていただけるとな!
うーん悩む。生まれ変わるイコール記憶とか消えるだろうし、私が私でなくなるっぽいしなんか嫌だ。
従者としてここに残る。摩利支天様は気が合いそうだけど、多分気遣いからくるストレスで胃に穴が開きそうだから却下。私の望みか……。
「私! ゲームの中みたいな異世界に行きたいです! ゲームの主人公の様にバッタバッタと悪い魔物を退治したいです!」
思い切って身振り手振りしながら言ってみた。
アニメとかでよくある転移や転生。できるなら是非とも異世界に行ってみたい。リアルでモンス狩る生活とか楽しそう。
「おぉ……。女性の身で有ながら悪を打ち払いたいとは、なんと勇ましいこと! それでこそ摩利支天の名を持つもの!」
ご祖母様なんかぷるぷるしてる。感動してるっぽい。
こちらは、正直遊び感覚であるのだけど、とりあえず下げてた頭を上げキリッとした顔をする。キリッっとしとけば大体のことは、大丈夫だ。
「分かったわ! 摩利子ちゃんの望みを叶えましょう。以前、摩利支天が行きたがっていた世界があります。しかしその世界に、他の世界の神である、摩利支天自身が介入することはできず諦めてましたが、きっと助けを求める人が沢山いることでしょう。摩利子ちゃんには、その世界に今の転移してもらいます。ゲームの主人公の様な力に加え、お婆ちゃんの加護を付与するわ。お婆ちゃん神様じゃないけどそこそこの霊力をもっているから、異世界の摩利子ちゃんは今までとは違う、スーパーな摩利子ちゃんになっているわよ!」
「ご祖母様! ありがとうございます!」
スーパーなチートも頂けるとな! ご祖母様マジGOD! この人もう神様だよ。
私は、本日三回目の土下座を華麗にきめる。もう足はガクブルしていない!
「いってらっしゃい。摩利子ちゃん。健康には気をつけてね!」
次の瞬間、私を青白い光が包み、やがて私は異世界に転移する。
土下座のまま転移したため、おでこや膝に土がついてしまった。
しかし、これからの異世界ライフに胸を躍らせる私の顔は、最高にニヤニヤしていた。




