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っちょ!これ! 私の想像してた異世界転生と違います!  作者: 神籠神社
私、スーパーなマリコになりました。
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冒険者ギルドの洗礼

前回のクレーマーマリコちゃん

不動産屋を脅す。友達のおごりで隣町へ。

 冒険者ギルドに入る頃には夕方になっていた。この町結構広い、カノンちゃん曰く、この大陸で三番目くらいの都市らしい。

 冒険者ギルドの中に入ると、入り口近くに受付があって、奥は酒場になってるみたいだ。

 夕方だけど、ちょっと早い夕飯兼飲み会をしていて、二十人位の人がガヤガヤしてる。

 懸念していた水着姿の人も、二割程度で胸をなでおろす。ちゃんと鎧とか着てるし、髪の毛多彩な色が異世界っぽい感じ。

 早速、私の冒険者カードを作成してもらうため、受付のお姉さんが居る受付カウンターへ行く。


「お姉ーさん、久しぶりー」


 カノンちゃんが面識ある様子で気軽に声をかけると「っあ! カノンさん! ご存命だったんですねー。最近見なかったから心配したんですよー」っと笑っている。


「引退して森で狩人してたんだよー! でも! この度、マリコちゃんと一緒に再度ダンジョンを探索することにしたんだよー。ってことで、こちらのマリコちゃんの冒険者登録お願いー」


 私は、礼儀正しく「よろしくお願いします」とペコリとお辞儀する。

 カノンちゃんが銀貨二枚をお姉さんに渡すと、無地のカードを私に差し出す。銀貨1枚は千円だから登録料は二千円か。


「では、そのカードを両手で挟んで暖めてください、少しすると文字が浮き上がってきますので、文字出たら一度こちらに見せてください」


 手で挟んで十秒もしないうちに文字が浮き出す。なんかあぶり出しみたい。


 マリコ・セキ (ミコ):15


 なんか偉く簡潔なんだけど……。まぁ文字が出たしお姉さんに渡す。お姉さんはカードを見ながら台帳に記帳する。


「マリコ・セキさんですねー。職業ミコなんですかー。なんかレアっぽい職業ですねー」

「巫女って職業レアなんですか?」

「ここで働いて3年目ですけど初めてですよ。でもその括弧の部分に出る職業、いい加減なのであまり気にする必要ないですよ。カノンさんなんて(家出少女)だったし、ッブッブフ」

「ちょっと! ばらさないでよー! 今は狩人なんだから……多分」


 そんな感じで私達がキャッキャしながら話しをしていると、隣の受付にいた強面の兄さんが近づいてくる。


「おう! あんたらも今日冒険者登録か! オレは、ザイルの町から来たパイルだ! 地元じゃ荒くれ者で通っていて、腕っ節は確かだぞ! オレ様とパーティーを組め! まぁ拒否は許さねーぜ……」


 来ました……冒険者テンプレ的なのが来ました……。カノンちゃんが無言で睨んでいる。あぁ……なんか強面の兄さんも睨み返しちゃってるよ。受付のお姉さんは、はわわしてるだけ。


「んだーそっちのエルフ……文句あっかー表でろや!」


 男が一喝するとギルドの雰囲気が一気に変わった。


キン! キン! キン! キン! キン! キン!


 奥に居た冒険者達が、一斉に自分の持っている武器を、石床に打ちつけて男を睨む。バットの人達もコン! コン! っと音を鳴らしている。

 ギルドの雰囲気が急に変わって、男がオロオロしだしている。そして、私もオロオロする。

 その時、夕日を逆光に巨体の男がゆっくりとギルドに入ってくる……。


「オメェ俺のダチ公に何しやがった?」


 肩の凝りでもほぐすかの様に、その鍛え上げられた肩の三角筋を、バットでバンバン叩きながら男に語りかける。低い声で、脅す様に。

 その容貌に心あたりがった赤い髪! しかもモヒカンか!


「ボルボンボさん!!」


 カノンちゃんが呼ぶと「おぅ」っと返事をする。これがウンバボ族……。

 族だし首都グンマって聞いてたから、腰みのとかしてるんじゃないかと思ってたけど、見た目三十代前半で上半身裸、モヒカン頭でバット持って革のズボン履いてるとか……。世紀末の荒くれ者っぽい感じだ。


「っひぃ、すみませんでしたー」


 私達に絡んでいた男は、すっかり怯えてしまったららしく、受付途中っぽかったけど脱兎の如く駆け出す。

 奥にいる冒険者が「また明日出直してこいよー!」「ッハッハー俺様が教育してやろうかー」っと、なんか優しい野次を飛ばしている。

 そんな中モヒカンさんは、拳を突き出す。カノンちゃんも拳を突き出しコツンっとぶつけ「お帰り」っとモヒカンさんが呟き「ただいま!」っとカノンちゃんが返事する。

 その時逃げ出した男が、入り口で女の人にぶつかりそうになる。でも「っお、と危ない」っと、ひょいっと避ける。

 カノンちゃんがその女性を見て抱きつく。っと、友達が寝取られてしまった!


「メル姉! 久しぶりー!」

「おーカノンじゃないか! お前冒険者辞めたんじゃなかったか? 寂しくなって帰って来たのか?」


 カノンちゃんの頭をワシワシと撫でる。長い赤い髪を後ろに束ねた、背の高い綺麗なお姉さん。

 上半身に革の胸当てを着て、下半身は革のパンツを履いている。

 カッコイイ銀のバックルが着いたベルトがワンポイントでお洒落! 冒険者っぽい! しかしそれは、左手に持ってるバットを見るまでだ!! この人もウンバボ族か!!


「メル姉ー違うよー。わたしは冒険者に復帰したんだよ! これからはマリコちゃんと一緒にダンジョンを探索するつもり! こちらがマリコちゃん!」


 カノンちゃんが私の方に手を向けジェスチャーする。

 異世界民族との交流、ちょっとドキドキする。マッチョのモヒカンにも、ドキドキする。恋ではない。


「初めましてマリコです。カノンちゃんと一緒に冒険者になりました。その赤くて長い綺麗な髪……お姉さんもウンバボ族の方ですか?」


「っく! 私の赤髪を褒めるとはなんていい子なんだ! 最高の誉れだ! 私の名は、メルメナメヌナ! ウンバボ族の戦士だ! マリコ! カノンと仲良くしてやってくれ! コイツ、ダンジョンとかでコロっと死んじゃいそうだから守ってやってくれ!」


 よし! ゴマすり成功! そしてウンバボ族名前覚えにくい……。

 上機嫌で私に拳を突き出すメル姉さん。私も拳をぶつける。「これで私達はダチ公だ!」とか言ってニカって笑う。なんかカッコイイ。

 っていうか私、見た目は普通のか弱い女の子のはずなのに……守ってやってってカノンちゃんどんだけ弱いんだよ……。

 そんな事を考えてたら、今度はモヒカンさんも拳を突き出してくる。


「コイツのダチ公ってことはお前もダチ公だ。よろしくな! マリコ!」

「はい! よろしくお願いします!」


 拳をコツンとすると「困ったことがあったら俺らに相談しろよ! 何でもぶっ飛ばしてやるからな!」っと、男気溢れる言葉を頂戴する。


「フッフッフー。マリコちゃんはこう見えてすっごい強いんだよー。きっと自分で何でもぶっ飛ばしちゃうんだからー。証拠を見せてあげる! お姉さん! コイツの買取と賞金をよろしく!」


 そう言い切ってから、カノンちゃんが受付前にデモニアクベアを取り出しす。


ドサ!


 ウンバボ族のお二人もビックリしている。メル姉さんも「マジか……」っとか呟いてるし受付のお姉さんもまたあわわして「マスター呼んでくるー!」っと、言い駆け出す。

 奥に居た冒険者も集まってきて「おい、これ小銭拾いが殺ったのかよ……」「いや隣の女の子っぽいぞ」っとかボソボソ聞こえてきてちょっとした騒ぎになる。


「お前ら! 散れ! 散れ! おい! 荷物持ち! こんなところに置くな! 裏の解体所まで持ってってくれ。お願いします!」


 怒りながら頭を下げるギルドマスターと思われる禿げたマッチョに、お願いされてカノンちゃんが熊を仕舞う。一緒に解体所まで着いてって、肉屋っぽいおっさんに熊を渡した。


「もー。カノンちゃんそういう目立つ行為はあんまりしないでね」

「ごめんよー。久しぶりにギルドに凱旋しから自慢したかったんだよー」


 受付に戻り、賞金の金貨十枚と熊の買取で金貨三十枚の計金貨四十枚を貰う。金貨一枚で十万円である。

 四百万を一気にゲット……小金持ちだ! あまりの金額に慌てる私とカノンちゃん。


「カノンちゃん! あれだ! あれ! 無限収納にこれ入れて! それなら無くしたり盗まれたりしないよ!」

「っえ! こんな大金怖いよ! 持ちたくないよー!」

「落ち着きなカノン! 心配ならギルドに預けな。ギルドカードは持ってるんだろ?」

「あー! わたし預けたことなかったからすっかり忘れてたよ!」


 メル姉さんのアドバイスに従い、お金はカノンちゃんと山分けで二十枚に分ける。私とカノンちゃんの各自の口座に金貨十枚を預け、残りの二十枚をカノンちゃんの無限収納に格納する。

 カノンちゃんがそれでも多いとボヤいていたが仕方が無い。私がお財布買うまでとりあえず持ってもらう事にした。


「貧乏カノンが一気にリッチになったな! 無駄遣いするなよ!」

「小銭を大切にするカノンだよ! 無駄使いはしないよ! でもメル姉とボルボンボさんに、昔のお礼したいからそのうちご飯一緒に食べよーよー。ご馳走するからー」

「あぁー楽しみにしてるよ。私達は、明日からザイルの町の調査で一週間くらい出かけるが、終わったら一緒に飯食べような!」

「俺の聞いた話だと、昨日複数種類の魔物の群れに突然襲撃されたそうだ。お前らも気をつけろよ!」


 そう言ってモヒカンさん達は、ギルドの奥に入っていく夕食かな? っていうか今一緒に食べればいいんじゃないの? っと思っていたらカノンちゃんが私に話かけてくる。


「んじゃマリコちゃん今日泊まる宿を確保しよー」

「っあ、そうだよね! すっかり忘れてたよ」

「安い宿なら千円で相部屋のベットで五百円、更に安いのは馬小屋! 空いてれば五十円で済むよ」

「すみません、相部屋でない普通のお宿でお願いします。」


 カノンちゃん自給自足とか貧乏とか言ってたけど馬小屋経験者っぽい。上級者だ。


「んじゃ私の知り合いの宿屋行こー。普通の二人部屋もあると思うし」

「うん、とりあえず行ってから決めよう」


 ギルドを出て5分程で宿屋着く。近い。

 宿の名前は、風の声が聞こえるかい? 僕には聞こえるよ……君を幸せにしてあげてと言っている……だった。店の名前以外は大丈夫だったので二人部屋を借りる。一人千百円で朝夕の食事付き。

 早速夕飯を食堂で食べる。パンと野菜たっぷり謎肉のスープを美味しく頂く。

 そして夕食を食べ終わったカノンちゃんがテンション高く私に言う。


「よし! ご飯も食べた! 劇場行こー! 今からなら夜公演に間に合うと思うからー」

「劇場は今日行くの? 毎日やってるんじゃないの?」

「明日でもいいんだけど今日観たいだけ! だめ? 劇見るの初めてなんだよー」

「んーん、問題ないよ。今日見に行う!」


 もしかして、ウンバボ族との夕食スルーしたのは劇場行きたかったから!? カノンちゃん侮れない子……。

 英雄譚とかの物語が大好きなカノンちゃんは、劇とか凄いハマリそうだなぁ。とか思いつつ、私もこっちの世界の英雄、どんなものなのかと楽しみだった。

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