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っちょ!これ! 私の想像してた異世界転生と違います!  作者: 神籠神社
私、スーパーなマリコになりました。
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プロローグ


「摩利子あけおめー」


 初詣で混雑する神社。おみくじを引きながら手を振っているクラスメイト達に、私は「新年明けましておめでとうございます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます」と最高のスマイルで会釈する。


 そう、神社の娘である私にとって初詣は稼ぎ時! クラスメイトはお客様! っということで、おもてなしせざるをえない。

 地元でもそこそこ有名な神社なので、同じ学校に通っていたクラスメイトがやって来るし、昨年入学した高校の友達も新たにやって来て、知人だけでも結構な人数になる。


 母が早世して以来、お祭りの打ち合わせや地鎮祭などで呼ばれない限り、家でネットゲームに勤しむ我がダディも、一月いっぱいは割りとがんばってる。

 今年五歳になる弟くんも、袴姿でえっちらおっちらとご挨拶している。うん、働くダディ達輝いてる。


 私もせっせとバイトのお姉さんと一緒に、売店でお守りやおみくじを販売する。

 普段の制服姿では無い巫女服姿に、一部クラスメイトはおちょくったりもしてくるが、暴言を吐くこともできずイライラしつつ、営業スマイルで対応する。大人の対応。

 しかし、同じクラスの男子であるメガネの鈴木が言った「それってコスプレですかぁー? コスプレですかー?」は、アウトだ。かの者に呪あれ。メガネ割れろ。

 こちとら神社の子ですからそれなりに祝詞や祭事には詳しい、まぁ初心者以上プロ未満だけど、なんか非常に腹立たしい。


 あぁ早く正月休み終わらないかなー。

ダディと一緒にネットゲームでのんびりモンス狩りたいなぁ……。


 ***


 正月休みが終わり参拝者も落ちついた休日、ダディとネットゲームに勤しんでいたところ、クラスメイトのケイコちゃんから電話で買い物に誘われる。

 軍資金もお年玉で潤ってるので「OK牧場!」と、二つ返事をする。

 ケイコちゃんに「牧場?」っと腑に落ちない返答をされるも時間と場所を決める。周知度低いな元チャンピオン……。


 さっそく準備にとりかかる。久しぶりの繁華街なので気合入れておめかしする。

 玄関を開け小道を通ったところで、こちらの様子を伺うような人影が……。気味悪い。

 少し早歩きで横を通り過ぎようとしたら、その人物と眼が合う。


「まぁりぃこーさーん」


 それは、こちらににやけ顔で近づいてくる。それっていうかクラスメイトだ。


「メガネの鈴木!」

「メガネのって、それじゃ僕メガネ屋みたいじゃないですか!」


 メガネがイラっとしている様だが、こちらも新年早々、巫女服姿をコスプレ扱いされた恨みを忘れてはいない。ぶっちゃけこいつ気持ち悪い。


「っていうか下の名前でなれなれしく呼ばないで! 私の苗字は関! 気持ち悪い! そのメガネ割れろ!」


 まくし立てるように私が一思いに言い切ると「ぅあぁっあっあっあ」と嗚咽(おえつ)を交えながら泣き出した。ガチ泣きだ。


 もしかしなくてもこのメガネ、私にラブだったのだろうか? ちょっとえげつないことを言ってしまった気もするが、まぁ言ってしまったものはしかたがない。

 待ち合わせもあるしこの場をとっとと離れよう。


 足早に立ち去る私に、メガネが俯きながら「メガネは関係ないじゃんか……」などとブツブツ呟いていたが、突然何かに取り憑かれたかのうようにショルダーバックをゴソゴソと漁りだす。

 キチキチキチっと、カッターの刃を出す音に私が振り向くと、メガネの奥を真っ赤にしてこちらを睨んでいた。


「容姿端麗、純情可憐な摩利子さんが僕にそんな暴言を吐くなんて信じない! お前は偽者だ! ぶっ殺してやるろぉ!」


 最後思いっきり噛んでるよ! ってそんなことをつっこむ余裕はない!

 カッターを握り締めたメガネが、こちらにダッシュして来る。当然私もダッシュして逃げる。

 大声で助けを呼びたいけど恐怖で「ひぁ」って小声をだすので精一杯だ。

 私は小道を全力疾走する。日頃のゲーム三昧で、私の運動不足っぷりは半端ない。

 このままではメガネにすぐに追いつかれる!

 小道を抜ければ、少しは人通りが多くなる。そこまで逃げ切れれば。

 これ以上無いほど心臓がバクバクしてる。でもなんとか気合で小道を抜け――。


 ドン!


 強い衝撃で体が弾き飛ばされた。

 たった今まで私が居た場所には、人力車を支えながら尻もちをつく浅黒いマッチョなおっさんがいた。


 とっさに謝ろうと立ち上がろうとする。あれ? 体にまったく力が入らない。

 もしかしてこれヤバイ? 私、死んじゃう? そして視界が暗くなる。


 うぅ……かの者に呪あれ。メガネ割れろ……。

 あぁ、まだ私ネットゲームでモンス狩りたかったのにぃ……失意のうちに私は意識を失った。

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