第11話 お泊りする家の主はヤマンバ(7)
「柿五郎くん、柿五郎くん……」
「う、う~ん……」
柿五郎は恐ろしいヤマンバがいなくなって一安心していると、女の人のやさしい声が耳元に入ってきました。その瞬間、柿五郎は思わず目を開けると、そこにはやさしい顔つきのもう1人のヤマンバの姿がありました。
「うわっ、うわわあっ! 恐いよう、恐いよう……」
「柿五郎くん、どうしたの? そんなに恐がらなくてもいいのに」
柿五郎は、ヤマンバの顔を見ただけで思わずお布団の中に潜り込んでしまいました。便所の中に現れた恐ろしいヤマンバの姿を見たこともあり、柿五郎はやさしい顔つきであっても恐ろしい姿になるのではとかなり恐がっている様子です。
この様子を見たヤマンバは、自分は恐くないよと柿五郎にやさしい言葉をかけました。すると、柿五郎は布団から恐る恐ると顔を出しました。
「柿五郎くん、もしかして恐い夢でも見たのかな?」
「恐い夢? それじゃあ、あんなに恐ろしい顔で白い髪の毛をしていたヤマンバを見たのは夢の中のことなの?」
ヤマンバは、柿五郎が恐い夢でも見たのかと心配そうに言いました。これを聞いて、柿五郎はこれまでの出来事は全て夢の中の出来事であることに気づきました。
「夢の中のことだったのか、よかった……。そういえば、恐ろしいヤマンバの顔に思い切りおしっこ噴水をしちゃったけど、もしかして……」
「柿五郎くんは夢の中でおしっこをしちゃったのね。それじゃあ、掛け布団をめくろうかな」
柿五郎は、改めて夢の中の出来事でよかったと胸をなで下ろしました。しかし、夢の中でおしっこ噴水をしちゃったことに気づくと同時に、柿五郎のお尻のところが何やらひんやりとしてきました。これに気づいたヤマンバは、すぐに柿五郎の掛け布団をめくりました。
「えへへ、お布団にこんなにでっかいおねしょを大失敗しちゃった」
「ふふふ、柿五郎くんらしい見事に元気いっぱいのおねしょをやっちゃったね」
柿五郎は、お布団と腹掛けにものの見事にでっかくて元気なおねしょをしてしまいました。これを見たヤマンバも、柿五郎の子供らしさといえるおねしょに目を細めています。
柿五郎は、昨日の晩ご飯でスイカをいっぱい食べすぎた上に、ヤマンバのおっぱいもたくさん飲みすぎてしまいました。スイカとおっぱいが大好きな柿五郎にとって、お布団にできあがった大きなおねしょは元気な子供のシンボルといえるものです。
「こんなに立派なおねしょが描けるのって、柿五郎くんぐらいしかいないと思うわ」
「えへへ、お布団への大失敗でこんな大きなお絵描きを描くことができたよ!」
ヤマンバはやさしく微笑みながら、柿五郎がやってしまったおねしょ布団を両手で持ち上げました。柿五郎も、自分でお絵描きしたような立派なおねしょをしたお布団を見ながら笑顔を見せています。




