第11話 お泊りする家の主はヤマンバ(4)
「お布団におねしょで大失敗しちゃっても、それは柿五郎くんにとって元気な子供である立派な証拠なんだからいいんじゃないの」
「えへへ、お布団に大失敗しちゃったらヤマンバに見せてあげるよ!」
お布団へのおねしょは小さい子供にとって恥ずかしさを隠せないものです。でも、それは同時に元気な子供である立派なシンボルとも言えます。
ヤマンバのやさしさに、柿五郎はおねしょで大失敗しても必ずお布団を見せてあげると約束しました。
「外も暗くなってきたことだし、柿五郎くんもそろそろ寝ようかな」
「じゃあ、もうお布団の中に入ってもいい?」
「柿五郎くんも歩き続けて疲れているだろうし、すぐにぐっすりと眠れるよ」
柿五郎はずっと魔の山へ向かう坂道を歩き続けたので、次第に眠くなってきました。これを見たヤマンバは、柿五郎にお布団で寝るように促しました。そして、柿五郎はお布団の中へ入って眠りにつくと、すぐに夢の中へ入って行きました。
ヤマンバは、ぐっすりと眠った柿五郎の姿を見ながら目を細めています。しかし、この家にはお母さんみたいにやさしそうなヤマンバとは別に、ヤマンバがもう1人います。
そして、もう1人のヤマンバは真夜中に人間を食い殺すという非常に恐ろしい妖怪なのです。
しばらくすると、柿五郎が急に目を覚ましました。その顔つきを見ると、何かガマンしているようで苦しそうです。
「お、おしっこが……。おしっこがもれそう……」
柿五郎が目を覚ましたのは、いつものように真夜中におしっこがしたくなったからです。柿五郎はすぐに掛け布団をめくって起きると、ゆっくりと歩きながら板の間から土間へ下りました。
「どうかお化けや幽霊が出ませんように……」
柿五郎は、外へ出る前に心の中で妖怪や幽霊が出ないように願いながら、引戸を開けて外へ出ました。真夜中とあって、周囲が暗くてよく見えない中で歩くのは恐くないわけではありません。
柿五郎は、妖怪がいつ現れてもおかしくない中で背筋を震えながら少しずつ歩いています。しかし、柿五郎のおしっこは次第にガマンできなくなってきました。
すると、柿五郎の目の前に便所が現れました。柿五郎は、わらにもすがる思いで便所の中へ入って行きました。しかし、そこで柿五郎が見たものは今まで見たことのない恐ろしいものです。




