第9話 妖怪トウマワリ再び現わる(1)
「ここでお世話になって本当にありがとう! 必ずかあちゃを探してくるからね!」
「柿五郎くん、早くお母さんに会えるといいね。あたしたちも、柿五郎くんのことを応援しているよ」
柿五郎は、お別れのあいさつをおついと伝吉に伝えてその場を後にしました。そして、座敷童子とともに魔の山へ向かう坂道の合流点へ戻ることにしました。
「柿五郎くん、元の姿に戻って本当によかったね」
「赤ちゃんのままだったら、かあちゃに会うことができないし……」
座敷童子は、赤ちゃん姿にされた柿五郎が無事に元の姿に戻ったことにうれしそうです。赤ちゃん姿のままだったら、お母さんに会えなくなることを座敷童子は心配していたのです。
「ここを通って行けば、あの道標があった分かれ道のところまで戻ることができるけど」
「どうか、途中でお化けや幽霊に出会わないように……」
座敷童子は柿五郎といっしょに、昨日通った道を反対方向に歩き続けています。このまま歩けば、道標があった分岐点へ戻ることができます。
でも、柿五郎は恐い妖怪や幽霊が途中で再び出くわすかもしれないと不安を隠せません。現に、おついの家の便所でも、柿五郎は恐い妖怪を見た途端に押しを震えながらおびえていました。そして、便所の前で尻餅をついた柿五郎は、見事にうんちおもらしの大失敗をしてしまいました。
「便所でうんちをすることができなくて、大失敗しちゃったところを見られちゃったよ、えへへ」
「うんちの大失敗をしちゃっても、ぼくは全然気にしていないよ」
うんちおもらしをしちゃった柿五郎ですが、どんなに大失敗しても照れた表情で笑顔を見せています。これを聞いた座敷童子も、柿五郎の大失敗を何度も見ていることもあって全く気にしていない様子です。
しかし、柿五郎たちの目の前には、あの妖怪が目の前に立ち塞がっています。
「ぐふふふふ! 赤ちゃんになった気分はどうだったかな?」
そこに現れたのは、柿五郎を赤ちゃん姿にした妖怪のトウマワリです。これを見た柿五郎は、道標で誘い出したトウマワリに対して怒りで震えています。
「よ、よくもぼくをだましたな!」
「あの道標にだまされるおめえのほうが悪いのさ、ぐふふふふ!」
トウマワリは、道標にだまされて別の方向へ行った柿五郎たちへ不気味な笑い声を響かせました。




