第8話 おついの愛情と赤ちゃん姿の柿五郎くん(2)
女性は、竹かごに入った柿五郎を背負いながらしばらく山道を歩きました。すると、少し朽ちた格好の農家が目の前に見えてきました。どうやら、ここがその女性が暮らしている家屋のようです。
「端太くんの死に顔を見てから、あたしはかなり落ち込んで泣き続けたわ。でも、ここから少し離れたところへ行ったときに端太くんの生まれ変わりである赤ちゃんを見つけたの」
女性は、自分が住んでいる家屋の手前にあるお地蔵さまに手を合わせています。自分が生んだにもかかわらず、幼いうちに死んでしまった端太へ思いを伝えるために、女性はお地蔵さまに祈り続けています。
そして、女性が家の中へ入ると、農作業から帰ってきたばかりの男性が土間にいました。
「伝吉さん、これを見て! 端太くんの生まれ変わりである赤ちゃんを見つけたよ!」
「おおっ! おつい、こりゃあ端太くんと顔もそっくりだぞ!」
おついも伝吉も、赤ちゃん姿の柿五郎を見ると、自分たちの子供だった端太と瓜二つのかわいい顔に笑みがこぼれています。自分たちの子供を一度亡くしているだけに、偶然見つけたその赤ちゃんへの喜びようは尋常ではありません。
「おつい、この子が元気に育つのをやさしく見守ろうな」
「腹掛け1枚の元気な男の子だし、端太くんの生まれ変わりだから大事に育てないといけないね」
2人は、お互いに柿五郎の赤ちゃん姿を端太に重ね合わせながら、大事に赤ちゃんを育てることを確認しました。
おついは、竹かごから出した柿五郎を抱きかかえています。赤ちゃん姿の柿五郎は、手足をバタバタさせるように元気さを見せています。
そのとき、柿五郎があの言葉をおついに言い出しました。
「おっぱい! おっぱい! おっぱい!」
「ふふふ、どうやらお腹がすいておっぱいが飲みたいそうだね」
柿五郎の言葉を聞いたおついは、すぐに着物の中からおっぱいを出しました。そして、柿五郎はおついのおっぱいを口にくわえました。
「チュパチュパチュパ! チュパチュパチュパチュパ!」
柿五郎は赤ちゃん姿になる前から、当たり前のようにお母さんのおっぱいを欠かさず飲み続けています。そのため、赤ちゃんになっても、おっぱいを上手に飲むことは柿五郎にとってお手のものです。
おついも、おいしそうに自分のおっぱいを飲み続けている柿五郎の姿を見て笑顔を見せています。




