第8話 おついの愛情と赤ちゃん姿の柿五郎くん(1)
赤ちゃんになった柿五郎の姿を見て、座敷童子は両腕を組みながら考え込んでいます。
「ぼくが大人だったら、柿五郎くんを背負って歩くこともできるけど……」
座敷童子にしても、柿五郎と同様に腹掛け1枚だけつけている小さい男の子の姿です。それ故に、柿五郎が赤ちゃん姿であっても背中に背負うことは困難です。
かといって、柿五郎をこのまま放っておくわけにはいきません。
「かあちゃ、かあちゃ、かあちゃ」
柿五郎も、早いところ魔の山へ行ってお母さんに会いたいというのが本心です。しかし、今の状態では立ち上がって歩けるかどうかまだ分からないし、単語は話せても簡単に話すことも難しいそうです。
「柿五郎くんだって、本当は元の姿に戻りたいんだよね」
それでも、時折赤ちゃんらしい笑顔を見せる柿五郎を見て、座敷童子は柿五郎が元の姿に戻ることを信じることにしました。
そのとき、遠くから人影が見えてきました。その人影が少しずつ近づくと、それが女性の姿であることが次第に分かってきました。
「あっ、あんなところに赤ちゃんが……。どうしたんだろう?」
背中に竹かごを背負っているその女性は、柿五郎のお母さんみたいなやさしそうな雰囲気を持っています。地面に寝転がっている赤ちゃんを見た女性は、すぐに両手で抱きかかえました。
「この赤ちゃん、あの子にそっくりだわ。もしかして、あの子の生まれ変わりかも……」
女性は赤ちゃん姿の柿五郎の顔を見た途端、自分の両目から思わず涙が流れました。柿五郎の可愛い顔つきを見て、女性は自分が生んだ子供の生まれ変わりであると感じたようです。
「あんなにかわいい子だったのに、どうして死んでしまったの……。ううううっ……」
女性にとって、自分が生んだ子供が小さいうちに死んでしまうことほど悲しいものはありません。そのとき、柿五郎の発した言葉が女性の心に響きました。
「かあちゃ、かあちゃ、だいちゅき(大好き)!」
「この子、あたしのことをかあちゃと言ってくれたわ。笑顔もかわいいし」
女性は、自分のことをお母さんと呼んでくれた柿五郎のかわいい笑顔を見て、明るい表情を取り戻しました。そして、女性は柿五郎を見ながらある決意を固めました。
「これから、この子をあたしの手で育てて見せるわ。だって、神様が自分の子供の生まれ変わりとして授かったものだし」
女性は竹かごを地面に下ろすと、赤ちゃんになった柿五郎を竹かごの中に入れました。そして、柿五郎が入っている竹かごを再び背負うと、女性が住んでいる場所に向かって歩き出しました。
「あの人は柿五郎くんのお母さんみたいなやさしい人だけど、このまま赤ちゃんのままだったらどうしよう……」
座敷童子は、赤ちゃん姿の柿五郎が元の姿に戻るかどうか不安を抱えながらも、その女性の後について行くことにしました。




