第4話 あばら家とおねしょ幽霊(8)
「よくも、わしの顔にくさいおならをしやがって……」
「わわわっ! こっちにこないで!」
怒ったおねしょ幽霊は、自分の顔におならをした柿五郎に襲いかかりました。幽霊の顔を見た柿五郎は、あまりの恐さに無我夢中で土間へ下りました。しかし、おねしょ幽霊は柿五郎の行動パターンをすぐに察知すると、人魂とともに柿五郎の前へ先回りしました。
「ぐふふふふ! 家の外へ出ても、お前は便所へ行くことすらできないからなあ」
「ぼくだって、便所ぐらい行くことができるもん! でも、やっぱりお化けが恐くて……」
「ほらほら、やっぱり言うことができないだろ。お前が便所から逃げ出して家へ戻ったら、そのままお布団の中で震えまくっていることはお見通しだぞ」
おねしょ幽霊は柿五郎がいつもおねしょの大失敗をしてしまう理由を、不気味な笑いを交えながら端的に言い切りました。柿五郎も便所ぐらい1人で行けると反論しかけましたが、さすがにお化けが恐くておしっこをすることができないとは言えません。
すると、柿五郎はおねしょでぬれた腹掛けの下を両手で押さえ始めました。どうやら、柿五郎はまだおねしょで出し切れなかったおしっこが出そうです。しかも、おねしょ幽霊と人魂がいる前で、柿五郎は腰を抜かして尻餅をついてしまいました。
「ぐふふふふ! そんなにわしが恐いのだったら、お前にふさわしい刑をしないといけないな」
「うわっ! ぼくを逆さ吊りにして何をするんだ!」
おねしょ幽霊は両手で柿五郎の両足を無理やり握ると、柿五郎を逆さまのままで持ち上げました。甲斐五郎が必死に叫んでも、おねしょ幽霊は聞く耳を一切持ちません。
「ほれほれ、お前のおねしょちんちんが丸見えになっているぞ。本当に恥ずかしいなあ」
「わわわっ! おねしょぐらい子供だったら当たり前のことだい!」
おねしょ幽霊は、腹掛けがめくれた柿五郎のおちんちんを見ながら辱め(はずかしめ)をさらしています。しかし、柿五郎は子供だからおねしょぐらい当たり前と赤面しながら言いました。
そのとき、柿五郎がずっとガマンしていたおしっこがついに限界に達しました。柿五郎のおしっこは噴水となって、そのままおねしょ幽霊の顔面に命中し始めました。
「ジョジョジョジョジョ~ッ、ジョパジョパジョジョジョ~ッ」
「うわわっ、うわわっ! わしの顔におしっこ噴水をしやがって!」
「だって、だって、おしっこがガマンできないんだもん」
柿五郎のおしっこ噴水は、おねしょ幽霊の顔に次々と命中し続けています。柿五郎は、これでお布団のおねしょに続いて真夜中に2度目のおしっこをしてしまいました。
「うわわわっ! これ以上おしっこをかけられるのはたまらんわ! おぼえてろよ!」
おねしょ幽霊は柿五郎のおしっこ噴水に降参したのか、恨みつらみを言うとそのまま姿を消しました。人魂もおねしょ幽霊の後を追うように柿五郎の前から消えました。
すると、おねしょ幽霊に逆さ吊りになっていた柿五郎はそのまま土間に頭を打ってしまいました。柿五郎は頭にたんこぶができてしまいましたが、おねしょ幽霊がいなくなったことでホッとしています。




