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二十話

 出発してからすぐに目的の廃村を見つける。来栖は周囲を限界まで警戒しながら、廃村の中へと入って行く。


 誰も‥‥いないか?


 村には全部で三十軒程の空き家があり、そのどれもが破壊されていて人のいる気配は全くなかった。


「誰も、いないのかなぁ?」


 里穂はボロボロになった空き家の中を覗きながらそう呟く。事実、人のいた痕跡すらなく来栖も半ば諦めかけていた。


 ハズレか‥‥少し休んでからし──


 来栖はナイフを抜くと態勢を落とし、臨戦態勢になる。里穂も唐突な来栖の行動に驚くも、すぐにその意図を理解して杖を構えた。


 今‥‥僅かにだけど、物音がした。誰か‥‥いるな。


 来栖は手だけで里穂に待つように指示すると、音がした方へ音を殺して向かう。


 カッ


 来栖は近くにあった空き家の中から確かに靴音を聞き取る。ナイフを構えたまま空き家の壁に背中をつけると中の様子を伺おうと、壁伝いに入り口へと向かう。


 闇忍か、ルーク達か。どっちだ?


 入り口の真横まで来た所で中から何かが飛び出す。慌てて来栖もその場から飛び退くと相手の顔を見る。


「‥‥フレイ!!」


 そこにいたのは杖を構えたフレイだった。


「クルス、クルスか!! 無事だったようだね」


 戦意の抜けた二人は思わずその場に座り込む。


「ルーク達は?」


「中にいるよ。それにしても、よく生きてたね」


 フレイは心の底から驚いている様で来栖の顔をまじまじと見つめる。


 っと、里穂の事忘れるとこだった。


 重たい腰を上げて里穂の方へと足を向ける。


「わり、ちょっと連れを呼んでくる」


「連れ?」


 答えようかとも思ったが本人を連れて来てからの方が楽だと思いあえて無視をする。空き家の角を曲がった先に身構えた里穂の姿があったが、来栖の姿を視認するなり構えを解く。


「来栖、どうだったのよ?」


「仲間だったぞ」


「そう‥‥よかったね!!」


 笑顔を来栖に向ける里穂だったがどこか辛そうだったが、合流できた事に浮かれている来栖がそれに気づく事はなかった。


「じゃあ、案内するからついて来て」


「わかった」


 里穂を連れた来栖はそのままルークとエミリアのいる空き家の中にフレイと共に入り、円を作るように座った。来栖が入り口に近い位置、そのすぐ隣に里穂、女子同士と言う事で里穂の横にエミリア、ルーク、フレイなる。


「クルスの隣の娘は、誰かな?」


 フレイは早速、里穂について訊いてくる。


「リホ、って言います。旅に同行することになりました、よろしくお願いします」


 やたらと礼儀正しい里穂。恵まれた親をもった里穂は日頃から礼儀作法を教えられており、オンオフの切り替えの出来る様になっていた。


「リホ、ね。僕はフレイ。よろしく」


「そうか。私の名はルーク。エミリアの、護衛をしている。よろしく頼む」


 ルークは軽く頭を下げる。


「私はエミリア。迷惑かけちゃうと思うけど、よろしくお願いします」


「うん、よろしくね」


 隣に座っていたエミリアと里穂は顔を見合わせると一緒に笑い合う。


「で、クルスとリホはどう言った関係なんだ?」


 その質問に来栖と里穂は言葉が詰まってしまう。


 クラスメイトとは言えないしな〜。俺と里穂の関係って言ったら‥‥何だ?


 答えを出せずにいた来栖に変わって里穂が答える。


「私と来栖は同郷なのよ。それで偶然、森の中で傷だらけの来栖を見つけて回復魔法をかけてあげたの。あ、私は回復専門なので戦闘は得意じゃないありませんから」


 いきなり慣れ親しんだ様な口調に変える里穂。この輪の中に早く馴染もうとしている証なのだろう、と来栖は納得する。


「ヒーラーか。前衛二人、後衛二人。これでバランスが良くなったじゃないか」


 確かにな。四人パーティとしては理想的な構成だ。ただ、一つだけ気になるのが‥‥俺もルークも回避型の前衛。後衛を守る壁になる事は出来ない。まぁ、闇忍相手なら問題はなさそうだけどな。


「リホは結界系の魔法を使えるか?」


 これからの陣形を考えているであろうルークが口を開く。


「一応は使えるけど、専門の人には負けるかなぁ」


 そういや、俺を助けた時も結界張ってたな。


「なら、リホがエミリアに付き添っててくれ。フレイは二人の前に立ち、私とクルスの援護を頼む」


 へぇー、ルークがエミリアを完全に他人に託すなんて珍しいな。いつだって自分がエミリアを守る様に位置取ってたけど‥‥まぁ、それだけやばいって事か。


 フレイを除く全員が頷く。


「なぁ、前から気にはなっていたんだけど‥‥ブリュッセルが襲われたのってエミリアを狙ってじゃないか?」


 フレイの質問にルークが固まる。


「なぜ、そう思う?」


「不自然じゃないか。援軍を呼ばせない闇忍を八体、これだけの数が五チームの追っ手として出ていれば‥‥」


 不自然な箇所でフレイの話が途切れる。闇忍の合計人数を計算をしているようだったがなかなか答えが出ない。


 うわー、やっぱりこの世界の学力の低さはやばい気がする。


 いつまでも出てこない答えに業を煮やした来栖が口を開こうとするが、先にエミリアが答えを言う。


「四十‥‥四十です」


 おっ、早いな。


 隣に座っていた里穂が驚いた顔でエミリアを見た。


「エミリア、計算出来るんだ。すごいね」


 褒められて照れたのかエミリアは顔を赤くして里穂から目を逸らす。


「はい、クルスに教えてもらいました」


 里穂は感心した様子で来栖の方を見る。


「へぇー、意外ね」


 浅野さんの中で俺はどう言うイメージなんだよ。


 と、突っ込みたかったがフレイの関係ない話止めろと無言の圧力がかかっていたので黙って聞き流す。


「で、話の続きだけど全部で三十五体の闇忍がいるなら、最初からブリュッセルを落とせたと思わない? そもそも、あんな敵地のど真ん中を手に入れても一週間以内には奪い返されるだろうね」


「それで、エミリアが狙いだと気付いたのか」


「まぁ、他にも色々あるけどそれが主な理由さ」


 フレイの言っている事は正しい。相手がブリュッセルを狙うメリットなどない。でも、エミリア一人のために街を落とせるレベルの戦力を使うなんて‥‥普通じゃない。


「で? フレイはどうすんのよ? ここで抜けるか?」


 フレイには何のメリットもない。その上、かなりの危険が伴っている。まさに、ハイリスクノーリターンってやつだ。でも、フレイが抜けるとなると、俺とルークの二人か‥‥


「何を言っているんだ。僕がそんな逃げる様な事をすると思うかい?」


 えっ‥‥マジで?


「フレイ‥‥すまない」


 フレイの事をあまり好んでいなかったルークが申し訳なさそうに謝る。


「謝らなくていいさ。安全が確保できたらしっかりとお礼でもしてもらうけどね」


 この分ならムラージュまで行けそうだな。


 そう確信付いた来栖はその場で立ち上がると入り口の前まで移動する。


「来栖? どこ行くのよ」


 里穂が来栖を追おうと左手を地面について体重を乗せる。


「軽く見回ってくる。危ないから浅野さんはここで待っててね。三十分以内には戻って来るから」


 そう言われた里穂はやや不満そうな顔をしながらも座り直す。


「行ってらっしゃい」


「あぁ」


 空き家を出てからしばらく歩いた所で来栖は立ち止まると、民家の屋根に飛びのると周りに誰もいない事を確認してから腰を下ろす。


 闇忍を合計で六体、かなりレベルが上がってるんじゃないかな。


 右手を正面に出し、少しだけ魔力を込める。


ステータス開示オープン




 真風まかぜ 来栖くるす


 年齢・・・・・・17歳

 ギルドランク・・・・F

 職業・・・・・・ナイフ使いカプリシャス


 レベル69

 力・・・・559

 耐久・・・328

 魔力・・・172

 精神力・・・197

 敏捷・・・924


 スキル ナイフ投げ、刀剣現化、刀剣解放、ナイフ式結界術【壱、弐】

 

 称号 異世界からの来訪者、無謀者、旅人、護りの心、闇と戦いし者、死を覗きし者




 ナイフ式結界術【壱、弐】


 ナイフに魔力を込め、遠隔で使う事の出来る魔法。数字に応じた数のナイフを使用しなければならない。




 護りの心


 誰かを守るために自らの命も顧みずに戦った証。誰かを守るために戦う時にステータス補正小。




 闇と戦いし者


 魔王の眷属を倒した者。魔物に対する力に補正小。




 死を覗きし者


 瀕死状態に陥り、死と生の境目をさまよった証。自然治癒力補正中。




 ナイフ式結界術‥‥か。攻撃用よりは守備よりのスキルだな。新しく得た称号も効果は小さそうだし、あまり気にしない方がいいか。


 来栖が所持しているナイフは全部で十二本。


 厳しい、戦いになりそうだな。


 気を引き締め直した来栖が空き家に戻るとルーク以外の全員が寝ていたので、来栖も体力回復のために仮眠を取ることにした。



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