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十八話

 来栖は闇忍三体の同時攻撃を空高くジャンプして避けると、そのまま近くの樹の枝に着地する。闇忍は一瞬の間だけ動きを止めると、来栖を無視してルーク達の後を追い出す。


「なっ!! マジかよ、こっち来いって」


 樹の上からありったけのナイフを投げまくり、どうにか三体中の二体の動きを封じる。逃した一体はそのまま森の中へと消え去り、残る二体が来栖へと激しい殺気を放つ。


 一体逃したか‥‥まぁ、これくらい許してくれるだろ。


 闇忍達が魔力で作ったクナイを来栖に投げつける。


「遠距離勝負か‥‥願ってもない」


 来栖は樹の枝から枝へと飛び移りながら、一体の闇忍に集中してナイフを投げる。狙われた闇忍は回避に専念し、もう片方が攻撃に専念した。しばらくその応酬が続いたが来栖のナイフが底を尽き、闇忍二体に一方的に攻められる。


 この攻撃を避けるのは容易なんだけど‥‥ずっとやってると、流石に疲れるな。だが、あっちの魔力も無限ではない、はずだ。


 樹の上を立体的に動く来栖と地上で来栖を追いながらクナイを投げる闇忍。その状況がしばらく続くが、遂に闇忍の魔力に限界がきたのか闇忍達も樹の上に登り、接近する。


「はぁ、はぁ、はぁ‥‥もう、魔力切れかよ。大した事、ねえな」


 逃げる速度を一段階上げる来栖だったが、闇忍に難なく追いつかれた。肉薄した一体の闇忍がクナイで来栖を切りつけるが、来栖はすんでのところでガードする。しかし、来栖も攻撃の勢いまでは殺しきれず地面にはたき落された。


 くっそ!! やっぱり、あっちの方が速いか。


 どうにか両足で着地するとすぐに攻撃に備える。案の定、後方に待機していたもう一体の闇忍が来栖の目の前へと飛び出す。


 こいつら、コンビネーションよすぎだろ。


 来栖は目の前の闇忍の攻撃をナイフで凌ぐと、逃げる様に後ろへ下がった。その額からはとめどなく汗が流れ落ちる。闇忍達はじりじりと距離を詰め始めた。


 やっぱり‥‥使うしか、ないか。


 来栖は一本のナイフを取り出す。宝石類で装飾された柄、金色に輝く鍔、そして魔力を帯びた刃。来栖が報酬としてルークから受け取ったナイフだ。


 このナイフは最低でもククリの倍以上は魔力消費が激しいだろうな。俺に残っている魔力は最大時の半分程度、魔力が残っている内に逃げられるかどうか。


 来栖は装飾されたナイフを天へと掲げる。


刀剣現化ブレイド


 来栖の魔力に呼応したかの様に天から雷がナイフに向かって落ちる。


「王剣・雷皇剣ラアルド・セイブ


 来栖の手には激しい雷を放つ白銀の剣が握られていた。見ただけでその強さが感じられ、その強い魔力に闇忍達は気圧される。


 王剣‥‥やっぱり、王族だったのか。


 来栖は刀剣現化をした際にそのナイフについてのある程度の情報を得る事が出来る。


 まさか、宝刀だったなんてな。ありがたく使わせてもらうとしますか。


 来栖は雷皇剣をその場で振ると剣がまとっていた雷が闇忍を襲う。危険を察した闇忍はすぐに来栖から距離を取ると、クナイによる間接攻撃を始める。


 このまま逃げられた嬉しいんだけど、そうもいかなそうだな。片方くらい仕留めておくか。


 来栖は先ほどより数段速く走ると、闇忍に向かって突撃する。飛んでくるクナイは極力避け、自分に向かってくる最低限の数だけを剣で弾いた。飛び道具が無駄だと即座に判断した闇忍は二体同時に前進し、来栖に飛びかかる。


「くっ、くたばれ!!」


 来栖は剣になおも減り続ける魔力を込め、二体に向かって雷撃を放つ。闇忍はそれを左右に分かれて避けると来栖を挟み撃ちする様に位置取る。


 マジで面倒なコンビだな。どうにかして一体を殺らないと‥‥


「っ!!」


 来栖が一方に意識を取られている間にもう片方が背後からクナイを後頭部へと投げる。来栖はそれを頭を下げて躱すと、剣先を背後にいた闇忍へと向けた。


 注意力が下がってきた。これ以上は、戦えそうにないな。どうにかして‥‥逃げねえと‥‥


刀剣解放リリース


 勝負に出るべく来栖は最後の切り札をきる。魔力が溢れ出る剣は雷に包まれ、やがてそれはまばゆい光を放ち始めた。


 やばっ‥‥ほとんどの魔力をもってかれた‥‥


 光の剣を持った来栖は空高く飛び上がると、その圧倒的な雷を一気に解き放つ。


天の裁きジャッジメント・ライ


 振り下ろされた剣から放たれた雷は一直線に闇忍へと飛んでいき、圧倒的力でその体を消し炭にする。


「よっし!!」


 まずは、一体‥‥もう一体は‥‥


 来栖は刀剣解放後、すぐに地面に着地すると残った闇忍を警戒してククリナイフを抜く。闇忍は仲間が殺られた事に対して一切動じる事なく、淡々と来栖の首を狙っていた。


 はっ、仲間が殺られてショックでも受けてくれりゃあ、良かったのにな。全く無関心、ってか。


 魔力切れの症状が出始めていた来栖は視界がぼやけ、足もおぼつかなかった。それでも闇忍相手に一切引かずに立ち続ける。


 もうそろそろ‥‥引き、際‥‥かな? やばっ、意識が‥‥ぼやけ、て‥‥きた。魔、力の‥‥使い、すぎか。


 意識が薄れ始める来栖。それを理解していた闇忍は静かに気絶するのを待っていた。来栖は残った全ての力を振り絞り、東へと走り始める。地上を駆ける来栖を闇忍は木々の上からクナイを投げ続けた。来栖は全速力で逃げつつもクナイを避け、不要な傷を生まないようにする。


「はぁ‥‥はぁ‥‥」


 くそぉ‥‥これ以上、速くは走れない。あいつを、どうにかしなきゃ。


 余力のない来栖が闇忍から逃げられるはずもなく、ただひたすら来栖の体力が削られていった。逃げる事を諦めた来栖は、ゆっくりとその場に立ち止まる。


 魔力はほぼゼロ。体もボロボロ。こんな状態で、戦えるのかよ?


 立ち尽くしていた来栖の背中に闇忍が突きを放つ。


 あー、もう‥‥どうにでもなれよ。


 攻撃がくるのを感じた来栖は突き出された闇忍の腕を肘打ちで逸らす。


「こっからは近接戦としようか?」


 来栖は握っていたククリナイフを闇忍に叩き付けようとするが、クナイで弾かれる。両手にクナイを持っている闇忍はもう片方のクナイで隙だらけの来栖の首元を狙う。来栖はクナイが首に突き刺さる直前で闇忍の腹に蹴りを打ち込み、自分から遠ざける事で回避する。


 やっぱり、あっちの方が能力的には上か‥‥


 来栖は首から血が流れている事を手で拭い確認する。傷は僅かにクナイをかすっただけの様でそれほど血は出ていなかった。


 二刀流でいくべきか‥‥


「あれ?」


 来栖が一瞬、気が緩んだ隙に目の前にいた闇忍が消えていた。危険を感じた来栖はすぐに辺りを見渡すが闇忍の姿はなく、どこからともなく土の擦れる音が聞こえる。


 まずっ、気を抜きすぎた。


 常に首を動かしながら周りを警戒するが闇忍が出てくる気配は一切なく、緊張感により疲弊していった来栖の精神は限界をむかえていた。


 スッ


 来栖は自身の背後から僅かに物音を聴き、とっさにその場から跳び去ろうとするがそれより早く来栖の背中がクナイで切りつけられる。


「ぐっ‥‥あぁ」


 来栖は苦痛に表情を歪ませながらも、ククリナイフを闇忍に向ける。斜めにいれられた切り傷からはドクドクと血が勢いよく流れ続けた。


 出血が激しい‥‥そう長くは、持ちそうにないな。


 貧血や疲労が度重なっていた来栖の視界はぼやけ始め、意識が混濁とする。それに眠気も加わり来栖の足元はおぼつかなくなり始めた。


 やばっ‥‥‥‥意識が‥‥遠のいて‥‥‥‥‥‥


 遂に力尽きた来栖はその場に倒れこむ。トドメを刺すべく闇忍が一歩、また一歩と来栖への距離を縮めていく。


 あぁ‥‥俺、死ぬ、のか。せっかく、あんなに修行を‥‥したのに、な。まぁ、エミリア達を‥‥助けれた、から‥‥いっ‥‥か。もう‥‥眠く‥‥なって、きた。


 来栖の視界はゆっくりと閉じていった。




















































「来栖、ねぇ‥‥来栖!!」


 誰かが、俺を‥‥呼んでいる? 誰だ?


 果てしなく遠くから聞こえる様な小さな声だったが、来栖の意識がはっきりするにつれて次第に大きくなる。


「何でこんな事になっているのよ!! あんた、強いんじゃなかったの!!」


 この、声‥‥誰、だっけ。


 再び来栖の意識は闇の中へと沈み始める。


「ねぇ!! 来栖、死んじゃ‥‥嫌よ」


 薄れゆく意識の中で来栖はその言葉を確かに聞き取った。その声は元の世界にいた頃から聞いていた声。


 浅野‥‥? 浅野!!


 微動だにしていなかった来栖の目が開かれる。それと共に涙を流す里穂の姿が来栖の視界に入った。


「来栖!!」


 里穂は笑顔で倒れている来栖を思いっきり抱きしめる。


 ここは‥‥


 突然ガラスが割れる様な大きな音が響くと、里穂が来栖から離れて杖を構える。


「来栖は‥‥渡さない」


 来栖ははっきりとしない焦点を懸命に里穂の視線の先にある何かに合わせる。


 闇忍‥‥か?


「絶対に、守る!! 天使の護りライトヴェール


 里穂の詠唱で光のカーテンが二人を包み込む。外にいた闇忍が手に持ったクナイで切りつけると、カーテンは一撃で切り裂かれる。


「‥‥えっ!?」


 浅野‥‥助けに来てくれたのか。せっかく来てくれたのに‥‥申し訳ないな。


 闇忍が片方のクナイを消すと里穂の首を掴み、その体を軽々と持ち上げた。そして、闇忍はもう片方のクナイをゆっくりと首に近づける。


「来栖‥‥ずっと、好きだったんだ。さよなら‥‥」


 里穂の消えそうな声で来栖の意識が覚醒する。


「っ!!」


 来栖は唇を噛み切り無理矢理、体を覚醒させるとすぐさま立ち上がり手に持っていたククリナイフで里穂を掴んでいた闇忍の腕を両断する。腕を切られた闇忍は苦痛の声を一切上げる事なく後退した。


「ゴホッゴホ‥‥来栖!!」


 来栖は里穂の無事を確認すると、体内にあるすべての魔力を脚に集約させる。


 俺には、もう‥‥余力はない。だからっ、一撃で‥‥終わらせる!!


 腕を切られた闇忍は傷など全く気にせず、片手で来栖に向かって行く。


「羅刹、一閃っ!!」


 闇忍は来栖の動きに反応する事すら出来ずに横を通り過ぎられた。闇忍はすれ違いざまに切られた腹から大量の血を流して力尽きる。それは来栖も同じで、限界を超えて酷使された両脚はズタズタに切り裂け、体内の魔力が空になった来栖はその場に倒れた。


「来栖!! 今、治すからね」


 来栖は里穂の不安そうな声を聞くと、安心して意識を手放した。


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