グザリスでの出来事
「ここがグザリスか。気持ちいい場所だな。」
レイドは大きく伸びをする。グザリスは9割が海に囲まれた平和な場所だ。今まで、人の多いテトランス。極寒のエルリール。人工的に作られた空気のジェルラードと移動してきたので、澄んだ空気、青い空、心地いい風全てが新鮮に感じた。
「レイドはグザリス初めてだったの?」
あまりに気持ちよさそうにしているレイドを見て、微笑みながらシリアが尋ねる。
「ああ。こんなに平和な場所にハンターはいらないだろ。」
「それもそうね。ハンターには縁の無い場所かもね。」
「さて、とりあえず街を彷徨いてみるか。グザリスに大きい街はここしかないんだろ?」
「ええ。あとは小さい村しかないわ。」
二人は何もないステーションを出ると、街の中を歩いた。その途中、街の中央付近で人が集まっているのに気付き、近寄って行った。
「デラニーおじさん?」 シリアが一人の男に声を掛けた。そのおじさんは目を丸くしてシリアを振り返った。
「…シリアちゃんか!?」
「ええ。お久しぶりね、デラニーおじさん。」
「二年前より一段と大人っぽくなったな!それにこんなに立派になって!」
「シリアちゃん!久しぶりじゃない!」
「お久しぶりです。ジェーンおばさん。」
シリアの周りには、次々と数多くの人が集まっていった。それほどシリアは街では人気があったのだろう。
「それにしても、こんないい彼氏を連れて来るなんて!グザリスを出ていった時は想像出来なかったわよ!」
「ハハハ…。」
レイドは頭を掻いて、シリアとの関係を説明した。
「それより、何かあったの?こんな所に集まって。」
シリアの言葉で、全員の顔が暗くなる。
「実はな、ファーニちゃんがさらわれたんだよ。」
「ファーニが!?」
「シリアの知り合いか?」
「…ええ。私が妹みたいに可愛がっていた子よ。今はもう13才の女の子ね。それで?誰にさらわれたの!?」
「テトランスにいるようなホスト風の男よ!いきなり抱えて、水の樹林へ来い、と場所を教えて消えていったわ。」
「警備部隊に任せたんだが、未だに帰って来ない。」
「ホスト風の男!?間違いない。ヴァルログと一緒にいた男だ!」
「となると…私達狙いね。」
「シリア。すぐ水の樹林ってとこへ行こう!その子が危険だ!」
「ええ!!」
話を進める二人を見て、街の人が止めに入る。
「シリアちゃん!それは危険過ぎる!警備部隊でさえ帰ってこないんだぞ!!」
「大丈夫よ。ファーニをこのままにしておけないし、レイドもいるから。」
「ああ、任せとけ!」
街の人達の制止を聞かず、二人は水の樹林へ向かって行った。
「入り組んでいるいる場所だな。」
水の樹林の中で、レイドは周りに気を配りながら呟いた。
「グザリスの人間も、滅多に入り込まない場所よ。」
先へ進んでいく二人だが、突然シリアが立ち止まる。レイドもそれに気付き、前方に目を凝らす。そこには、一人の少女が座り込み、その周を10数体の人が彷徨いている。その傍らでは数人の警備部隊が倒れていた。
「人造生命体か?」
「恐らくね…。ファーニはまだ無事みたいね。警備部隊は怪しいけど。」
「シリアはファーニを助ける事を優先しろ。」
「分かったわ。」
「じゃあ行くぞ!」
二人は茂みの中から一気に飛び出し、レイドがファーニに気を配りながら戦い、シリアはファーニを抱え、少し離れた場所へ連れて行った。
「これでラスト!」
レイドはあっという間に10数体の人造生命体を倒した。そしてシリアの方に目をやる。
「ファーニは大丈夫か?」
「大丈夫よ!」
「シリア……お姉ちゃん?」
とっさの事で、固まっていたファーニが口を開いた。
「そうよ。大きくなったわね、ファーニ。」
シリアが頭を撫でると、ファーニはシリアに抱きつき泣き始めた。シリアは優しくファーニを宥める。その光景を微笑ましく見ていたレイドだが、木の上から一体の人造生命体が攻撃を仕掛けながら降りてくる。
「まだいたのか!」
レイドは瞬時に避けると、返り討ちにした。
「ふ〜。危機一髪だな。」
「大丈夫!?」
ファーニを抱いたシリアが駆け寄る。
「ああ。」
「腕から血が出てる。」
「かすり傷だ。心配ない。それより早く戻ろう。街の人を安心させてやらないとな。」
「そうね。」
二人は、ファーニの救出に成功し、街へ戻って行った。
街へ戻ると、ファーニの母親が走って来た。それを見たファーニも母親に向かって行き、母親にしがみつく。
「良かったなぁ、カリーナさん。」
その光景に、自然と街の人も集まる。
「ええ!本当に。ありがとうね、シリアちゃん、レイド君。」
「いえ、元はといえば私達の責任ですから。それより、街の人達に聞きたいんですけど、この辺りで研究所があるって聞いたことないかしら?」
シリアの言葉に、街の人達は次々に顔を合わせていく。
「いや、聞いたことないな。」
「そうですか。」
シリアは肩を落とした。
「シリアの家に行ってみよう。お父さんが何か残しているかもしれない。」
レイドの言葉に、シリアも頷く。
「シリアお姉ちゃん、レイドお兄ちゃん。いつかファーニと遊んでね。」
ファーニがそう言ってシリアの足にしがみついた。
「分かったわ。ね、レイド。」
シリアはファーニを抱え上げ、レイドに同意を求めた。
「ああ。この問題を解決したら必ず、…な。」




