答え:備えはあっても、憂いはある
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「・・・なんだ?」
「ん?」
空の景色が変わる。
変わったと言っても、世界が変わるような大きな変化じゃない。
微妙な違和感がある。
「何か…歪んで見える。」
「お前、領域が見えるのか。」
「領域?天狗の領域か。」
普通の空に、何か白い靄が薄くかかっているような…
「お前、その体はまだそんなに長くないんじゃないか?」
「…肉体の年齢としては、まだ若い。」
「だが、たかだか5年分食らっただけだというのに、死者の感覚に近寄っている。」
なるほど。
「死者の感覚は、妖怪に近いのか。」
「妖怪は死に近い。だが、同じではないな。」
空から視線を移し、屋敷の中を見渡す。
「…この屋敷には、お前の家族がいるんだったか。」
「何か見えるのか?」
「分からない。だから鳥居に戻ってもいい?このままお前の家族に会うのは困る。」
「ふむ。長居になったが、今なら帰れるだろう。」
天狗の男が再び、手から木の葉の扇を振り上げる。
–ビュオォォ
再び大きな風が吹き、瞬きをする。
辺りは真っ暗な山道に戻った。
男はついてきてはいないようだ。
「・・・時間が抜かれたか。」
天狗と人間では進む時間が違うという。
世界の時間とは別に、彼らが進んでいる時間に引っ張られたのかもしれない。
日付が変わりすぎていなければいいのだが…
急いでもと来た道に戻る。
山の出口にある鳥居が視界に映ると、その鳥居からは淡い光が漂っているのが見える。
昨日の夜、離れた場所から見てはいたものの、鳥居が光っている様には見えなかった。
死者に近づいたから見えるのか。
あるいは、魂の側に何か小さな変化が起きたのか。
鳥居をくぐる。
空気が変わった。
急に賑やかな声や音が響く、祭り?
–ブブブ
スマホから通知が入る。
和や日向達からの沢山のメッセージを流し読みする。
アリスがリュースに連れていかれ、ガルシアが回収した事。
ひとまずはガルシアの方で、アリーの提案通りアリスの本を確認しに行く事。
連絡もなしに私が帰ってこない事についての数多くのメッセージ。
そして、和がリュースを追いかけたところ、人質に尚弥が攫われた事。
尚弥の追跡は、魔法世界までできたが、既に移動済みでその先がどこか分からない。
本来なら、今は少しでも情報を集める方が重要だ。
フォーラスの動きも、疑似通路の条件も、まだ穴だらけのままだから。
だが、尚弥は別だ。
人質として連れ去られた以上、情報より先に命の確認を優先しなければならない。
それなら、まずは私の方でも探そうか。
賑やかな音の方へ寄ると、やはり祭りだった。
そこにいる者たちは、少なくとも見た目には普通の人間に見える。
あの鳥居の先は、基本世界の神社と繋がっていたのだろうか。
場所を確認すると、日本の四国にいるようだ。
大分遠くまで移動してしまったものだ。
祭りから離れる。
空き家でも、何かの建物の入口でもいい。
とにかく扉を探して回った。
–ブブブブブブ
今度は電話のようだ。
「はい。」
『!!やっと出たー!!!!』
『は!本当か!?』
『スズー!?スズ!?』
「ヒナ?心配かけた。今からひとまず戻る。」
大きな声がスピーカーから入り、奥からは和の声も聞こえる。
『心配したよ!!まってまって!和に代わるから!!』
既に次の日の夜ではあるものの、一晩過ごしただけのようで良かった。
『スズ!』
「あぁ。心配かけた。尚弥は?」
『・・・っ!本当にな!!・・・あぁ!魔法世界に一度連れて行った痕跡があったが、その後が追えなかったんだけど、さっきアリスさんから連絡があって、基本世界に移動した事とガルシアさんにも協力してもらってるんだ。』
「基本世界にいるのか。こっちも扉が見つかれば・・・」
『いや!お前はまずは帰ってこい!死神が噛んでるから、一旦ガルシアさんから連絡が着次第、魂の居場所から追いかける!』
その方が早いか。
そう判断して歩いていると、鳥居で見た時のような淡い光が視界に入った。
近づくと、商店街の裏道の扉が光っている。
…これは他の世界の境界?
光っている理由がまだはっきりしないので、一旦近づいて扉を引く。
「まぁ分かった。場所が分かったら・・・」
『まて!今連絡が。』
扉には鍵が掛かっている。
ポケットに入っている鍵を取り出し差し込む。
条件が合う。
世界の境界に近い場所だから、見えているのか。
やっと自分の通路に入れそうだが、電話を確認して入ろうか。
「ガルシアから?」
『場所が分かった。今住所を送る!ガルシアさんも向かうらしい。』
「わかった。こちらでも向かう。」
『はぁ!?リュースがいるかもしれない!お前は帰ってこい!』
「和も向かうだろ。合流しよう」
『ちょ!おいっ・・・』
スマホを切る。
メッセージからは、尚弥が攫われてから、どのぐらい時間が経っているのか分からない。
こういう時、情報が足りないまま動くのは本来避けたい。
だが、基本世界にいるのなら話は別だ。
誰でもいい。
少しでも早く辿り着いた方がいい。
チャットから住所を確認し、再び鍵を差す。
白い通路を潜り抜け、すぐに見えた扉に入る。
–カチャ
流石に、ここで声を出すわけにはいかない。
扉を開くと、空き家の玄関のようだ。
ここか?
一階のリビングには誰もいない。
二階の階段を静かに上がる。
微かな呼吸音と、何かが擦れる音がする。
二階の音がする部屋の扉を開く。
何も無い部屋の中央に、尚弥が布にくるまれて倒れていた。
その姿を見た瞬間、胸の奥が一度だけ冷たく止まった。
「尚弥。聞こえるか?」
それ以外には何もないが、リュースはいないのか?
「・・・」
尚弥は気絶しているようだ。
頭から血が流れ、体温が低い。
呼吸はある。
体温は低いが、まだ間に合う。
そう判断して、くるまれている布を割き、傷口を抑える。
「!」
尚弥の影が動いた。
「ガルシアか。」
「!いらっしゃってましたか。そちらが攫われた方ですか?」
「あぁ。すぐに病院に運ぶ。」
今は状況確認より生存が先だ。
救急車を呼ぶ。
「誰もいらっしゃらないようですね。一旦近くを確認しておきます。」
「アリスは?」
「ひとまず私の家に、後ほどお送りいたします。」
「分かった。」
ガルシアが去って、しばらく止血に集中していると、救急車が現れたので二階まで案内し尚弥を運んでもらう。
人のいない住居で血まみれの男と私が一人という事もあり、一緒に来た警察の事情聴取があったが、日名子の手配してくれた身分証明でどうにかなった。
「出血量は気になりますが、あまり時間は経っていないようでした。すぐに対処できれば、恐らく助かると思われます。あなたもご一緒に向かわれますか?」
「後から向かう。急いで運んでください。」
そういって見送り、ひとまずこれで大丈夫だろう。
少なくとも、すぐに命を落とす状態ではなさそうだった。
それだけでも本当に幸いだった。
人気が再びなくなったところで、ガルシアが暗闇から姿を現す。
「こちらでは、レイも魔法の子も見当たりませんでした。」
「そうか。そのまま放置する気だったのかもしれない。」
「ケインの方は少し前に、確保の連絡が入ったのですが、レイ・チェジールはそのまま追跡します。」
「分かった。レイ・チェジールもそうだけど、アリスの事もよろしく頼む。」
「…しばらくという意味ですか?」
「いや、本人の希望次第でいい。すぐに帰るというなら、相談所に帰して貰って問題ないし、まだしばらくそこにいたいというのなら、頼めるだろうか?」
「あまり死神の世界に、長居させるのは宜しくないかと思われますよ?」
道の向こうから、和が走ってきた。
「本人の様子次第でいい。」
「攫われた彼の事も心配していらっしゃいましたし、すぐにでも帰りたいとおっしゃると思いますので、恐らくはすぐにお見送り致しますよ。」
「分かった。」
「では、私は失礼致します。」
ガルシアは影に溶けていった。
「スズ!!尚弥は!?」
「ひとまず病院に行った。救急隊員の話では無事だと言っていたが、手術にはなるらしい。どの病院か確認して、明日にでも行こう。」
「・・・分かった。良かった。」
やっと今日は帰宅できる。
長い外出になってしまったものだ。
「いやいや。何お疲れ様でしたってしようとしている?」
「…疲れた。眠い。風呂入って、寝たい。お腹は空いたけど起きてからで。」
地下室に戻りソファに行こうかと思ったけど、まず風呂にあがろうか。
「一言で何があった?」
「魔法世界に行ったら、偶然怪異の世界に入って、帰れなかった。」
「・・・・」
こちらを観察してくるが、怪我はないはず。
「風呂入ってこい。一日以上何も食べてないって事だろう。うどんでも用意する。」
「助かる。」
途中、ヒナ達に騒がれながらも、風呂場に入る。
体は重いのに、頭だけは妙に冴えていた。
予想外のトラブルだったせいだろう。
だが、ブライアンといいブルースとも話せたことで、フォーラスの状況が少し見えた。
魔法世界の魔法使いを攫っている事については、前から分かっていたことだが、改めて今の状況をミランダにも聞いた方がいいだろう。
アディール・クラーレンの疑似通路を使っている以上、クラーレンから求められる協力には動かざるを得ないようだが、それと同時に、そこから抜け出す方向でも動いているようだ。
要するに今のフォーラスは、
疑似通路そのものの解析、
自前での再現、
あるいは代替手段の確保を進めている。
以前フィーを助けに行った悪魔の地下通路でも、他世界との繋げ方については明らかに探している状況に見えた。
そしてこれは、アディール・クラーレン側の経験則に基づく仮説になるが、私の手足をアリスに繋げた件は、肉体的な接続によってwalkerの魂の回帰が発生するのかを試した実験だったのではないか。
だが、ブルースは当時まだクラーレンと接触していなかった。
だとすれば、あの“手足を繋げた件”も、世界の消滅と同じく、後から模倣した行動だったのではないだろうか。
フォーラス家の長女。
シャロンについては、ブルースに適当に引っかけたが、正直あまりよく知らない。
気になるとすれば、フィーを迎えに行った時に見たあのエルフの女。
あれは魔法が弱かった事と、フォーラスに対しても協力的な印象があった。
もしあれが、ブルース同様に記憶を引き継いだシャロン・フォーラスなのだとしたら、繋がる。
確定はしなくても、その可能性で見ておいた方がいいだろう。
そして、様子の変わっている感じがするブルース。
フィーの結果を受けて、肉体的な方面からwalkerを獲得するのは難しいと判断したのではないだろうか。
だからこそ今は、クラーレンの知識に沿って、魂から実証する方向へ動いているように見える。
表面上は、アディール・クラーレンとブルースは同じ方向を向いている。
だが、目的は違う。
クラーレンは、自分がなりたいが故の条件調査。
ブルースは、協力的なwalkerを得ることで本来の目的へ近づこうとしている。
同じ道筋に見えても、最終的な着地にはどこかで齟齬が生まれるはずだ。
昔言っていたアディール・クラーレンの仮説では、walkerの条件の一つに衝動的・非合理な自己同一性の必要性を検討していた。
だからこそ、私個人が苦手というより、精神的安定の維持が難しい白い空間での実証は繋がる。
そしていずれもイヴの回帰については、環境が揃わずまだテスト段階にすら至っていない以上、常に候補案として残り続けてしまう。
それを阻止する為にも、山本梓の魂の回収が優先事項であることに変わりはないのだろう。
「もう遅い。和も休んで大丈夫。」
「・・・」
「…分かった。少し話そう。」
三階に降りると、ヒナ達やウーノ達の姿はなかった。
尚弥を探す為に、二人も魔法世界の方を走り回っていたらしい。
偶然とはいえ、アリスの情報やガルシアの協力もあり、無事見つけられたのは本当に良かった。
うどんを食べながら、昨日からの出来事を和に説明していく。
「ブルースと話したのか・・・。」
「あっちも驚いていた。」
「和。××××××について覚えているか?」
「は?何て言った?」
やはり認知できない様子。
フォーラスが消した世界は、あの世界だったか。
世界そのものは比較的最近の世界で、知っている人間や知識が深く広がるには、もう少し時間が必要だった。
だが、フォーラス家と繋がる要素が分からず、放置していたが、ブラッド・オルティースの提案による三人目の消失で消えた世界だとするのなら、意図を持っているのはブラッド・オルティースの方。
「ひとまずそんなところだ。」
「分かった。とにかく無事に帰ってこれたんだから良かったよ。」
「そうだな。リュースは?」
「リュースは魔法世界から怪異世界へ交渉人ドアを最後に使ったみたいだが、そこからはドアの権限を外しているから怪異世界にいる可能性しか分からない。」
「怪異世界ね。」
尚弥は完全に置き去りだったのだろうか。
逃げるルートとは別に、あくまで時間稼ぎとして使ったのか。
それとも、まだ別の目的があったのか。
尚弥には他にも交渉人が接触している。
「尚弥に関連する交渉人は、一応確認して欲しい。」
「あぁ。分かってる。」
うどんを食べ終え、片付けて地下へ降りようと階段へ向かう。
「アリスさんは時間も遅かったから、明日帰ってくる予定だよ。」
「分かった。今回はガルシアにも、ちゃんとお礼をしないといけないな。」
精霊の世界にある私の家に、確かまだ、古いレコードが残っていたはず。
いくつか持って来て、ガルシアに見せてみようか。
まぁ死神についての問題はまだ続いているし、そちらが落ち着いてからでもいいだろう。
ブラッド・オルティース。
前回悪魔の世界の地下で会った時は、非常に私怨的な印象があった。
それ以前にももしかしたら、イヴの時に会っているのかもしれないけれど、覚えてない。
だが、“あの世界”の作成者という意味で捉えるなら…
階段を下り、自分のパソコンから一人の人間の経歴を探す。
――該当なし
歴史上、実在する人物。
それが何故、該当しないとなるか。
その理由は、さっき和にした質問と同じだろう。
認知されていない。
「…なんで消した。」
確かに、死んだ時点で、その人間とはそこで終わりだと考えていた。
ブルースへの返事も、特に意図したものではなく、ただそのまま答えたつもりだった。
だが、その魂そのものが消えていると気が付いた今…
何か違う…
置いていかれるのとは違う。
最初から、そこにいなかった事にされる。
「二度と同じ人間に、会えない事は同じだというのに。」
何が違う?
形は似ているのに、触れた感触だけがまるで違う。
そんな決定的なずれがあった。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




