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第22話


「……」

 ハッキリ告げないクランド様を、私はジッと見上げる。

「うん、まあ、行ったらわかるよ」

 と、クランド様は困ったように微笑み返す。

「……」

 隣のライアンお兄様を見上げても、お兄様は私から視線を逸らすだけで、何も言わない。

 キールも、かなり不審に思っているようだが、諦めたようだ。

 仕方ない、私も諦めよう。

 クランド様の手を取って、私は導かれるまま歩いた。

 連れていかれたのは、王族しか入ることの許されない宮殿。

 そして。

 そこに待っていたのは。


 お父様……っ?!


 だった。

 なぜ、お父様がここに?

 ううん、お父様だけではなかった。

 お母様も、そして、


 おばあ様までっ!


 体調を崩したと聞いていたおばあ様の姿も、そこにある。

 ああ、でも、お元気そうでよかった。

 ホッと胸をなでおろすが、状況はわからないまま呆然としていると。

 私の隣で、キールも驚きを隠せていないのに気が付いた。

 キールもキールで、バーナード侯爵夫妻と兄のマーク様まで居たのだから。

 ウィリアムズ家、バーナード家、大集合だ。

「国王陛下に、クランド・バーナードと」

「ライアン・ウィリアムズ」

 二人が私たちの横で跪いたのに気が付いて、キールも慌てて跪く。

「キール・バーナード」

「ユリナ・ウィリアムズが、お目にかかります」

 と、私はドレスの裾を持ち上げ、頭を下げた。

 スッと国王が手で合図したので、皆立ち上がる。

「大きくなったな、ユリナ」

 と、国王陛下に声をかけられ、私は顔を上げた。

「いくつになった?」

「再来週で18になります」

「……そうか、もうそんな年か。父に感謝せねばな」

「?」

「約束の時が来たようだ」

「……約束の、時?」

 陛下のおっしゃっている意味が分からず、私は首を傾げる。

「王位継承を放棄し、遠く離れた親族とはいえ、王族にはかわらない。それゆえ、お前たちウィリアムズ家はいろんな陰謀に利用される可能性もあった。それを見越して、お前の父は、親友のバーナード侯爵家と早々に婚約したんだぞ」

「……」

「ある、条件付きだったがな」

 フフっと、国王陛下は笑みをこぼす。

「……条件?」

「そのおかげで、私は娘に。皇女に、そこのクランドを婚約者にと考えていたが、先を越されてね」

「???」

 何?

 クランド様は皇女様との婚約話があったの?

 先を越されたって……?

「ユリナ・ウィリアムズは18の誕生日を迎える時、バーナード侯爵家の3人の息子たちの中から、一人、自分で成婚相手を選ぶと言う、条件をな」

「!」

「……それってっ」

 驚いたのは私と、キールだけだった。

「どうやら、世間では三男のキールと婚約したものだと思われていたようだが」

 と、国王は私たちを見る。

「当のお前たちも同じだったようだな」

「……」

「では、ユリナ・ウィリアムズ。改めて今、問おう」

 国王陛下はまっすぐと私を見下ろした。

「お前は誰を相手に選ぶ?」

 驚きすぎて、声が出ない。

 婚約内容を、初めて知った。

 私が、成婚相手を、選ぶ……?

 じゃあ、最初から、私の相手はキールだけじゃなかった……ってこと?

 クランド様で、いいの……?

 私は、隣に居るクランド様を見上げる。

 その視線に気が付いて、クランド様は優しく微笑んだ。

 胸に込み上げる感情が何かわからない。

 うるうる瞳に涙がたまる。

「……」

 クランド様は、知ってたんだろうな、この内容。

 だまされた気分だけど。

 だけど。

 それ以上に……。

 私とクランド様の想いが、いけないものではなかったと許された気がして、嬉しかった。

「私は……」

 ああ、本当に……。

「私は、クランド・バーナード様を、お慕いしております」

「うん、承知した」

 と、国王陛下は満足そうに笑って言った。

「来週の皇太子妃のお披露目会、ふたりの正式な婚姻を発表しよう。皆、驚くだろうな」



「……もしかして、知ってました?」

「……」

 両親とおばあ様はまだ国王陛下とお話があるとのことで、帰りはクランド様が私を送りたいと、申し出た。

 もちろん誰も断る理由もなく、私はクランド様と馬車に乗車しているのだけれど。

 私の目の前にいるクランド様は、呆然としたままの私を優しく見つめている。

 今、私の前に座っている。

 クランド様……。

 まだ、さっきの出来事を受け入れられない自分がいる。

 私の、婚約者は、キールではなかったこと。

「……クランド様は、知っていたんですね」

「うん、ごめんね」

 切なそうに謝られて、私は小さく息をつく。

 ああ、やっぱり。

 と、私は引き攣った笑みを浮かべた。

「……君とバーナード家の間で婚約話が出た時、年が近いキールにと、両親たちは思ってたみたいだけどね。同時に、あれだけ進めてきた俺に対する結婚話も、あの時からピタッと止まってしまった。だから、もしかして、とは思っていたんだ。まあ実際、気が付いたからって、当時の俺には関係ないつもりだったけど」

 と、苦笑する。

「まさか、こんなにもユリナのことが好きになるなんて、思ってもみなかったよ」

 優しいまなざしが、向けられて、胸がドキドキする。

 本当は嬉しくて、今にでもクランド様の胸に飛び込んでいきたいところだけど。

「……」

 我慢、している。

「……どうしました?」

 不思議そうに覗かれているけど、我慢、我慢。

「……」

 我慢よ、ユリナ。

 馬車の中だったとしても、自分からクランド様の胸に飛び込むなんて、はしたないし、恥ずかしいわ。

「……ユリナ?」

「!」

 不意に顔を近づけられ、ビクッと、私はその体を揺らす。

 ああ、もうっ!

「っ!」

 私は目の前に迫ったクランド様の首に巻き付いた。

 クランド様が驚いているのが、身体の反応でよくわかる。

「クランド様と私、結婚できるのですか?」

「……うん」

 私を受け止めて、クランド様頷いた。

「……どうしてもっと早く、教えてくれなかったのですか?」

「いろいろと、準備もあったし」

「準備?」

「うん」

「……」 

 この反応は、教える気がないんだな。

 なら。

「クランド様はいつから、私のこと、好きになってくれたんですか?」

「……」

 私の問いに、クランド様は意地悪に笑う。

「それは、内緒」

 と。



 お屋敷の前で、ライアンお兄様が仁王立ちして私たちの帰りを待っていた。

「……ライアンお兄様?」

 一足先に帰っていたライアンお兄様は、私たちの馬車が到着するのを待っていたようだ。

「……」

 無言なお兄様をうかがいながら、私は先に馬車を降りたクランド様の手を取り降りた。

 はあ、と、小さなため息がお兄様から漏れる。

「長かったな」

 と、クランド様を見た。

「まあ、そうだね」

 苦笑する様子に、なんだか疎外感を感じてしまう。

「少し、寄っていけ」

 と、お兄様はクランド様に告げると、先にお屋敷に入って行った。

 クランド様は私を見ると、耳元に顔を寄せる。

「後で部屋に行くから」

 と囁き、そのまま私の耳を噛んだ。

「!」

 思わず耳を抑え、真っ赤な顔でクランド様を見上げる私に、クランド様は満足そうに笑うと、赤面する私を置いて、お兄様の後を追うようにお屋敷に入って行った。


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