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MIRROR WORLD  作者: 岡本
2/3

1.

___<MIRROR WORLD -1000万ダウンロード突破!>


 あっ、変わってる!昨日の夜、お兄ちゃんに「そういえば駅にお前の好きなアイドルの巨大ポスターが貼ってあったよ。」と教えてもらってたので、部活帰りに寄り道したのだけれど、一歩遅かったみたいだ。

 ついてないなぁ。今日はあまり自信のない模試の結果が返ってくるから、ポスターの写真でも撮って元気を出そうと思ったのに。

 楽しみが消えてしまい、なんだかやる気が出ない。急いで家に帰って塾に行かないと駄目なのに、ぼんやりと広告の前でスマホをいじってしまう。

 そもそも中学生になったばかりなのに、もう塾に通わないといけないなんて…。お母さんや塾の先生は、内申点の為にも今から頑張らないとって言うけどさぁ。

 そう心の中でぼやいていたら、気づいたらスマホ画面上の時間の表示は16時53分を示していた。もう駅から出ないとまずい時間だ。はあぁーと心の中で大きくため息をついて、スマホをブレザーのポケットの中にしまう。そして駅の構内から出る前に、なんとなく目の前にあるポスターをもう一度見てみた。

 MIRROR WORLD_ミラーワールドって読むんだよね、これ。ミラーのつづりって、こう書くんだ。ふーんと思って見ていると、その下には1000万ダウンロードと書いてある。また中央の文字を囲むように、上下左右には4人のカラフルな髪色をした男女も描かれていた。

 ゲームの広告かな?こうやって大きく宣伝されてるってことは、そこそこ有名なのかも。って、そんなことはどうでもいいか。早く帰らないと…。


 「申し訳ないけど、右に寄ってもらえないかな?」


 …あれ?背後から急に声を掛けられて、後ろを振り向くと、制服を着た女の子が立っていた。

 右に寄ってて…?と自分の立ち位置をふと確認すると、ちょうどポスターの真ん中を自分がふさいでしまっている。その子の手元を見ると、スマホが握らているので、撮影しようしていたのかもしれない。

 _完全に邪魔なやつだ。「ごめんなさいっ!」と謝って、急いで右にずれる。

 「いいよいいよ、気にしないで。」とその子は笑いながら、さっき私が立っていた場所まで移動して、スマホを構えて撮影を始めた。

 紺のブレザーにスカート。同じ学校の子だ。胸元のリボンは緑色だから、私と同じ中学1年生だよね。ちらっと横顔を見てみると、丸い顔に丸い目に、丸い眼鏡。少しタヌキに似ていて、親しみやすさを感じる。

 肩には通学カバンがかけられていて、何のキャラかは分からないけど、いくつもの缶バッジが付けられていた。…先生とかに怒られないのかなぁ。

 そんなことを考えていると、隣の撮影は終わったみたいだった。

 「そういえば、そっちはもう撮り終わったの?」

えっ、私?そっか。ここにいたら、これに興味がある人みたいに見えるよね。

 「いや、ここではぼーとしてただけで…。私はこのミラーワールド?は全然知らないんだ。」

 「…そうだったんだ。あっ、でもこのゲーム面白いから、興味あったら是非!」

 やっぱり、ゲームの広告で合ってたんだ。でもゲームはあまりやらないからなぁ。たまにお兄ちゃんがやるのを横で見せてもらうぐらいだ。それにスマホゲームだと、課金とかも必要そうだよね。

 そんな私の心を読んだのか、「今、無料キャンペーンもやってるから!課金しなくても、十分楽しめるよ。」と続けて言われる。

 へぇー。そんなに言うなら、とりあえずインストールだけでもしようかな。ポケットからスマホを取り出して、ロックを解除しようとする。画面には17時4分と表示されていた。…17時4分?


 「あぁぁー!」

 「どうしたの!?」


 塾のこと、忘れてた!


 「これから塾なんだけど、家に帰る時間が…」45分から授業だから家に帰ってたら、間に合わないよね…。

 「えっ!…ごめん。忙しいところ私が声かけちゃって…」

 いやいやいやいや!慌てて、その言葉を遮る。

 「そもそも、私がぼーっとしてたから、こうなったんだし!それに、直接行けば間に合うから。」

 家に帰らずそのまま行けば、塾はこの駅から1分もかからないので、全然余裕がある。テキストは塾で借りればいいし、宿題は…。明日まで待ってもらおう。

 本当に大丈夫?と心配する声に、大丈夫だよ!と返しなら、スマホのゲームストアからミラーワールドと検索する。

 そうすると、1番上にMIRROR WORLDと表示がでてきた。これだよね?と画面を横に見せる。

 「そうそう。あっ、入れてくれるんだ。」

 「うん、1回スマホゲームやってみたくて。せっかくおすすめもしてくれたから。」

 「そう、すすめてよかった。……あっ、アプリをインストールしてデータのダウンロードが完了するまで、3分くらいかかるから、その間にコンビニに行ってきてもいいかな?頼まれてるものがあって…」と、隣の女の子は私達の後方にあるコンビニを指差した。

 どうぞどうぞと言うと、すぐ戻るから!とその子は走っていった。


 そういえばあの子の名前、まだ聞いてないな。このゲームの内容もどんなのなんだろう?帰って来たら、聞いてみないと。

 そんなことを考えながら、ポスターを再度見る。

 MIRROR WORLD_鏡の世界。うーん、タイトルだけじゃ、よく分かんないな。

 

 「お待たせ!ダウンロードは終わったかな?」

 データのダウンロードが終わったタイミングで、むこうもコンビニから帰って来たみたいだった。

 「うん、ちょうど終わったよ。」そうだ、とりあえず名前を聞かないと。

 「あの…。今更かもしれないけど、名前教えてくれないかな?制服で同じ学校なのは分かるんだけど…。私は1年4組の金森(かなもり)華奈(かな)。」

 「……あぁ、名前忘れてたね。私は…1年1組の(かがみ)ミラと言います。」

 鏡ミラ、珍しい名前だな。

 …そうだ、後これも聞かないと!

 「よろしくね!後さ、これも今更かもしれないんだけど、このゲームってどんな話なの?」

 「うーん。もう説明するより、体験してもらった方が早いかな。」

 それもそっか。まぁ、内容を事前に知っていても面白くないかも。ネタバレになっちゃうよね。

 


 「だから、今からMIRROR WORLDにいかない?」

 確かに、実際にいってみるのが1番分かりやすそうだと「うん。」とうなずく。

 

 って…ん? 思わずうなずいちゃったけど、どういうことだろう。ミラーワールドに行くって?あれ、ミラーワールドってゲームのことだよね。()()だからゲームの世界に行くってこと?…なんかよく分かんなくなってきた。

 


 うーん、と首をひねっていると、むこうも「まさか、こんな簡単にいくとは…」と同じポーズをしていた。


_しばらく沈黙が流れた


 先に口を開いたのは、むこうの方だった。

 「…まぁ、同意が得られたのでいいでしょう。」

 同意ってなんだろう?もしかしてさっきの?

 後、なんでいきなり敬語?


 その言葉の意味をたずねようとしたが_もう遅かった。

 「いってらっしゃい。」と言われて、視界が真っ白に染まる。




 横にあるポスターも、目の前に居たミラも、何もかもが白くなって、見えなくなる。

 そうしている内に、どこかからぐにゃりと音が聞こえて___ナニかが反転した。


 体が熱い。左腕がじんじんと痛む。それとは反対に、意識の方はどんどん薄くなっていく。


 そういえば…。私は、いってらっしゃいと言ったあの子(ミラ)の表情を思い出す。

 抜き打ちで単語テストの紙を配る先生みたいな顔をしてたな。少し意地悪で、何かを試すような…。


 そうしてとうとう周りは白から黒へと変わり、私は意識を失った。

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