表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルトストーリア  作者: あきら ななせ
群青の創造主と静謐の聖騎士
18/64

知らない部分 9

 周りを見れば野次馬はすでに解散していて、ロイとハーノインが責任者に連れられて何処かへ向かっている。

「蓮!」

「レイ、あとジョシュアもか」

 武器の調整が終わったのだろう。 二人が慌ててやってきた。

傷だらけの蓮を見て、レイが悲鳴をあげる。

「蓮、傷が! それに祭星は?!」

「俺は問題ない。 舐めときゃ治る。 ただ祭星は……。 いま病棟に連れていかれた。 俺より祭星を」

「バッカヤロウが!!!」

 ジョシュアが蓮の頰を殴った。 胸ぐらを掴んで吼える。

「んなに怪我して何が問題ねぇだ!! テメェも行くんだよ! レイ! 転送準備してくれ、すぐ連れて行くぞ!」

 レイが力強く頷いて転送魔法を開始する。 光に包まれながら、蓮はやれやれと笑う。

「じゃあ怪我してるやつを殴んなって話だ」

「あ“?! なんか言ったか!!」

「なんでもねーよ。 ありがとな」

 小さく呟いたが、ジョシュアには聞こえてなかったようだ。 レイは聞き取れたのか、やれやれといったように苦笑いをした。

魔法が発動した。 辺りを見渡すと既にもう病棟の中だった。 中は慌ただしく、大勢の患者が検査を待っているようだった。

「相変わらず、運び込まれる魔法使いが多くねぇか?」

「エルドリッジさんが言っていたでしょう。 魔法使い不足だって。 普段は戦闘に出ない伍長以下の魔法使いも前線にいってるそうだから、負傷者も多いんでしょう」

 受け付けの魔法使いにレイが目配せをすると、魔法使いはアッと声を上げてナースステーションへ入っていった。 そして代わりに出てきたのは銀髪の女だった。

「君が白石 蓮くんだね。 ごめんよ、中庭まで迎えに行けなくてサ。 さ、受け付け登録は顔パスして、治療室に行くヨ」

 赤縁のメガネをかけ、ボサボサの髪の女性。 瞳の色は茶色で白衣もヨレヨレだった。

だがこの女性は衛生部隊の責任者。 現魔法使いの中で一番の長生きとされている回復魔法のエキスパートだ。

名をリャウレン。 竜人だ。 歳はおそらく五百を超えている。

「一応訓練だっていうのに酷い暴れようだったね彼らはサ。 実戦訓練は相手に怪我を負わせないっていうルールがあんのに何やってんだかネ」

 長い廊下をつきあたり、右に曲がるとすぐに治療室だった。 だがリャウレンはそこをスルーしてさらに突き進む。

 赤いランプのついた一室、魔力の満ちた特別治療室だ。 リャウレンは手をかざしてロックを解除すると中へ三人を招き入れる。

 中はほとんどが真っ白だった。 壁も床も、カーテンまでもが真っ白。 治療器具と、真っ赤に染まった包帯以外は白だ。

 ピッ、ピッ、と一定の時間で電子音を刻む機械。 三つの点滴を腕につけてベッドに横たわっていたのは祭星だ。

「ま、まつほ……」

 レイが真っ青になって駆け寄る。

「呼吸は安定してるヨ。 流した血が多すぎたんだよネ……」

 リャウレンが蓮を椅子に座らせて、額の傷を消毒する。

「血液を貸して欲しいと思ってネ、彼女調べた。 でも無理だ。 特殊すぎる」

 傷口にガーゼを当てて止血したリャウレンは、あたりに人がいないことと、盗聴されていないことを確認して妨害用の結界を展開した。

「単刀直入に言うけど」

祭星を見つめて、リャウレンが続ける。

「彼女は人間じゃない」

 この世のものとは思えないほど、美しく白い頭髪。 睫毛さえも白く、儚く、そして可憐。

 だがその白髪の毛先に、赤い魔力の色が染まっていることを、蓮は今初めて知った。

今まではなかったはずだ。

「魔力が、溢れている……?」

「ウン。 なんでだとおもう?」

 リャウレンが椅子から立ち上がり、祭星の側へ寄る。 蓮も誘われるように彼女の隣へ。

「負傷した身体を魔力で治そうとしている。 再生しようとしている。 それってネ、魔物、悪魔、そのもののスキル。 いわば能力」

 魔物は腕を切ってもすぐに再生する。 その力は人間にはないものだ。 たとえ魔力を持っていようとも、再生するには二、三日かかる。

「彼女に施したのは点滴だけ。 わかル?」

「て、点滴だけ……?」

 ジョシュアが言葉を失う。 点滴だけしか処置していないということは、骨折していた腕と足は全て自分自身の魔力で再生させたのだ。

「透視した、内臓系は全部回復されてル。 ボクは何も処置してない。 ね?」

 リャウレンはちらりと蓮を見る。 彼はいつもと変わらない表情で、祭星を見つめていた。

レイは祭星の手を握って、祈るように目を閉じている。

「調べた結果、血液に人間の血と魔物の血と、天使の血混じってタ。 つまり造られた。 意図的に、何者かによって」

 ここからが本題。 とリャウレンが蓮の顎を人差し指で撫でる。

「知りたい? 誰が彼女をこうしたのかサ」

「……!」

「ボク、五百年くらい生きた。 誰がやったか知ってる」

 ニヒッとリャウレンは笑う。

恐らくリャウレンも、これが目的なのだ。 全て知っているのだろう。

「ボクさ、そいつ好きだった。 でも今は違うヤツになった。 から、ソイツ殺して、いつものあいつに戻す。

 どう? 一石二鳥。 あいつ元に戻ったら、彼女を悲しませない術を、教えてくれる」

「……」

 乗らないわけが、なかった。

考えただけでわかる。 このままだと祭星がどうなるのか。 もし次負傷したとして、リャウレンではない誰かに検査や処置を受けたら? その時にこの混血のことについて知られたら。

 魔物とのハーフは珍しいことではない。 だが、それに天使の血も加われば話は別。

魔物と天使と人間の血が混ざった、得体の知れない造られたモノ。

 危険とみなされて殺されるに違いないのだ。

蓮が拳を強く握り、リャウレンと向き合う。

「……手を貸す」

「ウン、そう言うと思ってた」

 レイとジョシュアも同じように覚悟した表情をしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ