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アルトストーリア  作者: あきら ななせ
群青の創造主と静謐の聖騎士
12/64

知らない部分 3

「……やっぱり赤が似合うね」

 十八時ごろ、ようやく買い物を始めた祭星は、赤いコートを試着した蓮に素直に感想を言った。 両手には同じ形のコートの色違いを持っていたのだが、やはり無難な色を着せても、パッとしないのだ。

似合うのは似合うのだが、蓮には赤が映えるのだ。

 祭星の隣で、ショップの店員も腕を組んで蓮を見ていた。

「赤って着こなせる方中々いないんですけど、服に負けてないっスよね……。 茶色より黒よりやっぱり赤がしっくりくる感じっスね」

「そうですね……。 なんですかね、顔? 顔がいいから?? 顔がいいからなんでも似合うってことですか」

「ありえるっスね」

 試着を終えた蓮が、やれやれとした顔で店員にコートを差し出した。 買うようだ。

他にも一通りの服を買ったのだが、会計の画面を見て祭星が思わず言う。

「男物のお洋服って、結構いいお値段するよね……」

「そのかわり男はあんまり買いかえないっスからね〜。 お姉さんはコートだけでも2着3着は持ってたりします?」

「そう言えばそうかも……。 靴とかに合わせて、買っちゃったり」

「その辺の違いっスね。 あと単純に男物のブランドってショッピングモールでも意外と少ないんっスよ。

だから一気に揃えて、だいたいこんなお値段っスね」

 払い終わった蓮が荷物を受け取る。  色々見て回る予定だったが、蓮の用事はほぼこの店で終了してしまったようだ。

「たくさん買ったね。 なんでも似合うから羨ましいなー」

 すると彼はじっと祭星を見て、向かいのアパレルブランドそ指差しながら言った。

「お前は白が1番似合う」

 ちらりと見れば真っ白なセーターがウィンドウに飾ってあった。

「たしかに。 お姉さん、髪の色が綺麗な白っスから、より一層引き立てられそうっスね」

「き、綺麗? この色が?」

「そうっスよ?」

 店員はきょとんとした顔をして、続ける。

「そんなに綺麗な髪色なんて初めて見たっス。 ……巷じゃなんて言われてるのか、テレビとか雑誌でよく書かれてるっスけど、自分は綺麗だと思うんスよね。 お兄さんの色だって、落ち着いた深みがあって素敵だ。  その色は、その人だけの色って聞いたっス。 だからそれを誇りに思ってほしいっス」

 レジに他の客が並んだ。 店員は小さく会釈して、接客へ戻って行った。

店を出た祭星は、向かいのショーウィンドウを見て、呟く。

「その人だけの色、か……」

「見ていくか?」

「……みたい、けど、その、このブランド……」

 少し大人向けの、クラシカルなデザインのブランドだった。

裾の広がったワンピースや、リボンのついたブラウス。 ロングの重厚なフリルスカート。

「か、可愛いけど、これはちょっとレベルが高すぎるって言うか……!!」

「はぁ……」

 つま先から頭のてっぺんまで祭星を見た蓮は、ニヤリと微笑んで彼女の背中を押す。

「お前、絶対似合うぞ」

「は、ちょ蓮?! わぁぁあああ」

 二人のやりとりをみていた女性店員が逃がさんとばかりに祭星をひっ捕まえて店の奥へ連れていく。 蓮はその悲鳴をあげる祭星の後ろを愉快そうについて行った。



 試着室の前にある椅子に座り、読みかけの本を開いていた蓮は、何度目かの祭星の小さな悲鳴を耳にした。

「何を着せても絵になりますぅ」

 祭星と共に試着室から出てきた店員が、蓮の隣に並ぶ。

フリルのついた形のいいパフスリーブの白いブラウスに茶色のベスト。 黒い膝丈のふんわりとしたスカート。

……を着て顔を手で覆っている祭星。

「買いで」

「ありがとうございまぁす!」

「待って待って!! 何着買うつもりなの!」

「合計で十二着目だ」

「律儀に数えてるのね……」

 幸いなことに試着はこれで終わりだ。 レジへ進む祭星の頭を、服についていた金額の心配がさーーーっとよぎった。

「待って……。 これ総額おいくらに……」

「安心しろ、金ならある」

 フッと口元に笑みを浮かべた蓮。 祭星はその表情を見て逆らうのはやめようと思った。

 それとお金のことはまず置いておいて、単純に本当に正直に可愛い服だった。 はっきり言うと好みの服だ。 よくこのショッピングモールに嶺二と来るたびに通り過ぎてはチラチラと横見していたのは本当の話だ。

ただ自分に合っているのかがわからない……。 こういうものは特別可愛い少女が着るものではないのだろうか。

「あ、今着てるこの服は着たまま帰ります」

「どうして勝手に決めてるのかな」

「そうおっしゃると思って、タグは取っておきましたぁ」

「店員さん?」

 謎の信頼関係を築きつつある蓮と店員からそそくさと逃げるべく、店の外へ先に出た。

携帯の画面を点けるともうすぐで十九時だ。 あたりは塾帰りや部活帰りの学生で賑わっている。

 紙袋を提げた蓮が戻ってきた。

「一つ持つよ」

「気にするな」

 断られた。

ちらほらと何人か同じブランドの服を着ている子がいる。 みんな似合っていてすごいなと思いながら、祭星は蓮の後を追った。

「服も買ったし、バッグも買ったな。 確か家具とか小物はヴァチカンの居住区にあるんだったな」

「うん。 自分たちで持っていくのはほとんど服とか貴重品ばっかりだよ」

「つーことは終わったな。 せっかくだし何か食べて帰るか?」

「うん。 でもちょっとしたものでいいよ。 ……服、汚したくないから」

 恥ずかしそうに祭星が目を伏せる。

じゃあ。 と蓮は携帯の画面を見せる。

そこには昼間飲みそこねたキャラメルラテのHPが。

「ここにもあるんだろ。 そこいくか」

「……! うん!」


 祭星と蓮がヴァチカンへ向かうのは一日後。

それまではこうして、再開した喜びを、普通の高校生として過ごすのだった。

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