どこかの場所にて 9
─「なんで勝手にスキルを付けたんだよっ!!」
先程の謎光線によって、スキルを取得。
白い球体の暴走で、今後の人生プランも強制的に決められた形だ。
頼る者の無い非常識な"世界"で、生き残る為の非常に大事な大事な選択だ。慎重に考えて、悩んで悩んで考えて、途中、現実逃避しながら考えて、まだ答えの欠片も見付からない中での、この暴挙!
しかも取得したスキルは、使い勝手が悪過ぎる!
数多あるスキルの中で、取得したのはお約束なのか当然のように[従魔術・改]だ!!!
白い球体に言われるまで身に付けた事に気が付かなかったが、意識する事で改めてこのスキルの能力を感じる事が出来る。主にダメな方に。。。。
もし素人が野性動物に触ろうとしたらどうなるか?誰が見ても解る事だ。
それを訳の解らない非常識な所で、さらに魔物に触るのだ。もう見たくないし解りたくもない。
どんなギャグだ?まったく笑えないぞ。…ジョークと言うならセンスが無い。悪ノリにしても、タチが悪過ぎる。
…これまでの出来事で疲労が溜まり、もうクタクタだ。
だがそのせいか、幾分冷静になれた。
よくよく考えたら白い球体はスキルを付与出来たり改造したりと、色々出来るヤツだ。一度しか出来ない訳では無いだろう。
「…スキルは付け直せるんだろうな?」
『…♪。…… 。』
「んん?」
『…♪。…… 。』
「をぃ… まさか… 。」
『…?!♪……』
── 終わった。 すべてが終わった。。。。
膝から崩れ落ちる…
実際、こうなるとホントに膝から落ちていくんだなと冷静な感想を思い浮かべる一方、始まる前に終わってるってどうよ?と少し可笑しくなってもいた。
いや、これまでの疲れも合わせてオカシくなってるのかも知れない。
踞った体勢から顔を上げると、白い球体がさらに高い位置にまで浮き上がっているのが視界に入る。
こちらの物理的な反撃を恐れて浮き上がったのなら、確信犯だろう。…充分、手が届く高さだけど。
─周りの現状を確認する。
このどこまでも続く真っ白い空間の中には、白い球体と自分だけ。武器になりそうな…と言うか一切何も物は無く、あるのは自分の手足だけ。
球体の直径は大体1メートル程の大きさで、掴んだり出来る取っ掛かりや、抱え込んだりは無理だろう。
…ふむ。やはり殴ったり叩いたりしか出来る事が無いな。
ここで、あのアイテムカタログを思い出す。図鑑もだ。見当たらないと言う事は、回収したのだろう。
やはり犯人は、この状況をも予想して、用意周到に計画していた様だ。なんて卑劣な…!!
順調に白い球体へのヘイトを高めている中、ある疑問が思い浮かぶ。
─ 確か"魔術か基本スキルのどちらかと熟練度、他に派生スキルや一般スキルを身に付ける"って話だった筈だ。
それはどうなった?
「おいっ! 他のスキルとかの取得はどうなってる?!?」
『─────── 』
あっ、フリーズした。そのままゆっくりと重力に曳かれて降りてくる。
…って事は …まさか一回コッキリ? このスキルだけで行けって事かっ!?向こうで自力で取得しろってか!?!?実質、なんの能力も持たずに生きていけってか?
ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁーっっ!!!!!!!!
~・~・~・~
…最悪だとは思っていたが、それすら甘かった。事態はより一層深刻だった。
白い球体の完全なフライングにより、実質、無能力状態で"どこかの世界"へ逝かなければならない。
上げて落とすと言う言葉は知っていたが、最初から落とされた上に、また落とされ石まで投げられるとは思わなかった。
たった一度の出来事で、こうも小出しに最悪を繰り返えされると、何が最悪なのか自分で言ってて訳が解らなくなる。
恨みがましく白い球体を睨んでみても、事態は変わらない。今や精神的にも肉体的にも疲労が溜まり、怒る気力も消え失せた。
悟りの境地とは、こう言うものだろうか…? 多分、違うと思うけど。
半分冗談で考えていた事だが、まさか本当にアイテム頼りになるとは……。
~・~・~・~
アイテムカタログを必死の思いで見てはいるものの、有用な手立ては簡単に見つかる筈もなく、苛立ちや焦りを原動力にページを捲る。
「ホントなら他に身に付けた筈のスキルとかの替わりに、アイテムを余計に多く貰うからなっ!?」
『 …、!……』
「上限? …知るかっ バーカ!!」
とは言え、武器や防具を貰って戦えるとは思えない。せいぜい貴重そうなアイテムを元手にして、お金に変えるくらいだろう。
しかし、お金がアイテム扱いじゃないのは、もう悪意にしか感じられない。まぁ…、国が違えば使えない可能性もあるし、他にも理由とかがあるのだろうが。
貨幣がちゃんと流通している国なり地域なりに、降り立つ必要があるな…。
「あっちの"世界"に行くって言っても、具体的な場所はどこになるんだ? ちゃんと街とか国の中なんだろうな?」
『…。。……?、』
「 …んん?何か言ったか?」
『 … 。』
場所が指定出来るんなら、するに決まってるだろ。誰がランダムなんか選ぶんだよ。もう充分以上に難易度上がってるんだよ。
今はどれだけその難易度を下げられるかに、命が掛かっているんだよっ!
白い球体からカタログに視線を戻して、あるアイテムの所で手を止める。今眺めているのは"魔核の欠片"だ…。
ずっと気になっていたのだ。
曲がりなりにも使役能力を持ってしまった以上、従魔の強化は必須だ。
今気が付いたのだが、使役能力者は自身に戦闘能力があってもあまり意味がない。護身を考えるなら全く無いのも不安だが、今は置いておく。
代わりに能力のある従魔を使い補うのが、使役能力者の本来の姿だ。
極端な話、使役能力者は、使役能力だけでもいい訳だ。そう考えるとこの状況は、悪く無いと言え無くもない。
…無理やりな考え方だが。
チラリと白い球体を見る。まだまだ煽れば大量のアイテムを入手出来るかも知れない。
そもそも、勝手にスキルを付与したのが原因だ。当然の事だろう。
こうなったら意地でも従魔を手に入れてやる。
そして、このアイテム群を駆使して強化するのだ!
…でもその前に、どうやって従魔にしよう。。。。
ようやくキャラメイクが終わったようです。
…ちなみに、球体君に悪気はありません。ただ、残念なだけなのです。