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もう、恋なんてしない  作者: 桐島ヒスイ
第三部

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 ローランドの領主拝命式が終わった夜、アデレイドはローランドと穏やかな時間を過ごして、自然と気持ちの整理が付いていた。

(多分ローランドはもう大丈夫だ……)


 父親を亡くした直後の、呆然自失状態のローランドはもういない。

 勿論まだ、ぽっかりと空いた胸の空洞は消えていないだろうけれど、彼は少しずつ前を見据えて歩き始めた。


 喪失の悲しみを埋めるように寝食を忘れて只管仕事に打ち込むようなことはしなくなった。アデレイドとジャレッドが注意しなくてもローランドはきちんと朝起きて食事を摂り、夜は眠るようになった。


 一時はアデレイドたちが声を掛けなければ眠り方を忘れてしまったかのように朝まで仕事をしていたのだ。


 今、隣に座るローランドは穏やかな表情をしている。

 アデレイドの話に耳を傾け、微笑んでくれる。

 アデレイドにはそれが無性に嬉しかった。

(良かった、ローランド……)


 ローランドが落ち着いたのならば、アデレイドはここを出て行かねばならない。

 元々彼が立ち直るまでの期間限定の秘密の同居だ。

 あまり長い間留まり続けることは想定していないし、現実問題としてそろそろ潮時であることは確かだった。


 これ以上学院に秘密で寮内に異性が潜り込んでいることは危険でしかない。

 アデレイドもいつまでも休学を続けるわけにはいかない。

(本当は学生としてこの学院で学べればよいのだけど)

 それは王女が在学している時点で選択肢にない。


 ローランドは今観花会の準備で多忙を極めている。以前のように現実逃避から寝食を疎かにしているのではなく、単純に仕事が多すぎて徹夜続きになっている状態だった。

 アデレイドにも手伝えることがあるのならば手伝いたかった。

 ほんの少しだけれど、観花会の準備を手伝ったらローランドは助かると言って喜んでくれた。ローランドの役に立てたことが嬉しかった。

(観花会が終わるまでは、いいよね……)

 アデレイドにとっても、こんなにローランドと一緒に過ごすのは子供の頃以来で、本音を言えば離れがたかった。

(でも……)

 やはりこの状態でいつまでも、というわけにはいかない。


 アデレイドは観花会が終わったらここを去ることを決めた。






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