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第三十話:生徒会室の日常と、帝国の新たな夜明け

「生贄」として奪われるはずだった未来を自らの手で切り拓き、公爵家新当主となったアイラ。

その隣には、どんな戦場でも背中を守り抜いたタクトの姿がありました。


帝国中枢を動かす実力を手に入れても、二人の原点は変わらない。

頼もしい仲間たちとともに、新たな時代へ向かって歩み出すエピローグです。


全三十話、アイラたちの戦いを見守ってくださった皆様に心より感謝を込めて。

最高のフィナーレをどうぞ!


事件から数週間後。重苦しい瘴気とカビ臭い権威に満ちていた公爵邸の執務室は、柔らかな朝日が差し込む開放的で機能的な空間へと改装されている。

私は当主デスクで羽ペンを滑らせ、次々と決済書類にサインを走らせていく。

以前の陰湿な不正取引書類ではなく、領民のための減税案、魔導インフラの整備計画、不正資産を充当した「領内復興基金」の設立認可書が綺麗にスタックされていく。

ノックとともに、白銀の軽装甲冑を身にまとったギルバートが入室する。

かつての冷徹で張り詰めていた表情は消え、清々しい武人の顔つきで敬礼する。

「当主様、領内騎士団の再編および旧父親派の私兵の解体・適性再配置が完了しました。民からの評判も極めて良好。『新当主様の減税令のおかげで冬が越せる』と、領民たちが広場で祝祭を開いているほどです」

「当然よ。あのお父様が私腹を肥やすために搾り取っていただけなんだから、本来あるべき場所へ還元したまでだわ」

私は書類から顔を上げ、兄に悪戯っぽく微笑む。

「それにしてもお兄様、以前よりずいぶんと顔色が良くなったんじゃない?」

ギルバートはフッと苦笑いし、言う。

「……操り人形でいるより、己の誇りを懸けて守るべき主君……お前がいる方が、性に合っているらしい」

歪んでいた家族の呪縛を乗り越え、真に対等で強固な「当主と筆頭騎士」の絆がここに示される。

私は最後の書類に「承認」の印璽を押し、満足げに立ち上がる。

「公爵家の基盤固めはこれで一段落ね。……さて、長居は無用よ。私たちの『本拠地』へ戻りましょう」


慣れ親しんだ生徒会室の扉を開けると、そこにはいつも通りの日常風景が広がっている。

執務机には山積みの書類、紅茶の良い香り、カタカタと鳴り響く魔導端末の操作音。

公爵家という巨大な権力を掌握してもなお、彼女たちの本拠地はこの部屋だった。

リサは眼鏡をクイと押し上げながら

「帝国法務省と監査局から『特任補佐官として即座に入省してほしい』と熱烈なスカウトが来ましたが、丁重に破棄しておきました。国家の官僚になるより、この生徒会で会長の無茶振りを法的に整える方が遥かに有意義ですから」

と言う。

セリアも優雅に紅茶を配りながら言う。

「帝都の裏サロンはすっかりわたくしの情報網の傘下ですわ。旧体制の貴族たちも、今やわたくしの顔色を窺ってペコペコ頭を下げてきますの。実に愉快ですこと」

ノアは端末のホログラムを軽快に回しながら

「公爵家の古代魔導アーカイブを生徒会ネットワークに直結しました。これで帝都全域の魔力ログと防犯カメラの常時監視が可能です。……タクト、外周警戒の負荷が30%軽減されますよ」

とタクトに言う。

セナは窓枠から音もなく降り立ち

「影の掃除はいつでも〜。ネズミは一匹も残さないよん」

と言う。

生贄として売られかけ、誰にも頼れなかったはずの落ちこぼれ令嬢。

今やその周りには、帝国最強の実務力、情報力、武力を持つ仲間たちが、損得勘定ではなく自らの意志で集まっている。

「ふふっ……皆、本当に頼もしいわ。最高の生徒会役員たちね」

メンバーたちの賑やかなやり取りの中、壁際に控えていたタクトが静かに私と視線を合わせ、小さく頷く。

部屋の外が夕暮れに染まり始め、私はバルコニーへ向かって歩き出す。


賑やかな生徒会室を背に、バルコニーへと出る。

黄金色と茜色が混ざり合う夕暮れの光が、学園の尖塔群と帝都の街並みを美しく染め上げている。

静かにドアが開き、タクトが歩み寄って私の斜め後ろ、いつもの定位置に立つ。

「公爵家の掌握、領民の解放、貴族院の屈服……本当にお疲れ様でした、会長。もうあなたを『生贄』と蔑む者も、その未来を奪おうとする者もいません」

最初の出会いから、理不尽な運命をすべて実務と力で覆してきた軌跡を振り返る二人。

私は手すりに寄りかかり、夕風に長い髪をなびかせながら穏やかな笑みをこぼす。

「私はこれからも立ち止まらない。この国も、貴族の理不尽も、私の手の届く範囲すべてを規律正しく塗り替えてみせるわ。……ついてきてくれるかしら、タクト?」

タクトはわずかに目元を和らげ、胸元に手を当てて静かに頭を下げる。

「どこまでも。あなたが前に進み続ける限り、俺の障壁は誰にも破らせません。……あなたの背中は、俺の場所ですから」

強固な魂の共闘、最強の「盾と矛」としての永遠の誓い。

「会長ー! タクトー! お茶が入りましたよー!」「明日の予算委員会資料、最終確認をお願いしますわ!」

部屋の中から聞こえるセリアやノアたちの呼ぶ声に、二人は顔を見合わせてクスリと笑い合う。


翌朝、清々しい朝日が生徒会室を照らし出す。

制服の着こなしも完璧なリサ、セリア、ノア、セナが定位置に着き、入口には白銀の制服を整えたギルバートが騎士団との連絡係として控えている。

私の隣には、青銀の魔導腕甲を装着したタクトが万全の構えで立つ。

カラン、コロン……と荘厳な朝の鐘が学園中、そして帝都の空へと高らかに鳴り響く。

窓の外には、新体制となった学園で胸を張って登校する大勢の生徒たちの活気あふれる姿。

私は生徒会長デスクの前へ歩み出て、誇らしげに指揮杖をトンと床に鳴らす。

手元には山積みの改革書類、指には公爵家当主の蒼銀の印璽、そして胸には輝く生徒会長の金バッジ。

怯えて生贄を待つだけだった少女はもうどこにもいない。帝国全土を動かす若き支配者が、最高に不敵で魅力的な笑顔を仲間たちに向ける。

「さあ皆、今日も規律正しく――生徒会の業務を始めるわよ!」

「「「了解イエス・プレジデント!」」」

響き渡る声とともに、生徒会室の扉が勢いよく開かれ、新たな時代へ歩み出す全員の後ろ姿、その姿は今までになく輝いていた。

お疲れ様でした〜〜〜〜!!!

第3章完結です!!!わーいわーい!!数日で頑張った私!!

プロットは勢いで書いたのでそれに肉付けしながら書いてるんですけど、いやあ今回は筆が乗りましたね。過去一筆が乗りました。

それもこれもギルバートとかいう男のせい()

この後はスピンオフを挟み、第四章へと向かいます。

これからもお付き合いいただけると嬉しいです!

感想メッセージTwitterフォローお待ちしております!


Twitterには今(8月30日22時時点)のところアイラ、リサ、ノア、ギルバートのビジュが載っておりますのでよかったら覗いてみてくださいね。

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