第二十三話:粉砕された扉と、冷徹なる兄
新章突入です!
突然の来訪者によって明かされる、アイラ会長の隠された「真の名」。
家族から「くだらないおままごと」と切り捨てられる学園での日々と、生徒会の仲間たち。
指先一つで攻撃をいなす規格外の兄を前に、タクトたちは一歩も引かずにアイラの背中を庇い立ちます。
血の呪縛に抗う、生徒会の熱き宣戦布告をお楽しみください!
カツン、と靴音が止まった次の瞬間――ドゴォォォンッ!!という凄まじい衝撃音。
ノブに触れることすらなく、純粋な魔力波の塊によって生徒会室の頑丈な木製扉が枠ごと粉砕され、木片が室内に激しく飛び散る。
ティーカップが落ちて割れる甲高い音と、白煙が室内に立ち込める。
舞い上がる粉塵の奥から、悠然と歩み出てくる長身の青年。
乱れ一つない漆黒と深紅を基調とした最高級の軍礼服風ローブ、胸元には帝国中枢の超名門家しか帯びることを許されない「黄金の獅子と剣」の家紋。
アイラと同じ鮮やかな赤髪を後ろで綺麗に撫で付け、冷徹そのものの深紅の瞳で部屋の中を一瞥する。
男が一歩足を踏み入れるだけで、室内の気圧が急激に変化し、重力が数倍に跳ね上がったかのような重圧が生徒会メンバー全員を襲う。
机の上の書類がビリビリと震え、窓ガラスにピキピキと細かな亀裂が入る。
鷲宮生徒会長の魔力ですら「荒々しい暴力」だったのに対し、この男の魔力は「触れたものを無条件に跪かせる絶対の支配」だ。
________な、なんで兄様がここに!?
私は青ざめたまま唇を噛み締め、指先を震わせている。
「……相変わらず悪趣味な部屋だな。誇り高き血を引く者が、泥にまみれたネズミどもと何を企んでいるかと思えば」
部屋の空気を完全に凍りつかせる、氷のように冷たくよく通る美声が響き渡る。
侵入者の暴挙に対し、タクトが即座に私の前に割り込む。
「誰だか知らないが……いきなり扉を壊して土足で踏み込むなんて、生徒会として見過ごせない!」
鷲宮戦で磨き上げた二重偏向障壁を素早く展開し、男の進路を遮断する。
しかし、男は歩みを止めることすらしない。
ただ軽く視線を向け、魔力を指先でわずかに弾いただけで、パリンッ!と硬質な音を立ててタクトの障壁が飴細工のように砕け散る。
「なっ……!? 防御角度すら見切られて、触れもせずに……!?」
余波の魔力圧だけでタクトの足元が吹き飛ばされそうになる。
隙を突いてリサが詠唱を完了させ、超高密度の鋭利な氷柱を複数展開して男の四肢を狙って射出。
同時にセナが死角から影のように間合いを詰め、魔導短剣で男の足元を狙う。
「……鬱陶しい羽虫が」
兄が身にまとう魔力外套が一瞬だけ膨張。
放たれた氷柱は男の身体に届く前に空中で蒸発・粉砕され、肉薄したセナは強烈な魔力の反発を受けて壁際まで弾き飛ばされる。
ノアが観測ドローンを起動しようとするが、男の周囲の魔力濃度が高すぎて機器の回路が一瞬でショートする。
先日あれほどの激闘を制した5人の連携が、全く相手にすらされていないという絶望的な事実。
男がなおも冷たい視線を私へと向け直す。
「やめなさい、全員下がって! ……この男には、今のあんたたちじゃ手も足も出ないわ!」
仲間を守るため、私は悲痛な叫び声を上げて前に出る。
仲間を庇って前に出た私を見下ろし、男は侮蔑を含んだ冷笑を浮かべる。
「身の程知らずの庇い立てか。……笑わせるな、アイラ・フォン・ヴァルハイト」
帝国中枢に君臨し、軍部と魔導院の頂点に座す最高位貴族「ヴァルハイト公爵家」の名が室内に響く。
「フォン・ヴァルハイト……!? まさか、帝国筆頭公爵家の……?」
会長がただの平民・一般家庭出身ではないという事実に、タクトたちが息を呑む。
兄________ギルバートは埃を払うように手袋を直し、生徒会室の机やトロフィーを一瞥する。
「家を抜け出し、こんな吹き溜まりの学園で何をしているかと思えば……くだらない生徒会ごっこか」
「雑魚どもと傷を舐め合い、手に入れた端金のような勝利に満足しているとは、我が血族の面汚しも甚だしい」
と、私たちが命がけで勝ち取った絆と実績を完膚なきまでに踏みにじってくる。
アイラは拳を血が滲むほど強く握りしめ、兄を睨みつける。
「勝手なこと言わないで! 私は私の意志でここに来たのよ! あんたたちの敷いたレールなんて真っ平ごめんよ!」
「反抗期のおままごとは終わりだ。当主たる父上からの命である。貴様の学籍は本日付で抹消し、帝都の本家へ連れ戻す」
はぁ!?
問答無用で私の自由と居場所を奪い去る、絶対の決定事項として宣告される。
私の瞳に、悔しさと過去のトラウマからくる絶望の色がわずかに差す。
逃れられない血の呪縛を前に、私が言葉を詰まらせる。
兄の威圧と血族の重圧に押し潰されそうになり、俯いて唇を噛む。
その前へ、傷つきながらもタクトが再び足を踏み出す。
続いてリサが、セナが、セリアが、ノアが――誰一人として目を逸らすことなく、アイラを背に庇うように横一列に並び立つ。
「……まだ理解できないか。虫ケラどもが群れたところで、私の前では等しく塵芥だ」
「あんたが公爵だろうと、会長の兄だろうと関係ない! ここは俺たちの生徒会室で、アイラは俺たちの会長だ!」
「おままごとなどと侮辱される筋合いはありません。私たちはこの場所で、血よりも強い誇りと絆を結んだのです」
みんな…………
生徒会の仲間全員が、圧倒的な格上の存在を前にしても絶対に私を渡さない意志を明確に示す。
兄は不快そうに目を細め、腰に佩いた白銀と黄金の魔導剣の柄に手をかける。
「身の程を知らぬ羽虫ほど見苦しいものはない。……よかろう。貴様らのその薄っぺらい『絆』ごと、二度と立ち上がれぬよう叩き折ってやる」
鞘から引き抜かれた刀身から、生徒会室全体を丸ごと両断しかねない超高密度の魔導光が奔流となって溢れ出す。
「みんな……っ!」
「全員、構えろ! 会長は絶対に渡さない!!」
圧倒的強者である実兄を前に、仲間たちが再び武器と魔力を構え、真正面から激突する。
新章突入です!!!!
初っ端から扉を破壊する兄!!!!!妹が妹なら兄も兄なのか!!!!!!!!!(?)
アイラは実はお嬢様でした……そうは見えないけどね!
さてさて、この兄様にどう対抗する生徒会……!




