第拾弐話 弐
私は僚君とともに、嫌がる響希君を連れて、須崎さんの家へと向かった。
インターホンを押すと、須崎さんのお姉さんだろうか。大学生だと思われる、若い女性が出迎えてくれた。
しかも、かなりの美人さん。
「えっと、舜の友達?」
「はい。舜君は、ご在宅ですか?」
「今、裏庭にいるみたいなの。そっちから行けるから、行ってみて」
「ありがとうございます」
須崎さんのお姉さんが指さした方に向かうと、須崎さんとシキ、私たちの式神が、地面を見ているところ。
「こんにちは。須崎さん」
私が声をかけると、それまで私たちに気づかなかったようで、ビクッとさせてしまった。
「雪村さん。何故、俺がここにいることを、知っているんですか?」
「玄関で、お姉さんから聞きました。呪いは、大丈夫ですか?」
「そうでしたか。姉がいることを話していなかったので、驚かせてしまいましたよね。すみません。俺は、大丈夫です」
呪いのせいなのか、元気がない様子。
それでも明るく振る舞おうと、無理をしているように見てえしまう。
『須崎氏。そろそろ、よろしいですか?』
「はい。お願いします。シキさん」
須崎さんは、妖を見ることが出来ない、妖気質の能力者。
なのに、シキと会話をしている……?
「須崎さん。ここにいる、妖狐が見えるんですか?」
「見えますよ。他にも妖犬が三匹」
「まさかシキ。前に桃麻に使った、あの禁術を?」
『華鈴。これから行う呪詛祓いは、妖気質の能力者には効かないんですよ。一時的に完全合致させなければ、呪いは解けません』
***
呪詛祓いを執り行う前に、須崎家の枯れた池を掘ること一時間。
「何で俺たちも、地面を掘っているんだ?」
「文句言わない。響希。そこ、もっと掘って。盃が出てこないよ」
「へいへい」
シキが言うには、呪いを解くには月之盃が必要なのだそう。
そしてその盃は、枯れた池の中に眠っているから、掘り出さなきゃいけない。
『ボクたちだけで掘ることになると思いましたが、君たちが来てくれて助かりました』
「気になっていたからね。手伝いくらいなら、僕たちも出来るし」
「妖気は感じるのに、まだ出てこないのか? かなり深く掘ったぞ」
「これ、完全に須崎さんが怒られるやつじゃん」
「自己責任なので、大丈夫です。皆、俺の為にありがとうございます」
更に掘り続けていると、急に須崎さんに異変が。
頭痛でもするのか、頭を抱えて、しゃがんでしまった。
「須崎さん!? 大丈夫ですか!? シキ、どうしよう……」
『おそらく、呪いをかけた妖でしょう。須崎氏。いえ、サギノマタ。何故、この人間に呪詛をかけたのです?』
須崎さんに向かって、シキが口にした妖の名。
シキの知り合いなのか、その名を聞いた須崎さんが顔を上げ、シキを睨み付けている。
『ふん。この家に月之盃が眠っているんだ。永世の池から妖気が失くなり、辿ってみたら、なんだ。現世の人間の家だ』
『永世と現世の往来は、盂蘭盆会の期間のみのはずですよ。これから永世に帰れば、サギノマタ。君は流刑だ』
『知っているさ。流刑になるなら、月之盃を永世から奪い去る。それの何が悪い?』
『君の妖力は、上級妖並みでしょう。何故、そんなに力を欲しがる?』
『昔のお前なら、わかってくれただろうよ。俺は、支配したいんだよ。永世を』




