第拾弐話 参
『それにしても、そいつらもこいつも、人間だろ。現世で永く暮らし、人間ごときに情を移したか。シキ』
『肯定も否定もしませんよ。ボクはボクの意志で、ここにいるんです。好きなように暮らします』
『妖と人間は、共存出来ないのだ。わかっているだろ』
『わかっていますよ。その事を、ボクが知らないとでも?』
シキはサギノマタと呼ばれる妖と、なにやら会話をしている。
私たちはとにかく、月之盃の発見を優先するしかない。
「何を話しているのか、知りたいような、知りたくないような……。そんな気、しない?」
「まったく。シキは、何を考えているんだ?」
『君に月之盃は不要です。今すぐ、その人間にかけた呪いを、自ら解きなさい』
『お前に指図されたきゃねぇ。何も知らないくせに、偉そうにするな。自ら解いて、罪を軽くしてもらおうってか?』
『君ならば、木陰様の側近になれただろうに……』
『うるせぇぞ。シキ。お前は本当に何もわかっていない。木陰様など、もう過去のお方だ。神格の妖になれず、自ら黄泉の国へ赴き、輪廻転生なされた』
『木陰様が、神格になれなかったのですか?! まさか、そんなことあるわけがない!』
言い合うシキとサギノマタを横目に、更に掘っていく。
それにしても、月之盃が出てこない。
「どうしたんだ? シキ」
「さぁ? 知り合いの妖に、何かあったんでしょ。てか、響希。手ぇ止まってる」
「本当に、ここにあるのかな。全然出てこないよ」
突然。頭痛が私を襲った。
目の前が真っ暗になり、身体中から力が抜けていく。
「りんちゃん!!」
「華鈴、大丈夫か!?」
そんな声が聞こえたけれど、遥か遠くの、意識の中に消えていった。
***
――月之盃は、既に戻ったぞ。掘り続けたところで、見つかりはしない。聞いておるか? 人間の娘よ――
誰だろう。聞いたことのない声が、私に話しかけているようだけれど、どこから聞こえるのか、わからない。
貴方は誰?
――我が名は、木陰。すまない。サギノマタが、迷惑をかけてしまったようだ――
神格の妖になれず、輪廻転生してしまったと、サギノマタが言っていました。貴方は、転生されているんですよね?
――神格の妖になるには、まだまだ修行が必要なのだろう。輪廻転生するには、黄泉の国へ赴く必要があるが、我は黄泉の国へ赴いてなどいない。サギノマタの勘違いだ。永世のとある洞窟にて、修行をしておる――
サギノマタは何故、月之盃を探しているのでしょうか。
――サギノマタは、妖力を失いつつある。かつては上級妖並みの妖力を持っていたのだがな。サギノマタに言伝てを頼みたい。良いか? 人間の娘――
私で良ければ、お伝えしますよ。
そして、木陰様から告げられた言葉に、ただただ、衝撃を受けるしかないのだった。




