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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第拾弐話 陰り空
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89/130

第拾弐話 参

『それにしても、そいつらもこいつも、人間だろ。現世(うつしよ)で永く暮らし、人間ごときに情を移したか。シキ』

『肯定も否定もしませんよ。ボクはボクの意志で、ここにいるんです。好きなように暮らします』

『妖と人間は、共存出来ないのだ。わかっているだろ』

『わかっていますよ。その事を、ボクが知らないとでも?』


 シキはサギノマタと呼ばれる妖と、なにやら会話をしている。

 私たちはとにかく、月之盃の発見を優先するしかない。


「何を話しているのか、知りたいような、知りたくないような……。そんな気、しない?」

「まったく。シキは、何を考えているんだ?」


『君に月之盃は不要です。今すぐ、その人間にかけた呪いを、自ら解きなさい』

『お前に指図されたきゃねぇ。何も知らないくせに、偉そうにするな。自ら解いて、罪を軽くしてもらおうってか?』

『君ならば、木陰(このかげ)様の側近になれただろうに……』

『うるせぇぞ。シキ。お前は本当に何もわかっていない。木陰(このかげ)様など、もう過去のお方だ。神格(しんかく)の妖になれず、自ら黄泉(よみ)の国へ赴き、輪廻転生なされた』

『木陰(このかげ)様が、神格になれなかったのですか?! まさか、そんなことあるわけがない!』


 言い合うシキとサギノマタを横目に、更に掘っていく。

 それにしても、月之盃が出てこない。


「どうしたんだ? シキ」

「さぁ? 知り合いの妖に、何かあったんでしょ。てか、響希。手ぇ止まってる」

「本当に、ここにあるのかな。全然出てこないよ」


 突然。頭痛が私を襲った。

 目の前が真っ暗になり、身体中から力が抜けていく。


「りんちゃん!!」

「華鈴、大丈夫か!?」


 そんな声が聞こえたけれど、遥か遠くの、意識の中に消えていった。


 ***


 ――月之盃は、既に戻ったぞ。掘り続けたところで、見つかりはしない。聞いておるか? 人間の娘よ――



 誰だろう。聞いたことのない声が、私に話しかけているようだけれど、どこから聞こえるのか、わからない。



 貴方は誰?


 ――我が名は、木陰(このかげ)。すまない。サギノマタが、迷惑をかけてしまったようだ――


 神格の妖になれず、輪廻転生してしまったと、サギノマタが言っていました。貴方は、転生されているんですよね?


 ――神格の妖になるには、まだまだ修行が必要なのだろう。輪廻転生するには、黄泉の国へ赴く必要があるが、我は黄泉の国へ赴いてなどいない。サギノマタの勘違いだ。永世(かくりよ)のとある洞窟にて、修行をしておる――


 サギノマタは何故、月之盃を探しているのでしょうか。


 ――サギノマタは、妖力を失いつつある。かつては上級妖並みの妖力を持っていたのだがな。サギノマタに言伝てを頼みたい。良いか? 人間の娘――


 私で良ければ、お伝えしますよ。



 そして、木陰(このかげ)様から告げられた言葉に、ただただ、衝撃を受けるしかないのだった。

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