第壱話 壱
シキが言っていた事に、私は簡単にOKした。
私の場合、見えているだけで、月島君や花里君のような過去はない。
妖が見えるからこそ、妖が見ている世界が知りたいと思った。
霞ヶ森からの帰り道、月島君と花里君と一緒に、家路に着く。
「まさか、雪村がOKしてくれるとは……」
「まぁ、何も説明せずに、連れていった僕たちが言えたことじゃないけど」
「二人には、お世話になります!」
「こちらこそ」
「こちらこそ、お世話になります!」
夕日が山向こうに沈み、薄暗い。
「だいぶ暗くなってきたけど、雪村さん大丈夫? 家どこ? 近くまで送るよ」
「大丈夫。すぐそこなの。ありがとう、花里君」
『紅蓮の匂いがする。貴殿方が、妖の望みを聞いてくれる者たちか?』
私たちの前に、人間と同じ大きさの、翁面の妖が。
「そうだが、何か用か」
月島君が、受け答える。
『探して欲しい物がある。桜色の、兎の根付けなのだ』
「根付け?場所を変えて、詳しく聞いてもいいか」
私たちは紅蓮荘に戻り、翁面の妖の話を聞くことにした。
『ここが、噂に聞く紅蓮荘か』
「そんなに有名? 僕たちのことも知ってたみたいだし」
『貴殿方のことは、妖の世界では有名だ。しかし、この娘は知らんな』
翁面の妖は、私の方を向き、不思議そうに首をかしげた。
「私は、今日からこの二人と一緒に、活動する事にしたの。よろしく」
翁面の妖とともに、木の間と呼ばれる部屋に入る。
ろうそくの明かりが灯る、壁一面に森の木々が描かれた部屋。
「まず、名前をお聞きしたい」
『わたしの名は、篠霧。岡ノ原の地より、参った』
「篠霧。兎の根付けとは、お前の持ち物なのか?」
『わたしの物ではない。わたしの友人の物と言うべき物だ』
友人の物?
なら、篠霧の友人が探せばいいのに。
「友人の物なら、篠霧の友人が探せばいいでしょ? なのに、篠霧が探しているのは、変って言うか……」
『確かにな。だが、友人は探せない。わたしが代わりに探している』
「そうなんだ……」
「話は引き受けた。根付けの特徴を、教えてもらえないか」
『根付けには珍しい桜色。兎が寝転んでいるような姿だ。友人は、落としたとも、なくしたとも言っていた』
こうして、私にとって最初の依頼が始まった。




