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全てを奪われたヒロインは転生悪女に復讐する  作者: 鈴木べにこ


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1.只今、地獄より〜現在1〜

 そこは薄暗くてでカビ臭い天井裏の物置部屋。


 部屋の隅にある小さくて古いテーブルがあり、テーブルに向かって座っているのはボロボロの服を着て髪も埃だらけの薄汚れたピンクの髪と瞳の少女だ。


 淀んだピンクの瞳をボロボロのノートに向け、少女は鉛筆でガリガリと文字を大量に書いていた。



「乙女ゲーム・ヒロイン・攻略・悪役令嬢・婚約破棄・没落・真実の愛・乙女ゲーム・ヒロイン・攻略・悪役令嬢・婚約破棄・没落・真実の愛・乙女ゲーム・ヒロイン・攻略・悪役令嬢・婚約破棄・没落・真実の愛…」



 ぶつぶつと同じ単語を繰り返し呟く少女。



「乙女ゲームって何?・・・乙女のゲーム?乙女とゲームに何の関係が?私と何の関係が?私と奴等に何の関係が?」



 鉛筆を持ってない方の手で頭をガリガリと掻く少女。



「まずは乙女とゲームは切り離して考えよう。基本に戻るの。ゲームはチェスやポーカーなどの遊ぶ事を言うからゲームって事は遊ぶ物を指すでしょ。じゃあ乙女は未成年の少女や心が清らかな女性の意味だとして、そのような少女や女性が楽しむ為の遊びでしょ?」



 ぶつぶつと独り言は加速していく。



「攻略って事は何かしらのルールに従ってクリアして勝ちを得たって意味よね?少女や女性の遊びで攻略?・・・どんなルールで何の勝ちを得るの?」


 

 鉛筆をテーブル同じ場所にコンコンと何度も刺す。



「あいつは自分を悪役令嬢と言った。私をヒロインと言った。『ヒロインの貴女がいたら殿下から婚約破棄されて没落するの。』と度々言った。私にそんな力は無いのになんで?まるで私が公爵を令嬢を没落させる権力を手に入れるみたいに・・・。」



 コンコンコンコンコンコンコンコン。

 ガリガリガリガリガリガリガリガリ。



「私はヒロインで、あいつは自分を悪役令嬢と言ってた。じゃあヒロインがいるなら主人公は?いや、あいつの口ぶりだとヒロイン=主人公って意味っぽいわね・・・じゃああいつは《《少女や女性が楽しむ為の遊びの主人公が私でその敵が自分》》だって言ったの?なんで?」



 少女は確信に近付いていたが後一歩の所で行き詰まっていた。



「攻略、攻略、ゲームの勝ちの条件。」



 コン、コン、コン、コン、コン。



「ううーん。わからない!あいつが何を恐れていたのかを考えよう!殿下から婚約破棄をされて没落?王子もその側近も権力の無い私を恐れて虐げていた・・・。奴等は私が自分達より権力を持つと思っていた?・・・つぅ、頭が痛いッ。」



 少女の常識では考えられない内容に激しい頭痛が襲う。だが少女は唇を噛み締めて考えを続けた。



「もし私が権力を持てるとしたら?権力者と結婚・・・だけど、私に権力者と結婚どころかそんな縁だって・・・もしかして奴等の中の誰かと結婚?私と殿下が結婚して私が権力を得て敵のあいつを没落させるって事?」



 真実は目の前。



「でも初めて奴等にあった時突然『僕達は決してお前を愛さない!消え失せろ!』なんて言葉を初対面から言ってきて理由も分からず嫌われてたから奴等の中の誰かと仲を深めるなんて・・・違う違う、あの言い方は仲が深まる前に関係を潰そうとした?」



 後一歩の所で常識が思考の邪魔をする。



「あいつは未来が見えていた?妄想?・・・でも私が過去に、子どもの頃に考えたアイデアと同じ物を既に知っていた。それどころかあいつが生み出したとされる 10個アイデアは全て私が考えた物だった・・・《《私が知らない物は何一つ無かった》》。たまたま被ってしまったと考えてた・・・だって都会生まれの生粋の貴族のアイツの方が流行や世間の流れに敏感で、世間知らずで田舎者の私の考えが遅れていも仕方ないと思っていた。だけどその考えが違っていたら?」



 バキンッ。


 鉛筆がへし折れた。



「アイツは私の全てを知っていた?」



 点と点が繋がった。


 少女の顔の元から不健康そうな顔はさらに青ざめ身体はガタガタと震えた。



「気持ち悪いっ・・・。そんな、気持ち悪い事がある?アイツのイかれた妄想で私を皆んなで虐げていたと思ったけど、そうじゃなかった。」



 少女は目をカッと見開いた。



「アイツは私の人生を知っていたんだ!まるでボードゲームの駒がどう動くかが予想できたように!それで自分の運命を知って私を消そうとしたんだ!」



 様々な負の感情を少女を襲う。




「・・・それで消されたんだ。消されてこんな場所にいる訳だし・・・アハハ、ねぇお母さん、私って王子様のお嫁さんになる未来があったみたよ?信じられないけど本当らしいよ?嘘みたいで笑っちゃうわ!だって私は今娼館にいるのにね!」



 少女は首だけ後ろに向いてベッドで寝ている母親に話しかけた。


 その母親は腐敗し白骨化が進んでいた。



「アハハハハ・・・バッカみたい!」



 一筋の涙が少女の頬を伝う。




「私のありえない考えが合っていたとしたら、ヒロイン兼主人公の私の人生を駒として俯瞰で動かせるゲームが存在する。私を動かすプレイヤーの対象は主に少女や成人した女性。」



 常識では考えられない言葉が少女からスラスラ出てくる。

 まるで見えない何かに言わされているかのように…。



「ゲームの勝ちの条件は、王都の学園に通う権力と容姿を叶え備えた王太子とその側近を、誘惑又は惚れさせて結婚や婚約まで持ち込む事・・・それを攻略すると言う事。」



 少女なギリリと唇を噛んだ。噛んだ唇から血が伝い机に落ちた。



「何が盗作よ・・・あいつの方が盗作じゃないッ!」



 理不尽な過去の出来事を思い出しその顔は悪魔のように怒りに歪む。




「あいつ等全員地獄に落としてやる!生まれてきた事を後悔させるようなそんな地獄にッ!いや、私と・・・お母さんが味わったより酷い地獄に合わせてやるんだから!!アハッ!アハハハハハハ!!」



 そして少女は地獄だった住処・・・。


 娼館に火を放った。


 愛する母の亡骸と共に。



「お母さん天国で見ててね。この復讐は必ず成功させるから。」



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