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異世界無双禁止規定(ステージ オブ グラウンド)『緩』  作者: 浅葱
第1章 次元迷子の少年
11/30

第10話 ~選抜戦・その2~

この回は無駄に長いんだよね……。


「試合────開始!!!」


 審判の合図で始まった準々決勝・第一試合【ビース】VS【アルケシス】


 厄介な相手であるガルはニケが請負い、更に倒すのが困難な相手のサラは残りの6人で何とかしなくてはならない。勿論ガルとニケの戦いを邪魔しないようにだ。 


「うぉおおおおおおおおお!!!」

「ニ゛ャアアアアアアアア!!!」

 試合直後、ガルが吠える。どうやら例の【獣化ビースト】らしい。これを使うと獣の本能で戦う事になるので、倒すのは容易ではない。言うならば、家猫が突然虎に変化したようになる。とても普通の人には手が負える相手ではない。

 しかし、イング達【アルケシス】のニケにもそれは使える(佐夜は後から知った)のでガルはニケに任せる事で獣人ガルVS亜人ニケの【獣化ビースト】頂上対決が実現した。



 観客席からは大きな歓声が沸き、現に戦闘中であるイング達6人は獣達2人の喧しい砲口(鳴き声)に耳を押さえていた。


「「「ワンワン、ニャアニャアうるっせー!!」」」

「「「耳…痛い………」」」

 ちなみにガルはワンワンは言ってない。


「……で、どうやってサラを攻略しようか?」

 佐夜が即席で作った耳栓で防音対策(笑)したイングが腕を組んでみんなに聞く。


「昼食の時にアイスナーに聞いた情報だと、あの球体に普通に近付くと錬成術で針やら土の隆起やらその他色々飛んでくるらしいぞ」

 あまり役に立たない情報を言ってくるタック。現在ガルとは対照的にサラは闘技場の結界ギリギリで鉄の球体で身体を被っている。何故闘技場の端に居るのかはおそらく、360度敵に狙われない様にするためだろう。端に居れば少なくとも180度はカバーできる為、前方にのみ集中すれば不意打ちは避けられる。


「あまり時間も掛けられない……」

「……そうだな。ニケが簡単に負けるとは思わないけど、万一負けるのも想定して動かないとな」

「……となると、だ」

「「あれしかないね」」

「? あれって?」

 あれと言われて首を捻る佐夜。その状況でもその仕草は可愛い。


 ・・・・・・・・・・・・・・・。


「「「「「特攻!!」」」」」

「まさかの無策!?」

「ああ、とりあえずマナ以外は皆、特攻な。マナは例のストック魔法(炎)の準備をしてくれ」

「……わかった」

「っておいみんな。本当に突っ込むつもりなのか?」

「まあな。サヤ、諦めろ。じゃあイング……」

「ああ。んじゃ……行くぞ!!」

「「「おう!(うん!)」」」

「って、ああもう、どうにでもなれ!!」

 げんなりする佐夜にタックが諫め、イングの合図とともにマナを除く5人が闘技場の端に居るサラ(が居る鉄球)の元に突っ込んで行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


─────わああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


「うぉおおおおおおおおおおお!!!」


「ニ゛ャアアアアアアアアアア!!!」

 相変わらず雄叫びを上げながら戦う二人は観客達を楽しませながら、激しく闘技場を縦横無尽に動きまくっている。


 そしてそれはサラを倒さんとするニケ以外の6人の進撃をも邪魔をしていた。


 タックはガルに轢かれた衝撃で一撃でジュエル破壊(戦闘不能)。


 双子ノンとロロはサラに最も接近していたが、ガルとニケが戦闘の際に開けた穴に躓いて鉄球に激突。そしてサラの鉄球から針が飛び出てダメージオーバーでジュエルが破壊し戦闘不能。


 そしてマナの場合、ノンとロロが戦闘不能になる直前にマナがストック魔法を解除してエクスプロージョンを発動しようとしたが、一瞬で3人が戦闘不能を見て焦ってしまい、暴発して自爆(戦闘不能)。


 最後にイングだが、サラにあと5mくらいまで接近まではしたが急激にジュエルの色が変化している事に気付かず、そのまま攻撃する距離まで近付いていたらそのままジュエル破壊で脱落していたが最後尾を走っていた佐夜がそれに気付き、慌ててイングを引っ張って脱落を逃れた。


 ちなみに何故近付いただけでジュエルダメージが入っていたのかというと、サラの周りだけには酸素量が急激に低下していて、通常なら近付いた時に息苦しさ(・・・・)を感じて引く筈なのだが、ジュエルの所為でその内部ダメージをジュエルが引き受けていた為、佐夜が引っ張ってくれるまで全く気付かなかったのだ。


「……で、これからどうするイング?後は俺達二人だけだぞ」

「そうだな…………」

 さすがのイングもこれではサラに近付く事すら容易ではなく、そのジュエルの色も青から赤になっている。ちょっと無理したら即アウトな位窮地な状態で、佐夜が作った簡易防空壕(笑)に二人で身を潜めているがイングの表情は極めて厳しい。


「……ここはやっぱり俺が行くしか手は無いよイング。剣じゃ鉄球は切れないし近付くだけで内部ダメージでOUT。俺なら同じ錬成術で内部ダメージも無いし鉄球も融解して中のサラを引っ張り出せる。中から引き出せたらイングも攻め入るチャンスがあるだろ?」

「そりゃあ出来ればそうしてもらいたいが……でもよサヤ。お前、あの戦場を突っ切れるのか?」

「うっ…………」

 そういうイングの視線の先には暴れる二匹の獣が闘技場を支配していた。迂闊に出たら轢かれたタックの二の舞になる。


「でもま、このままじゃ埒も明かないしな。サヤ」

「んを?」

「俺が援護するからお前はサラの元へ突っ切って行って倒してきてくれ。俺達が勝つには最早それしかない」

「イングは?」

「援護っつったろ? 多分俺は途中でジュエルが割れるさ。なのでまだジュエルが無傷のサヤに託す」

「………分かった。けど無理はするなよ」

「……それは相手に言ってくれ。じゃあ行くぞ!」

「っ!!」

 サラとイング達との距離はおよそ200mあり、イングの合図で再びサラの元に走る。イングがサヤの前に就き、突進しながら獣達の激闘の衝撃とサラの攻撃を凌ぐ(ちなみに闘技場のバトルフィールド内の直径が300m)。


「っ!? くそっ!! 後は頼んだサヤ!」

 しかし、後120mの所でイングの限界が来た。


 イング・アルフェスト。ジュエルのダメージがオーバーした為、脱落。


「分かった。後は任せろ!」

 佐夜が楯に接していたイングの後ろから前に出て、サラの元へ走る。しかし焦っては駄目。

 今も尚、暴れている二匹の獣達の攻撃の流れ弾が当たらない様にしなくてはならない上に、サラからもちょくちょく針や岩やらで攻撃されるので、それも避けながら進まなくてはならない。


「うっ……くわっ……痛つっ! ……くぅ~~」

 避けながら進んではいるものの、それでも砕けた石や、衝撃波などで着実にジュエルにダメージが入る。色も黄色にまで変化している。距離は後60m。かなりヤバイ状況になってゆく。すかさず獣二匹が掘った穴に身を顰める。


「はぁ、はぁ。……やばい。全然先に進めねぇー」

 佐夜の入った穴のすぐ上では獣達が暴れ、サラの半径50m付近からは近付くと色んな物が飛んで来たり、地面が隆起(動いたり)するため、佐夜はここから動けずにいるし、錬成術でどうにかしようとも相手の方が技術が何倍も上。何か練成しようものなら逆に介入されて反撃を食らう(一度それでダメージを受けた)。

 とはいえここにずっといても敗北は必至。何とか打開しなくてはならない。


「……あれ? ちょっと待てよ………。もしかしてこれならイケるかもしれない」

 あれこれ策を考えていた佐夜に、ある考えが閃いた。そして穴から飛び出て再びサラの元へ突っ込んで行く。と、同時に不安定な足場(凸凹)を右足で練成し、平らにする。


(あら、またですの? 介入されると分かってて錬成するとは愚かですわね……)

 鉄球の中に居るサラが溜息交じりに呟く。まあそれも致し方ない。なんせ対戦相手に手応えが無さすぎるからだ。

 この試合だけではない。模擬戦での5試合もずっと鉄球を用いて戦っているが、いずれも自分の元に辿り着く前にガルに倒されるか、鉄球に近付こうにも錬成術でちまちま内部ダメージを与え、遠距離炎魔法で球体を溶かそうとするならば、錬成術で『酸素&水素濃度』を上げてしまえば自爆させられるので、結局サラを倒すには相当な実力が無いと無理だろう。


 ちなみにこの世界では化学自体そんなに発展していなく、元素の原理や倫理などは解明されてない。サラの『酸素&水素濃度を上昇』する発想はおそらく本人の天才的な感覚でやっているだろう。

 誰にも出来ない絶対防御として知られていたサラ&鉄球だが、それは同時に手応えが無さすぎるのでサラは毎回まともに戦っていないので不燃焼である。


(とりあえずこの娘で最後。はぁ…本当に退屈ですわね………)

 突っ込んで来る佐夜が錬成した応急な足場に、サラは更なる錬成術で介入し、突っ込んで来る佐夜の足元から岩を隆起させて攻撃しようとした。


 しかし─────────────────


(え……えええ!?)

 サラの介入練成からの攻撃は空を切り、サラは予想外の出来事に驚いた。

 それもその筈。佐夜が突っ込んで来る為に作ったとされる足場を佐夜はスルーして、わざわざ足場の悪い凸凹の道を進んでいたからだ。


「やっぱり………」

 サラへの距離は残り50m。佐夜は先ほど作った足場から岩が突き出ているのを確認し、確信した様子で次の手を打った。


「ふんっ!」

 今度は両手を地面に着き、錬成術で佐夜の10m手前に大きめの壁を作った。これは障害物的な奴ではなく、相手の視界に入らない様にした目隠しの様な物だ。そして再び佐夜はサラの元へ走る。


(先ほどのは囮? そしてこの壁……この娘、なかなかしぶといですわね……ならこれはどうかしら?)

 自分サラも佐夜の姿を確認できないが相手もまた同じ。なら今度は真っ直ぐ向かって来ていると思い、今度は巨大な土の塊(硬め)を生成し、佐夜が錬成した壁ごと撃破しようとした。


「あ~らよっと」

(んなっ!?)

 しかしまたもや佐夜は躱す。今度は視界に入らないギリギリを走行し、壁が壊される直前に佐夜が横に逸れた為、土球は佐夜のすぐ横を通過した。これでサラとの距離は残り35m。


「そして今度、はっ!」

 横に逸れた佐夜のすぐ横には先ほどサラが地面から突き出させた(隆起させた)岩があり、佐夜はそれを大きめの岩を何個かを錬成で切り取り、サラの方へ投げた。(岩の重さはスルー)


(本当にしつこいですわね……何故最初からこれをやらなかったのかしら?)

 飛んで来る岩を余所にサラは何故佐夜が今になって、これだけ自分に接近できているのかを疑問視していた。佐夜が最初から錬成術を囮に使っていれば仲間も犠牲にならずにすんだというのにだ。


(……ってあら? あの娘はどこに………?)

 色々考えている最中に佐夜を見失ったサラ。


(っ! なるほど、岩の裏側ですわね。どうやらそのまま隠れて岩ごと接近しようという魂胆だとは思いますが、浅知恵ですわ)


 サラは佐夜が投げた岩の裏に居ると仮定し、

(そちらがその気で来るならばこちらも………!!)

 サラもすかさず錬成し、飛来してくる岩を全て破壊する為、地面を再び広範囲に隆起させ、飛来してくる岩を全て挟み込んで止める。その際、戦闘不能扱いになっていたイングも巻き込まれたが誰も気にしなかった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・


(……あら?何故審判はリタイア報告しませんの?)

 通常、戦闘不能リタイアした場合、審判による『○○戦闘不能!』と闘技場内の全員に分かる様に報告されるものなのだが、30秒経っても佐夜の戦闘不能の報告が無い。


 ───と、いう事は?

 

 ボコッ!


「んりゃあ!!」

 闘技場の端────丁度サラの鉄球があるすぐ横に佐夜が地面から飛び出て来た。どうやら飛ばした岩に隠れて接近する───と見せかけて、二匹の獣達が開けた穴から真っ直ぐ横穴を錬成術で掘り進めてサラに接近していたのだ。


「さあ、ようやくここまで来た…………あれ?」

 身体を土塗れになってまで地面を掘り進み、サラに接近した筈の佐夜が左右を見るとそこには何も無かった。いや、よく見ると闘技場の端の地面に何かが『転がった』跡があった。


「ま、まさか………」

 嫌な予感がした佐夜が後ろを見た。

 

 そこには再び、佐夜が居る闘技場の端の反対側まで転がって行った球体の姿。


 錬成術で作った足場を囮にし、即席で作った目隠しの壁を伝いにギリギリでサラの攻撃を避け、投げた岩に身を隠すと見せかけたフェイントに、穴を掘ってサラに接近した筈の佐夜の策は─────


 審判のリタイア報告が無い事で佐夜の策に気付いたサラにあっさり見破られた。


「くそっ!もう時間が無いってのに………!!」

 まだ諦めていない佐夜は再びサラの元に走り出す。しかし、体力も気力も限界が近く、おまけに闘技場内はまだ二人の獣が暴れている状況で巻き込まれる危険性。そして手加減をしなくなったサラによる容赦ない遠距離攻撃に、観客達及び戦闘不能になって結界の外に出た他の4人(イングは闘技場内で気絶中)が佐夜の敗北を確信した。最早打つ手はないと。


「くっ……せめてあの鉄球だけでも溶かせれば………」

 佐夜自身も最早敗北を認めつつも、せめて一矢報いたいと防御も無理な回避も全部捨てて、サラの元に全力疾走する。


(ふっ。形振り構わずまた突っ込んで来ますのね。そのパターンは良い加減もう飽きましたわ。なら、これで終わりですわ!)

 全力で突進してくる佐夜に、これまた全力で応えるサラは一瞬だけ鉄球を光らせ(錬成術の光)、土系上位魔法・土石津波アースウェーブを発動させた。


 運動神経抜群&獣化ビーストモード発動している獣二匹ニケとガル土石津波アースウェーブに気付いたのち、余裕で飛び越えた。


「はああああ………っ!」

 佐夜も残り少ない魔力を振り絞って脚力を強化(錬成術の派生)し、ギリギリで飛び越えた。………しかし、


「っ!?」

 飛び越え時の空中で佐夜が見たのは、サラが錬成術を発動して発生させていた大量の【大土針レグスニードル】。空中に居る上に、魔力のほとんど尽きた佐夜には防御も回避も出来ない。


「俺もこれまでか。……だったらせめて、これでもくらえっ!!」

 サラに接近するのを諦めた佐夜は『隠し持っていた物』を振りかぶって投げようとし、


「届け─────」

 佐夜が『隠し持っていた物』を投げた。


 その直後、


 シュ───────────ッパ!


「っ!?」

 佐夜の右手に付けていた『腕時計(?)』が緑色に輝き、その輝きが佐夜を一瞬で包んで、気が付いた時には何故かサラの手前の上空に居た。その背後には佐夜に当たるはずだった大土針が空を切っていたが、何が起こったのか分かっていない佐夜には背後を気にする余裕は無い。

 無いが、佐夜にとってこれはこれで、最後のチャンス!


(っ!? この娘、いつの間に!?)

 咄嗟に佐夜の存在に気付いたサラだが、まだ大土針レグスニードルを発生させたばかりで防御に回る事が出来ない。


「今だ!」


 バンッ!

 無防備な鉄球(㏌サラ)に落下の勢いそのままで佐夜は両手で鉄球を叩きつける。その際、勿論錬成術を使用する。すると、


 シュオオオオ──────────────


「はわっ!?」

「ようやくのご対面だなサラ……って何か凄い恰好だな!?」

 あれだけの存在感があった鉄球が半分溶け、サラが変な声を上げながら転がりながら外に出て来た。何故か戦闘には不向きなゴスロリ服を着ていたが(試合開始前からサラは鉄球の中に居た為、佐夜達はサラがどんな服を着てたのかは知らなかった)。


「べ、別に良いじゃありませんの! これは普段の私服なのですから!」

「そ、そうか………」

 まあ、基本鉄球の中に居るのなら恰好は関係ないのかもしれない。


「ま、状況が状況なんで、これで終わりだ!」

「っ!?」

 話を切り上げ、サラに殴りかかる佐夜。何の脈略も無く、いきなり殴りかるのは如何なものかとは思うが、佐夜はもう体力も魔力も限界が近いので早く終わらせたかったのだ。

 

「ふんっ! あまり私を舐めないでくださいまし!!」

 しかし、佐夜とは打って変わってまだまだ余裕があるサラは半分残った鉄球を使い、その鉄球の持つ質量をそのまま佐夜に叩き込んだ。


「がふっ!!?」

 まともに鉄球の質量を食らった佐夜は物凄い勢いで反対側の結界に激突。これにより佐夜もジュエル破壊で戦闘不能になり、残りはニケのみなる。


「ふ……私の鉄球を溶かした事は正直、認めて上げてもよろしくてよ」

 少し冷や冷やしたサラが佐夜を称える。これまでもここまでサラを追い込んだ奴はあまりいなかった為、格下にあれだけ翻弄された事で少し動揺していた。


「さ、さて。後はあの猫ちゃんだけですか。ガル一人でも大丈夫だとは思いますが一応用心はしておいた方が───────」


 ───────────カンッ!


「あら?」

 ガルのニケの方に向いたサラの足元に何か硬い物が落ちて来た。それは先ほど佐夜がやけくそになって投げたピンポン玉の様な大きさの玉。サラがその落ちて来た玉を見た。


 その直後、


 カッ────────────


「え──────」

 

 チュドオオオオオオ───────────ンン!!!!


「きゃあああああああああああああああ!!!」


 落下の衝撃で割れた玉は実はマナのストック魔法『エクスプロージョン』を佐夜の錬成術で閉じ込めた物でそれがサラの目の前で大きな爆発を起こし、サラに直撃。上空へとふっ飛ばした。『上位魔法』+『現場の酸素&水素の増加による火力増加』をまともに食らったサラはこれで一撃KO(戦闘不能)。

 もしサラが鉄球の中に居たままこれ(エクスプロージョン入り玉)を食らってもせいぜい鉄球が少し溶ける程度(NOダメージ)だっただろう。だから佐夜はサラに接触して鉄球を溶かそうとしていたのだ。それに時間を掛け過ぎてもエクスプロージョンを閉じ込めていた玉が限界を超えて割れて佐夜自身が自爆していた。


「ガぁッ!」

 爆風で上空にふっ飛ばされたサラが気絶しているのを見たガルがニケとの戦闘を中断してサラを落下の衝撃から守った。その際、炎の中を突っ切った為、ガルは少しダメージを食らった。


「にゃにゃ、な~お………ん、ん、こほん。どうやら残ったのはアタシとアンタだけみたいだね。それで、その子は大丈夫かい?」


「ガルルル………が、あ、あ。ああ、顔に少し煤が掛かってるくらいで後は気を失ってるだけだ」

 獣化ビーストモードを強制的に解除した二匹……もとい二人が人語で話す。


 とりあえずガルが抱えているサラを審判に渡し、再び二人は距離は取る。

「……さて、そろそろ決着を着けようじゃないか、ガル」

「……ああ、いい加減観客達も見飽きる頃だろうからな。この一撃で終わらせる」

 一度言葉を区切ったガルは互いのジュエルの色(黒色)を見て、次が最後の攻撃になると確信している。


「行くぞ! 餓狼漸慟撃がろう・せんどうげき!!」

 この技はガルの奥義の一つ。両手の手根部(手首のあたり)を合わせ、瞬動を発動させながら回転し、相手をドリルの様に轢き削る荒技だ。


「こおおおおおお────────────────!」

 物凄い勢いで迫るガルに対するニケは目を閉じて左足と左手を前に出し、右手に魔力を集中して構えを取る所謂『カラテ』の様なポーズだ。


 そして、両者が激突する。


 カッ!


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・


 ドサッ…………………

 

 両者が交差し、倒れたのは『ニケ』だ。


「勝者───チーム【アルケシス】!!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「「「「「「ええええええええええええ!!?」」」」」」


 審判の勝者宣告に会場に居る誰もが耳を疑った。当たり前だが、闘技場に立っているのがガルだけならば勝者はガルの筈だからだ。ゆえに観客席内は凄く混乱している。


「ふっ……なるほどな。一本取られたぜ」

 闘技場内で唯一立っているガルが溜息を付いて苦笑する。そして胸ポケットに入れてたジュエルを取り出し、続いてニケに近付きニケのジュエルを取り出す。ガルのジュエルは完全に割れてしまっているが、ニケのは黒色のままだ。

 それを確認したガルは審判に近付き、マイクを借りて混乱している観客達に説明した。


「貴様等が混乱するのも無理はないが、負けたのは俺達【ビース】の方だ。と言っても納得できないだろうから今からその説明をしてやる」

 それは最後の攻撃中、全力で攻撃した両者だったが、交差する直前にニケはあるスキルを発動させていた。


「それは【浸透スルー】と言って、本来『攻撃を受け流す為』の技だ。それをこいつはダメージを『ジュエルにではなくそれを自分本体にダメージを流してジュエルを守った』」

 だからジュエルで守られているガルはジュエルが割れる代わりに立っていられるのだ。そしてジュエルを守ったニケは、


「おいニケ、大丈夫かって……腕折れてるじゃないか!」

「血も凄く出てるし……タック、イング。早く担架を!」

「「あ、ああ。分かった」」

「「ニケ姉、しっかり!!」」

 先に戦闘不能になったアルケシスの6人がニケの元に行き、ニケを心配する。そして担架でニケを運び、一緒に医務室へと向かった。


「……でもよ。これってルール違反じゃね?」

「そうだよね。普通はジュエルにダメージが行くわけなのにそれを無視してやったのだからこれって反則だよね」

「い、インチキだ!」

「「「そうだそうだ!役立たず(アルケシス組)達を勝者にするのは納得できねーぞ!」」」

 観客席に居た生徒の一人がそう呟き、それが他の観客達に広まっていってブーイングが鳴りやまない。


「ダマレっ!!」

「「「「「「「「………………っ!?」」」」」」」」


 野次を飛ばす観客達にガルが殺気を向けて唸る。その威圧さに一瞬にして会場は静かになる。そしてそれに応えるかのように解説の人が慌ててルールの説明に入る。


「み、皆さま。言いたい事は分かりますが、チームアルケシスはルールを破ってはいません」


 選抜戦(模擬戦含む)の禁止事項。


1、戦闘不能者リタイアになった者への過剰攻撃。

2、ダメージを受けたジュエルの回復。

3、身に着けたジュエルを外す事。

「今回。ニケ選手はジュエルを着けたままでいて。攻撃をジュエルではなく、自分に流しただけなので反則には至らないと実行委員からの通達です。よって───────」

 一旦、間を置いた解説の人はもう一度宣告する。


「勝者はチーム【アルケシス】!!」

 そしてようやく納得がいった観客達から大きな歓声が沸き。準々決勝第一試合が終わった。

 しかし、この戦いで大怪我をしたニケは次の準決勝以降の参戦を医者&実行委員からのドクターストップにより参加出来なくなった。

 

 次は準決勝。まだ準々決勝・第二試合が始まってはいないためどのチームと当たるのかは分からないが、苦戦は確実だろう。っと、医務室で待機していた6人はそう思った。


削れる部分は削ったけど説明不足を足した分、逆に長くなった………。

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