第9話 ~選抜戦・その1~
原文にあった佐夜の歌詞などは省きました。正直いらないよね?
佐夜が幻想界【レニアナ】に落ちて約二ヵ月が経ち、模擬戦後のエミリア王女との遭遇より二週間が過ぎて、明日はいよいよ選抜戦。
この二週間の間、勿論イング達【アルケシス】組も選抜に向けて特訓していた。
イングは『超筋トレ』。朝から木刀素振り一万回、腹筋・背筋・腕立て伏せ一万回、昼食後仮眠を取ってストレッチ、そしてリンド・ニケ・佐夜・双子との魔法を使った組手を約2~3時間行い、ダウンをして終了。
マナは午前中は軽く筋トレ(体力が無い為)し、午後は魔導士アイナとの魔法の鍛錬。その後、佐夜とのストック魔法の生成の練習(ストック出来る数を増やす魔法)。
ニケは午前中ずっと寝ている。午後になって昼食を取り、ようやく身体を動かす(イング達との組手)。
双子のノンとロロはマナと一緒に筋トレをしたり、アイナと魔法の鍛錬を行った後、イング達と組手を行う。
タックは何故か鎮守の森に入り一人で修業をしているらしい。理由を聞くと、どうやら森の方が的が多い為、小魔法連発の修業が捗るとかなんとか。
佐夜は午前中はひたすら錬成術の鍛錬。たまに本校からエロ講師のアルガドが来るが、何かを教わる事なくひたすらセクハラを受ける佐夜(どこを触られたかは言えない)。毎回ぶっとばしてはいるものの、いくらぶっ飛ばしてもセクハラを止めないアルガドに、遂に心が折れて泣き始めたら流石に焦るアルガドに、どこからともなくアイナがやって来て、焦ったアルガドを引き摺って行った。
そして午後になる前に、みんなから(リンド、アイナも含む)食べたい物を聞いて昼食を作る。作る時ちゃんとエプロンを着けてから調理する姿はすっかり主婦だ。
午後になり、軽くストレッチをしてイングが仮眠から起きて来た後、組手をし、その後マナのストック魔法の生成の練習を手伝った。
そんなこんなの二週間。なかなか充実した二週間だったと言えなくはないが、ここは一応学校で「勉強はどうした?」というツッコミは当然あると思うが、そこは選抜選手の特権らしく、選抜戦が始まる二週間の間は授業を免除されるらしい。当然本校通いの他の選抜選手も授業を受けずに選抜に向けて特訓しているらしい(エミリア談)。
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「あれ? サヤ、その腕に着いてる物って何?」
「アクセサリー? にしてはちょっとおっきいよね?」
みんなで連携の最終調整中、ふと双子が佐夜の右手首に付いている腕時計に気付く。
「サヤ、それってお前がこの世界に落ちて来た時に持ってたやつじゃないか?」
「うん。俺が元いた世界で持っていた唯一の持ち物だよ。といってもこれ、元々落ちてた物を拾った訳で、一体何なのかは分かんないけど」
佐夜自身も良く分かってない顔で腕を振る。ちなみに来ていた男子制服は模擬戦への衣装の素材となった為、既に元の面影はない。
「ちょっと外してもらっていい……?」
「ああ……それなんだけど。外れないんだ」
「「「「「「ええ~~~!?」」」」」」
困った顔で言う佐夜に他の6人が仰天する。
「え、ちょっと大丈夫なのかい!?」
「「ヤバイよヤバイよ!」」
「呪い系………?」
「サヤ、大丈夫なのか?」
眠気が覚めたニケと双子が騒ぐ中、タックとすぐに無表情に戻ったマナが冷静に腕時計(?)を見る。
「まあ今の所、特に異常は無いけど多分大丈夫だろ」
「達観してるけど本当に大丈夫なのかサヤ?」
「ってゐ!」
「った!?」
達観する佐夜にイングが佐夜の右腕を掴んで心配する。その心配する感じが何か恋人を心配する様な感じがした佐夜がイングにチョップをかます。
「本当にお前ってやつは油断も隙も無い」
「今のは何の問題も無かっただろ!? つか何でチョップ?」
「なんとなく」
「なんとなくならしょうがない」
最早条件反射的にツッコむ佐夜にイングももう慣れた。
「おいおい、人が心配してんのに何イチャイチャしてんのお前等……」
「男同士なのに、不潔………」
「「むぅ~~~~!」」
「あ~甘い甘いwww」
こちらも相変わらずイチャイチャしだす二人に、他の5人がジト目で見る。
「「イチャイチャなんかしてない!」」
「いいや! 王都の街中でも噂される程のイチャイチャ具合だ!」
「ううん、噂どころじゃないくらいイチャイチャ………」
「「リア充!」」
「甘い、いや、甘々だねぇ~~」
「「だ・か・ら~~~!!」」
といった感じで、仲良し7人組の選抜戦前夜が過ぎて行った。
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閑話休題───────
ハーマン「フンッフンッ! サイド・チェストー!!」
※:謎のマッチョによる(本人曰く)サービスシーンです|(地獄絵図)。
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そして選抜戦当日。イング達チーム【アルケシス】を含む20組が闘技場に集まった。
そこにはイング達と戦ったチーム【ナターレン】や【クフィン】の人達も居た。ナターレはアルケシスと同じ4勝1敗で13位で通過。クフィンは5勝全勝で7位。ちなみにアルケシスは4勝1敗の16位のギリギリで出場だ。
まあ、本当は20位だったのだが、選抜のシード権を獲得している4チーム(4位)分が余り、その為その分の下位20位にいたアルケシスが繰り上がって出場権が与えられた。
本来なら喜ぶべきなのだが、イングが何故か複雑な表情をしていたのを佐夜が見逃さず、問い詰められていた所を闘技場にいた人達に見られ、
「「「「あいつらこんな所でもイチャついてやがる………!」」」」
「噂通りの仲良しね!」
「ホント羨ましい!」
「え?あれで男の子なの!?」
男子達からは私怨の目で見られ(イングのみ)、女子達からは色々と奇異の目で見られていた(一部腐女子あり)。
そして朝の九時になり、まずは一回戦の抽選会から始める。一回戦・二回戦はシードを除く16位が戦い、4チームまで絞った後、残りのシード4チームを含み、もう一回抽選を行う。そして準々決勝・準決勝・決勝を行い優勝チームを決めるのだ。勿論トップのエミリア王女もシードに入る。
ちなみにこの選抜戦も模擬戦同様『ジュエル方式※』を採用しているが、違う点で言うと模擬戦では7人中5人を倒せばOKだったが、選抜戦では相手を全滅させるまでやる殲滅戦である(シードのチームには一人しかいないところもある為)。
※ジュエル方式についての詳細は模擬戦にて
そして組み合わせ抽選会の結果。アルケシスは一回戦の第三試合。相手は【グラッセ】。模擬戦では全勝しているものの、チームランクはそんなにアルケシスと変わらない。とはいえ舐めてかかると負けてしまう可能性がある為、油断はしない。
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─────んで、その結果。相手チーム【グラッセ】の方がアルケシスを舐めてかかり、アルケシスに敗北した。その内容は試合開始直後にグラッセの前衛4人が前に出て来て、その間に後衛の魔法使い3人が詠唱を始めるというものだ。
チームグラッセがそうする事を読んでいたニケが、「アタシが特攻して魔法使い達を撃破してやんよ」と言い、そのまま特攻で撃破した後、ゆっくり残った4人を料理してやった。その蹂躙する光景は、観客達から見たら凄く滑稽だっただろう。ともかくアルケシスは一回戦突破。
っていうか『やんよ』ってどこで習った?
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続く二回戦の相手は上位チームの【ケーラル】。何と全員が全員、戦士系(剣士・格闘系)で構成されている超攻撃型のチームだ。なので混成チームであるアルケシスにとっては非常に不利な相手なのだが、ここは全員マナの提案に乗っかる事にした。
まずは開始直後、マナ(佐夜も協力)がストック魔法を解除して、いきなりの大火炎魔法『エクスプロージョン』を放つ。いきなりの大魔法にケラールの人達も一瞬慌てたが、一人が自分を犠牲にして他を逃がすスキル『デコイ』を使い、他の人達は3、3で左右に分かれた。
そこに合わせてイング・ニケが右方に、佐夜・タック・ノン・ロロが左方に分かれる。右方に回ったイング・ニケの方は戦士系なのでそれなりに戦えるが、左方に回った残りの4人は明らかに敵チームの戦士たち3人より劣る為、戦って直接勝てる相手ではないのでこの4人には相手の動きを封じてもらい(具体的には玉砕覚悟でしがみ付く)、そこにマナのもう一つのストック魔法『ストームハリケーン』を味方諸共ふっ飛ばした。
その結果、佐夜・タック・ノン・ロロの4人とケラールの2人が戦闘不能。何とかジュエルを黒で収まった一人がマナに襲い掛かり、マナと同時K.Oした。
後残ってるのがイングとニケ、そしてケラールの3人…いや、今ニケが一人倒して丁度2人対2人になっている。ここまで来たら後は根性!
で、その結果はマナの提案に乗っかった成果もあり、何とか辛勝した。本当にギリギリの攻防で、最終的に生き残ったのはニケだけだ。そのニケのジュエルの色も黒で一歩間違えば敗北していたのはこっちの方だ。勝ててよかった。
そして準々決勝の前にもう一回抽選があるが、その前に昼食の時間。
「今日はシンプルだけどサンドウィッチにしてみた」
「「「「「「おお~~~~!」」」」」」
昼食の場に選んだのは食堂。普通食堂なら「食堂の物を食え!」って言われそうなのだが、ぶっちゃけ佐夜の作った物の方が美味いので、食堂に来てもほとんど食堂の物は食べないし、そもそもいつもは分校に居るのでここにはほとんど来ないのだ。それこそ前に来たのは試験と模擬戦の日くらいである。
そしてそのサンドウィッチの中身は、タマゴ、ツナ、カツ、レタスハムチーズ、コンミート(馬肉)キャベツ、卵焼き(厚焼き)、芋、イチゴ(デザート)とバリエーションが半端ない。気が付くと周りに人だかりが出来ていた。
「キミ達本当に仲良いね。 お? それ美味そうな食べ物だね?」
「む!? それは食堂のメニューに無い物か? 見た事の無い物だ……」
声を掛けて来たのは先ほどアルケシスに負けたグラッセのリーダー【アイスナー】とケラールのリーダー【エイル】だ。二人が目を向けているのは佐夜のお手製のサンドウィッチ。実はこの世界にサンドウィッチはあるがそこまでバリエーションは無い為、最初にマナやアイナに出した時はビックリされた。
「えっと……良かったら少し食べます? 多めに作って来てあるので」
実は…というか佐夜は弁当を作る際、ニケが大食いなので多めに作って来るのだ。まあ、それでもいつも完食されるんだけど。
「え、いいの?じゃあ私はこのキャベツ(っぽい物)が入った物を頂くわ」
「じゃあ僕はこの揚げてあるやつ(カツ)を貰おう」
といって二人はそれぞれ一つずつ手に取って食べる。
「「っ!? 何これ美味しい(何だこれは美味い)!!」」
「そうだろうそうだろう!サヤの飯はメチャクチャ美味いからな!」
「サヤの女子力は最強………!」
「そしてアタシの嫁だ!」
「「ちがうよ!サヤはノンとロロのだよ!」」
「あ、あははは………」
アイスナーとエイルの感想に何故かタックとマナが自慢し、ニケと双子が「俺の嫁!」発言。収拾がつかない状態に当の佐夜は最早笑うしかない。
その後、佐夜の料理を気に入ってしまった2人は結局最後まで皆と一緒に昼食を取った。勿論食堂のメニューを食べつつ佐夜のサンドウィッチを少し貰う形でアイスナーとエイルが持っている残った7チームの情報を貰った。
「あー美味かった。サヤは将来絶対、良い嫁さんになれるぞ!」
「そうだね。料理は超美味しいし、戦闘の気配りや会話の気遣いも上手だしね。こんな娘なら男女問わずに求婚を求められてもおかしくないね!」
「いや俺、男なんだけど?」
「………は?」
「いやいや、また~。確かに貴女が男だって噂は聞いた事あるけど、こんな可愛い娘が女の子じゃない訳ないじゃないって|(笑)」
「いや、本当にサヤは男だぞ?俺も確認したことあるしな」
「「「「「「「「…………………はい?」」」」」」」」
アイスナーとエイルの嫁さん発言に否定する佐夜だったが、それを裏付ける様に言ったイングにみんなが注目する。
「? どうしてみんな俺を見る?」
「ねえイング? それってサヤの裸を見た事あるって事なのかい?」
「うわぁ。マジかよ………」
「………ヘンタイ」
「ちょ!? ちょっと待て。確かにサヤの裸を目撃した事は認めるけど、決して故意じゃない……そう! あれは事故! 事故でだ!」
「「事故?」」
「ああ……サヤが家の風呂場で逆上せた時にちょっとな………」
「は? ちょっとそれ俺、初耳なんだけど!?」
イングの発言に批判する仲間達に弁明すると、今度は黙って聞いていた佐夜が食いついた。
「そりゃあお前は逆上せて気絶してたからな。で、その後サヤを運ぶ時に見てしまったんだ……アレを」
「「アレ?」」
「…………言えるかアホたれ!」
イングの言っているアレとは勿論アレなのだが、それは18禁なので言えません。
「やっぱりイングはヘンタイ………」
「いやだから何でだよ!?」
「そりゃあいくら何でも、裸見た事をここで言う事じゃないからさね」
「だ、だって俺にはそれしか心当たりが無いんだぜ?……ってサヤ?」
「………………」
返事が無く虚ろな目になっている佐夜。だたの屍のようだ(定番)。
「「イングヘンタイ!!」」
「勘弁してくれ~!」
「……本当にこいつら、仲良いな」「ホントだね」
食堂でギャーギャー騒ぐイング達にエイルとアイスナーが羨ましそうに言った。
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「おいおいマジか…………」
「さすがイング。引きが悪い………」
タックとマナの表情が引きつった。それもそうだろう。
お昼が終わり、午後の抽選会にて早速リーダー達のくじ引きが行われたのだが、またもやイングがやらかした。
イングが引いた番号は2番。そして1・3・4番が全部上位チームで固まってしまったのだ。特に1番と3番を引いたのはシード組で校内ランク2位と4位の強者だ。流石イングついてない。
「いや、他のチームのみんなもここまで残った強者だ。どっちにしろ結果は同じだと思うぞ?」
「そうだね。何番引こうとアタシ達のやる事に変わりはないよ」
「「だね!」」
そんな二人とは対照的に佐夜、ニケと双子はやる気に満ちているようだ。
そんなこんなで次の相手は上位シードの【ビース】。犬の獣人【ガル】と佐夜と同じ錬成術士の【サラ・ウィンドーラ】の二人だ。ガルはニケのライバル的な存在らしく(ガルの一方的な敵意)、サラは錬成師としては佐夜の何倍もの実力を秘めているらしい(アイスナー談)。
「上位チームとはいえ2人だけなので何とかなる……か?」
「逆だろうタック。『2人しかいない』んじゃなく、『2人だけで十分』なんだろ。それで上位にいるって事は、相当な実力と見ていいだろ」
「「「そんなチームに勝てるかな?」」
「大丈夫さ。アタシがあの犬ッころを相手してやるから。あんた達はもう一人の方に集中しな」
タック、イング、ノン、ロロが渋い顔をしているとニケが自分がガルの相手をすると言い出した。
「ニケ。大丈夫なのか。相手は上位ランカーだぞ?」
「せめてイングも一緒に戦わせたらどう……?」
「いや駄目さね。あの犬ッころの場合、複数人で戦う方が逆に危ない。だからあいつの目をアタシ一人に向けさせる必要があるのさ」
「逆に危ない?………もしかして【獣化】持ち?」
「ビースト? あいつは元々獣人じゃないの?」
マナの言う【獣化】に佐夜が首を捻る。
【獣化】とは亜人・獣人が習得できるスキルで、発動すると、まさに獣のごとく、本能で戦う事が出来る。
ニケが言っているのは、おそらく自分に攻撃対象を指していないとガルが他の6人に牙を向けた時、一瞬で全員戦闘不能に陥る可能性を危惧していたのだ。ゆえにある程度亜人・獣人の事が解っているニケが自分からガルと戦うと申し出たのだ。
「じゃあ俺達はサラ一人に集中すればいいのか」
「……つってもさ。あいつも結構ヤバイ相手だよなー」
「え?そうなん?」
「誰も近寄らせない絶対防壁で有名………」
「遠距離魔法は勿論壁に遮られて」「近距離で近づくと錬成術でカウンター……」
「「まさに鉄壁!!」」
「そ、そうか………」
何でこんな時にこの双子はこんなにテンションアゲアゲなのだろうか?
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そして午後の試合時間が迫り、
「両チームとも、準備はよろしいですか?」
「はい」
「おうよ」
と、審判が確認し、イング、ガルが返答し、
「では、開始!」
準々決勝が始まった。
そんな感じで要らないと感じた部分は省き、表現が足りない部分を足していきます。何気に時間掛かるんだよねぇ。




