91・難民。
サブタイトルを少々変更しました。
ゴムの木の情報と採取を依頼した冒険者ベンジャミンさんが帰ってきた。
木を植えていた村は壊滅状態だったという。
「モロに戦場でしたからねぇ。何も残ってませんでしたよ。
でもゴムの木は全部とはいきませんでしたが無事でした。
みんなタダの木だと思ったんでしょうね。
樹液も残ってた木から採取してきました。
あとは見本として十本ほど根ごと土ごと掘り返して持ってきました。
まあ、挿し木も取り木もできますが成木までは時間がかかりますから」
資金と馬車をこちらから先に提供したとはいえ随分と丁寧な仕事だねぇ。
大変だったんじゃあありませんか?
「自分のやってたコトが全部無駄になったかと落ち込んでたんです。
ご興味を持って頂いて嬉しかったんですよ。
あの村は壊滅状態ですがいつか復興できたらゴムはきっと村のためになると
思うんです。
田舎の村ですが故郷なもんで……」
壊滅した村でも「故郷」なんだね。
村の人達がどうなったのかお聞きしても?
「ほとんどはココに避難できました。
伝手があるからと別の街に行った者もおります。
避難の途中で倒れた者が居ないわけではありませんが……」
あれ? ……ということは難民がコノ街に大勢来てると思うんだけど。
彼の村だけが避難してきてるハズもないから……
でも、街にそんな雰囲気は見当たらないよね。
「オレは伝手もあって街中に居られますがほとんどは街に入れませんでした。
避難してきた全員を受け入れられるほどの容量は旧都と言えどもありません。
みんな城壁の外にテント村を作ってます。
街からの炊き出しとかもあるのでなんとか命を繋いでは居ますが……」
実のところオレはまだコノ旧都から王都以外は外に出たことが無かった。
王都に行くのも王宮の転移陣を使ってるから「外」は見たことも無い。
まあ、幼児の行動範囲なんて広いはずがないよね。
オレなんか広すぎるくらいだと思う。
難民キャンプか……なんとか力になれることがあると良いんだけどね。
老人クラブ会長(笑。)なスタークさんに来てもらってゴムの木を見てもらう。
どうやら以前現物を見たことがあるらしい。
「もっとも枯れ木になってましたけど。
普通の木にしか見えませんでしたよ。
植物大百科の記述を少し補充したいので彼に色々聞きたいんですが……」
もちろんオッケーしたよ。反対する理由なんて無いしね。
ゴムの木の現物は宰相閣下の領地のうちで一番旧都に近いところに植えた。
その領地は旧都向けの食品の生産をしているそうだ。
まあ、都市の周りにはそういう場所は必要だし無いと遙か彼方から運んで
来なければならない。
ベンジャミンさんにはゴムの木の栽培指導を継続的にお願いすることにした。
ゴムの木を一番知ってるのは彼だからね。
錬金術師のロザさんに来てもらってゴムの樹液を鑑定してもらう。
まだ未精製な物だけど魔力で合成した物に負けない物に出来そうだと言う。
まあ、どちらが上かなんてのはまだまだコレカラだろう。
みんなが思いっきりゴムのボールで遊べるようにしてあげたい。
大人の兵士を蹴飛ばすよりソッチの方がずっと楽しいだろうしね。