87・パッチンピン。
ミーアはシュシュをブレスレットのように手首にはめている。
でもやっぱり髪に付けたいらしくてメイドのお姉さん達を羨ましそうに見ている。
鏡の前でシュシュを髪に当てたりしてるのでなんだか微笑ましい気もする。
なのでミーア用に髪飾りを造ってみることにした。
とは言ってもオレの錬金術のレベルは低い。
ロザさんから見取ったから出来はするけどまだ自在とはいかないんだよ。
オレでも出来る程度の髪飾り……ソレは誰でも見たことがあると思うアレだ。
でもアレって正式な名前って有るのかね?
姉たちは『パッチン』とか『パッチンピン』とか言ってた気がする。
材料はいつものように銅貨を使おうとしたら執事氏に叱られた。
「偽造じゃあないですから罪にはならないかもしれませんがソレはダメですよ。
みんなその小さな銅貨を得ようと仕事をしています。
子供の髪飾りなど銅貨一個ほどの価値は無いと思います。
金属片くらいいくらでも用意いたします。
銅貨を使うのはおやめ下さい」
あー……手近にそれらしいモノが無かったんでつい銅貨を使ったけどやっぱり
コレはアカンよね。
お金なんだし……
そういえばお札を切り刻んでアート作品を造ってる人が居たね。
アメリカだとそういうのは禁止らしい。
ヨーロッパはオッケーだったかな?
日本はどうだったろう? 違法だった気もするけどどうだったかなぁ?
まあ、ココは前世の世界じゃあないし紙幣もまだ存在していない。
銅貨を錬金術に使っても違法じゃあ多分無いだろう。
でも罪でなくてもやらないほうがイイことには違いないよね。
執事氏がコワイわけじゃあないけど止めておくのが一番ってところだな。
パッチンピンは構造が簡単だからレベルの低いオレでも楽勝だったよ。
金属……どうも鉄みたいで黄色っぽい代物だったけど銅より簡単に加工できた。
20個くらい造ってピンの端に破片で造った小さな花を付けた。
ちょっと色も塗ってみる。
ソレらしくなったかな?
あとは端切れな布で包んだモノもやってみた。
姉たちは針で縫ってたけどオレは裁縫はほとんどできないので接着剤で貼った。
出来たよ! ミーア。
コレなら君の髪にも付けておけると思うよ。
気に入ってくれたんだけどミーアに反対に付けられてしまった。
パッチンピンだらけな男の子ってそう居ないよね。
前世でも居なかったよなぁ。そんな子は……
館のみんなから笑われた若様ですが全部外せてなかったのに気が付いたのは
王太后さまに指摘されてからでした。
お気の毒さま~。