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82・集中力。

 アイリスさまは授業中だったらしい。

嫌気がさして逃げ出したところでオレを見つけたそうだ。

モチロン家庭教師なオバサ……もとい女史に捕獲された。

逃亡は失敗だね。


あの~……なんでオレまで捕獲されてるんですかぁ? 


「アイリスさまがこうなったら気が散ってお勉強どころじゃあないんです。

少しアイリスさまの気晴らしをしていってくれませんか? 

カルタのお相手とかでイイですから」


なるほど……部屋から逃げ出したんだもんね。

オレはアイリスさまの重しみたいなものか。

ということでお遊び相手を暫くさせていただいたよ。


王女さまでなかったら年相応の活発な女の子だね。

確かに気が散りやすい方だとは思うけど。

王女なばっかりに同じ歳の子供より色々と負荷がかかってるんだと思う。

まあ、逃げ出したくもなるよね。


あれ? 同じ歳の子? 

アイリスさまはひとりで授業を受けてるんだろうか? 

ご学友なんて立場の人って居ないのかね? 


「ご一緒に……ですか……

う~ん、学園とは違いますし他の子が居たりしたらますます気が散りませんか? 

アイリスさまは気の散りやすい方ですし……」


授業のスケジュールを見て驚いたよ。

とても7歳の子の時間割とは思えない代物だったね。

何でこんなに長時間の授業になってるんです? 

これじゃあ集中力が続くわけないですよ。


大人でも集中し続けるのは難しい。勉強でなくてもね。

娯楽のハズの映画でも上映時間は大体2時間くらいだし結婚披露宴とかでも

ほとんどが2時間くらいだ。

まして子供……まだ7歳なんだよ、アイリスさまは! 

小学校の一時限は1時間も無い。45分だったはずだ。


テレビのコマーシャルも15分から20分くらいで挟まれている。

アレも集中が切れかかった頃に入れて気分をリフレッシュさせてるんだ。

モチロン持ち直した集中力で商品に集中してもらうんだけどね。


「え~と……兄君さま達や姉君さまの授業も同じような時間編成ですが? 

皆様と同じではイケナかったんでしょうか?」


折角専属の方に見ていただいてるんですから他の方と同じってことに

拘らなくてもイイんじゃあないでしょうか。

気の散りやすい方だってコトは理解されてるんですよね。

集中できる時間が分かってられるでしょうから集中が切れる頃に一休みを入れて

差し上げて下さい。

きっと逃げようとすることは減ると思いますよ。


ご学友が居ると対抗心も生まれます。

たかがカルタでも平民の子たちはあっという間に覚えてしまいました。

勉強が嫌いなはずの子でも対抗心のオカゲかすぐでしたよ。

遊びと勉強は違いますが自分ひとりだけ難行苦行をさせられているというのは

不満も反抗心も積み上がってしまいます。

『戦友』がいれば少しは軽減できると思うんです。


「アイリスさまが逃げ出すのはいつものコトだと慣れてしまいました。

逃げ出さないようにと工夫してみるというのも必要だったんですね。

ご学友の件は私の独断では決定できませんが母君の王妃さまに申し上げてみます。

きっとご許可いただけると思いますよ」


こんな子供の言うことをなんでそんなに素直に受け入れる気になるのかなぁ。

大事な王女さまのコトなのに……


「ドールハウスでお作法をお教えするのが楽になったんです。

カルタのオカゲでなかなか覚えていただけなかった文字もクリアできました。

絵本もアナタが始められたコトだと王妃さまから聞きました。

最近は絵本の朗読もされてるんですよ。

もっとなにかお気づきのコトがあったらお教えいただきたいと思ってるんです」


あー……ちょっとやりすぎたかなぁ。

でも、アイリスさまは逃げ出したくなるどころか本気で逃げ出してるんだもんな。

楽しくお勉強……とまで行かなくても逃げないで勉強する気になってほしいよね。

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