72・将棋の大会。
商業ギルドは別に大儲けしたわけじゃあなかったよ。
勝敗の結果とか棋譜を買ったのはほとんどが参加者達だったしほんのサービスの
つもりだったようなんだけどね。
主催者に『無断』ってのはやっぱり叱られても仕方ないよなぁ。
結局、大した利益では無くても半分主催者に渡すことで勘弁してもらえたそうだ。
まあ、王太后さまはお金のことで怒ったんじゃあなくて『無断』だったことに
引っかかっただけだもんね。
取り上げた半分は神殿の孤児院に寄付されたそうだから誰も文句は言わなかった。
ココには著作権なんてモノはどうやら存在してないらしいんだよね。
前世でも棋譜の著作権は微妙な問題みたいだったんだよ。
たとえ著作権が無くても無断でってのは気分のイイ話じゃあないよな。
だからヌイグルミのキットの型紙とかもいずれコピーされまくると思うけど
著作権なんて考えすら無いココじゃあ文句すら通るかどうか分からない。
まあ、新しいモノを造って売ればイイだけの話ではあるんだけどね。
それに他の人の利用を制限すると利益は独占できるけどソレは普及を妨げるコトに
なる可能性も大きいと思う。
カラオケの制作者は特許を取ってなかったそうだ。
そのオカゲでアレは世界中に普及したとも言える。
みんなが勝手に造って改良して売りまくった成果だね。
似たような話はアチコチに転がっている。
利益はモチロン大事だけど自分の利益だけ考えてちゃあイケナイってコトだね。
老人クラブの面々も棋譜を買い込んであぁでもないこぅでもないと
批評家に変身していた。
どうやら旧都の方々はいつの間にやら囲碁ファンとなっていたらしい。
「私は囲碁より将棋のほうが得意なんですけどね。
こういう大会みたいなのは将棋はやってませんから……
魔王国だと将軍主催の大会があるそうなんですが。
王都の方々はまだそんなことで遊んでる余裕はまだ無いみたいなんですよ。
王太后様は将棋にはご興味は無いですかねぇ」
王都に来ていた勇者は将軍を捕虜にしていたそうだ。
停戦の申し入れをして事態が動くまでの間にヒマな将軍に将棋を教えたらしい。
将軍は結構強かったという噂だそうだけどなぜか兵士の一人に最後まで勝てず
ソレが悔しくて『強いヤツ募集!』な大会を始めたそうな。
でも王太后さまは将棋に興味なんてあるのかなぁ?
そういえばおばあさまは将棋は執事氏にはまだ敵わないって言ってたよな。
王太后様は将棋でならおばあさまに勝てるかもしれない。
その辺りをちょっとつついてみたら面白いかも……
結局、将棋のトーナメントも開催されることになったよ。
でも準備に手間取ってできたのは3ヶ月後だったけどね。
「魔王国のマネみたいでちょっと気が引けたんだけどね。
まあ、向こうの大会もコチラの兵士が強かったからですもの。
彼に勝てる魔族が出てくるかも知れないからコチラも『強い人募集!』を
やっちゃってもイイわよね。
フフフ……将棋だと勝てたのよ! 彼女にも得手不得手があったのねぇ」
あー……随分とゴキゲンがイイと思ったら勝てたのか。
ソレは良かった!
この方は負けるとご機嫌が悪くなるけど手抜きとか手加減なんかするともっと
「面倒くさい」ことになるからねぇ。
老人クラブの面々は喜んでくれたよ。
「囲碁も楽しいけど最近ちょっと目に来ててね。
将棋のほうが目の負担が少ないんでついソッチをね……
大会に出られるほどの腕かどうかは自信が無いけど励みになりそうで嬉しいよ」
そうか……辞書の仕事をしてもらってるけどみんなお歳を召した方々だ。
老眼・疲れ目・その他目に不調が出てきても不思議じゃあないよな。
なんとか負担を軽くするコトを考えてみないとね。
28話の「パッチワーク」に出てきたメイドさんの名前を変更しました。
リリィさんをデイジーさんに。
王女さまをリリアさまにしたのでちょっと紛らわしいかも……と
思ったんです。
お花の名前が自分の名前って可愛くって羨ましいです。