67・寂しがりの木。
結局ゴムの木は希少種で国境の森の南当たりに生えてるだけらしい。
森の外でも育つかどうかは確認できていないようだ。
コレはちょっと探究心をソソるねぇ。
でも幼児はそんな遠くの危険な森なんか行けないし行かせてなんかもらえない。
まあ、当然だよね。
どうしたものかと悩んでたら秘書のカール君が解決してくれた。
「冒険者ギルド」に依頼を出せばいいのだと!
あー……あったんだ……冒険者ギルド。
そういえば学園の庶子の進路に冒険者ってのをデコ氏が言ってたっけ。
すっかり忘れてたよ。
「ゴムの採取は冒険者への依頼ってことになってます。
なかなか大変なんで行く人が少ないんですよ。
そう言えば以前少し森の外で植えてた人が居たみたいですがコノ戦争でソコも
戦場になってしまいましたからねぇ。
多分ダメになっちゃったんじゃあないかと思うんですけど」
おー、先駆者が居たんだ。
じゃあ、その辺の情報集めと現物の木の確保、挿し木や接ぎ木ができるかどうか
そういったことを依頼してみよう。
ということで依頼とか手続きはカール君にお任せすることにした。
こんな子供が冒険者ギルドに出入りするなんて違和感バリバリだもんね。
覗いてみたいんだけどね……冒険者ギルド。
テンプレって起こるのかどうか確かめてみたいって気がしちゃうんだよね。
依頼に出かけたカール君は冒険者を一人連れて帰ってきた。
なんとゴムの木を育てていた人だという。
「森からゴムの樹液を集めてたんです。
もう歳なのでなんとか森の外で育てられないかと試してたんです。
でも、戦争が起きてしまって……
あそこは戦場になりましたからもうダメでしょう。
ココの親族を頼って避難してたんですが仕事もあぶれ気味なんです。
ギルドでゴムに関係する依頼の話を漏れ聞いて彼に付いてきました。
話だけでもお代ををいただけると言われまして……」
おお! なんと大当たりだね、この人。
枯れ木なスタークさんにも立ち会ってもらって色々聞いてみることにした。
彼の話は「植物大百科」のゴムの情報を遙かに上回ってたよ。
これは記述を書き換えないとイケナイかも知れないね。
コノ世界のゴムの木は意外と丈夫なようで挿し木も取り木もできるという。
「でも一本だけ植えてもダメなんですよ。
それこそ森や林のようにまとまってないとダメなんです。
木でなかったら寂しがりなヤツだと思うところですよ」
寂しがりな木……ねぇ。
前世の世界のフラミンゴって鳥は仲間が居ないと落ち着いて繁殖できないという
寂しがりなヤツだったな。
でもそんなに多くは飼えないから鏡を周りに設置して沢山いるように
見せてたんだ。
まあ、木に鏡を見せてもムダだろうけどね。
この人を中心にしてチームを編成してもらった。
ゴムの木の採取と運搬、そうして育ててみてもらうコトにした。
育てるのは宰相家の領地を使ってイイとおばあさまが許可してくれたよ。
実験農場とか農業試験場ってところだね。
錬金術師のロザさんが石油からの合成に成功したとしても天然物を確保するのは
大事なことだと思うんだ。
石油は今より未来で必要になるモノかもしれないからね。