31・無断侵入。
子供達の声が庭に響いていた。
楽しげに。
でもまだ夜が明けたばかりだろう。
こんなに朝早くにお子さまモニターズを招集したりしていない。
いったい何が起こっているのか分からなかった。
庭に出てみたら警護兵たちが子供達を追い出そうと追いかけ回していた。
でも、それすらも子供達には遊びと思われているかのようだった。
門から入れたのではないと警護兵たちは言う。
何人か捕まえてお菓子をチラつかせたらあっさり白状したよ。
警護兵の気づいていなかった塀の穴からだった。
ちょうど植え込みの陰になってたよ。
「友達がココの庭に面白いモノがあるって言ってたんで……
ちょっと覗いてみるだけのつもりだったんだけど登ったりしてみたら
面白くてやめられなくなっちゃったんだよ。
……勝手に使ってごめんなさい……です」
どうやらお子さまモニターズが情報源らしかった。
警護兵たちは身に覚えがあるからかなんとも言えない苦い顔をしている。
外部の者の侵入を許しちゃったしね。
まあ、塀の穴は塞いで貰うとしてこの子たちをどうしたものかねぇ。
執事氏に相談してみる。
「う~ん……貴族の館への不法侵入ですからねぇ。
このまま無罪放免とはいきませんよ。
街の警備兵に引き渡して牢屋に入れた上で街から追放ってのが一番軽い罰です。
二度とこの街には入れてもらえませんよ」
あ! 笑ってる! チョッピリだけど。
結局全員捕まえたからコレはお説教兼脅しだね。
プププ……みんな焦ってる焦ってる。
「ご……ごめんなさい!
友達がスッゴイ楽しいって自慢してたんです。
こんなの見たこと無かったですけど面白くて止めらんなくて。
勝手に入ったけど見つかる前に逃げ出すつもりだったんです」
でもなんでこんな早朝に来たのかな?
「オレ達近くの卸売りの市場で仕事をしてるんです。
仕事は夜中から今頃までなんでこれから帰って寝るんですけどちょっとだけ
話に聞いたお庭を覗いてみようって思っちゃって……
すみません……ごめんなさい……許してください。
街から追い出されたらウチのみんなが困るんです。
オレ達の給料……安いですけど家族に当てにされてるんです。
お願いします! 許してください!!!」
執事氏はオレの造った遊具なのでオレに一任すると言う。
丸投げしたね?
口元が笑ってるから最初からその気だったんだろうなぁ。
塀の穴に気づいてなかった警備の責任も有る。
お子さまモニターズにも特に口止めしてなかったしね。
この子達を街から追い出しても得なことが有るわけでも無い。
むしろ彼等の家族から恨まれるだけだろう。
ということでお説教くらいで勘弁してやることにした。
ところで遊具は楽しかったかい?
「スッゴイ楽しかった!
街にはこういう遊べる所なんて無いんだよ。
小さい子には歩くだけでも危ないところが一杯なんだ。
でも大人は仕事で忙しいから構ってられない……分かってるんだけど」
そうか……デカパイ母さんも預けておける親戚が居なかったって言ってたね。
保育園でなくても安全に遊んで居られる場所が必要なのか……
なんとか造れないものかなぁ。
でないとまたこの館の庭に子供が押し寄せて来そうな気がする。
広くてもココは個人の家の庭なんだもんね。
無断侵入者はお断りしたいからね。