14・ブランコとベビーチェア。
歩けるようになったので館の中の散歩は抱っこから卒業した。
大人と幼児の歩き方は違う。
うっかり大人な歩き方をしてコケちゃったよ。
頭が体の割に大きいんだよね……赤ん坊や幼児って。
バランスを考えると大人の歩き方は危険だ。
みっともなくてもやっぱり体に合わせた歩き方にしとかないとアカンね。
ミーアの兄たちは警護兵に剣術を習ってるようだ。
でも、どう見ても木剣でチャンバラごっこしてるようにしか見えない。
父親は兵士だったそうなのでソレも影響してるのかもな。
うん……一生懸命なんだから変な目で見たら失礼だ。
宰相閣下に嫡出の子供ができたら跡はその子が継ぐことになる。
オレはココでは予備みたいなもんだ。
前世の記憶がドコまで役に立つか分からないからできることは増やしておくのが
イイと思うよな。
ということで剣術修行を見物……いや見学している。
う~ん……剣道とは違う代物なのは理解できたね。
警護兵たちは宰相家の私兵だ。
一応領地に居る私兵達から選抜されて来ているそうだ。
訓練も熱心に励んでいるけど執事氏に言わせると国の兵士には敵わないらしい。
この館のみを警護するだけなのと戦争にも動員される国の兵士とじゃあ
最初の覚悟からして違うのかもね。
おばあさまはオモチャな木剣をプレゼントして下さった。
前当主な彼女の亡夫は軍人だったそうでオレが剣術に興味を持ったのが嬉しいと。
「あの子(宰相閣下)は跡継ぎだからとそれこそ小さな頃から厳しい訓練を
強要されてしまってねぇ……
ソレに反発しちゃったのよ。夫と何度も喧嘩してたわ。
騎士にはなったけど軍での昇進とかより政治のほうに興味を持ってしまって……
何をどうやったのか分からないんだけどいつの間にやら大臣になってたの。
そうなるともう夫も手出しできなかったわね。
でも、宰相になるなんて思ってもみなかったわ」
へぇ~……アノ恰幅の良さだったのに騎士の経験があったとはねぇ。
待てよ! オレの体は彼と同じ代物だから油断すると同じような体型になるかも。
コレはヤバイ!
おデブな男はモテる可能性が低くなっちゃうからな!
戦争は停戦……
終わったようなものだから今すぐどうこうということは無いと思う。
でも、またそういう事態になった時のために強くなっておくのも悪くないよな。
お遊びでも運動するのは体にイイことだ。
なのでミーアの兄たち同様チャンバラごっこをしてみてるんだけど……
ストーカーなみに付いてくるミーアが不満そうなんだよ。
剣術には興味がないみたいだね。
なんとか気をそらしておくモノは無いかとキョロキョロしてたら庭に大きな木が!
コレがまたなんともイイ枝振りで……首つりにピッタリ! じゃなかった!!
ブランコを吊すのにピッタリだったんだ。
おばあさまは「落ちちゃうからダメよ!」とおっしゃったけどベビーチェアに
ベルトが付いてたのを思い出してソレで許可してもらった。
ようするに脚無しのベビーチェアを吊して貰う感じで説明したんだよ。
なんか家具職人まで動員されてきちゃったのには驚いたね。
職人さんにベビーチェアの説明をしてそれからベルト付きのブランコを造って
もらったんだけど狙いは当たったね。
ミーアはブランコは未体験だったようですっかり嵌まってたよ。
ミーアの兄たちはトムとタムと言うんだけどコイツラもやりたそうだったので
ベルト無しの普通のを造ってやったんだ。
そしたら教えもしないのに立ち乗りやら飛び降りやらもうやりたい放題だった。
適度な危険は子供には必要なモノかもしれない。
ましてココは元の世界じゃないからこんな危険は危険のウチに入らないだろう。
家具職人はベビーチェアについて根掘り葉掘りオレから聞き出した。
そうしてソレは売り出されたんだ。
子供の前にミニテーブルをセットできるタイプが評判が良いらしい。
おばあさまはまた出資してあげたそうでオレまでお礼を言われちゃったよ。
でもオレが色々ヒントとかアドバイスしたのは内緒にしといてもらわないとな。
宰相閣下から「普通の子で居ろよ! 母上に迷惑かけるなよ!」と釘を
刺されてるんだもんね。