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今 13

 ぼんやりと過ごすわけにもいかない。今年は、受験だ。無理矢理に気持ちを切り替えて、私は小4から通っている塾に向かい続けた。

 そして数日前、受験が終わった。県立1位の学校を受けた。自己採点では、当初の目標通り250点満点の225点。

『合格がゴールじゃない』と言われ続け、合格してからが始まりと教えられた結果だ。


 だからまぁ、受験への不安はミジンコほども抱いていない。

 なにより今日は卒業式……前日の、卒業記念音楽会。

 1年生と2年生は合唱コンクールで、クラス対抗。ちなみに私は2年連続で最優秀賞をもらっている。3年生は学年全員で5曲とアンコール2曲を歌う。

 なんなら卒業式よりも涙の量が多い、超感動イベントだ(たぶん卒業式は練習ばっかりで新鮮味が薄れるからだ)。


つばさの遺影は、誰が持つんですか? 先生』

 栗源くりもとのその言葉に、教室が一瞬だけ静まった。私は反射で、手を挙げた。

『私……持ってもいいですか』

 なぜかクラス中が薄ら笑いで賛成してくれて、今、私は手に遺影を持っている。……クソ栗源め、ばらしたか……?


 2曲目が始まるとき……私は不意に、思い出す。

 あ、この曲……「俺、これ絶対歌いたい!」って言ってた。言ってたよね、霧生きりゅう

 遺影に、水が落ちる。分かってるって。これ、涙でしょ?

 歌いたい。歌いたいよ、一緒に。みんなで、卒業したいよ! 明日だって、3曲は歌う。その中に、この曲も入ってる。その後、私、告白しようって思ってたのに。ずっと、思ってたのに。

 私、このクラスが大好きだから。だから、みんなで一緒にいたい。同窓会にも、全員で集まって。全員で近況報告なんかして。


 涙はあふれ続けて、声が詰まる。きっと顔はぐしゃぐしゃで、ひどいことになってる。それでも、歌ってやる。霧生の分まで、歌ってやる。

 曲が終わって、3曲目に移ろうとする。その瞬間、お調子者の日比野ひびの久郷くごうが声を張り上げる。

「翼ー!」

 と日比野が叫んで、

「今までー!」

 と久郷が叫ぶ。そして打ち合わせ通り、私たちは全員で、

「ありがとう!!」

 叫んだ。霧生がもういないことは、学校中に知られている。だから、下級生はほとんど全員涙に溺れた。特に男子バスケ部。


 ……歌いたかった。一緒に卒業したかった。告白したかった。みんなで一緒にいたかった。同窓会に全員で集まりたかった。全員で近況報告をしたかった。


 したかったな、どれもこれも。


 ねぇ、霧生……


 今まで、ありがとう。

最後は、エピローグ。これで、すべて終わりです。

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