過去 12
「神納さんの好きな人ってさー、翼?」
2年生のみのイベント、秋のクラスマッチが近づいていた。リレーの練習中に、こっそり神納さんに話しかける。
「……はぁ? いきなりなに言ってんの、栗源」
「でしょ?」
相手に好きな人を吐かせる……いや、教えてもらうコツは、決めてかかること。自信たっぷりに微笑んだら、誰だって真実を教えてくれる。
普段は冷めきった瞳で周りを見てる神納さんも、引っ掛かる。
「なんで私の好きな人を聞きたいわけ?」
明言はしないかー。だよね、警戒心強そうだし。
「神納さんってミステリアスだから、気になって。恋とかすんのかなって」
言えないな、翼に頼まれたなんて。
同じ塾だから面識あるだろ頼む、なんて……。教室が全然違うんだけど? 緑の看板の塾だから、教室いっぱいあるし。
……寺で小さく教えるやつと一緒にすんなうちが上だ!
「で? 確かな情報だけどね」
「情報源は?」
「えー言えないー。その人が可哀想。怒るんでしょ?」
「バカだね。私が信頼する人は、そんなことしない」
信頼する人? 誰かな、女子だといいな(翼の精神状態的に)。
「まぁいいや。ここを受験する前から、あんたのことは知ってるし。そうだよ。あんたが確証持ってたのかは知らないけど」
わぁ怖い。さすがは神納さん、分かってるね。
「俺のことは信用してくれんの?」
「ん? 頭がいいやつは嫌いじゃない」
俺と神納さんほぼ互角だから……それ言うと、自分も頭いいって言ってるようなもんだけど。でもま、神納さん本当に頭いいし。
「天然は嫌いだけど、男子だしいいや」
「え、俺って天然?」
「自覚なしかよ」
よく言われるんだよねぇ。天然じゃないのに。




