「出会い」
夢をみた。
とても悲しい夢だった気がする。
真っ暗で、怖くて、寂しい、夢だった気がする。
そこで俺は、一人の少女を見たんだ。
長い銀髪の紅い眼をした、美しい少女を。
彼女は泣いていた。
俺が、彼女をーーー泣かせてしまったのか?
わからない。後少しで思い出せそうだ………
うーん………
ーーー「…な ……いな ………椎名!!!」
「あっ!!!!はい!!!?」
ヤッベ俺寝てた⁈現国の西山の授業だったら殺される!!!!
「ブッハwww!!!!先生かと思った⁈ブッw俺だよ、俺。」
目の前にいたのは、現国の西山ではなく、赤髪で染められた頭の出来の悪そうな奴だった。
「……赤神、俺もしかしてずっと寝てたのか?」
「一時限目の中盤あたりではもう寝てたな。」
「あー、今昼休み?」
「放課後。」
oh……いつのまにか学校終わってた。
こいつの名前は赤神零弥。
俺の小学校からの幼馴染で、アホな奴だ。
観察してて飽きないな。
「そうか…夏休み前だから授業早めに終わるんだったな。」
「そゆことー。健全な男子高校生らしく、ゲーセンでもいこーぜー。なあ椎名」
「ゲーセンに行くことが健全である理由になるのか、甚だ疑問に感じるな」
「まあまあ特に予定もないんだろ?ないはずだ!奇遇なことに俺もないんだよー!これはゲーセンにくりだすパターンじゃないか!!」
「何いつもは忙しいような口ぶりなってんだよ。お前も俺も24時間営業で暇人やってんだろ」
「細かいこと気にするとハゲるぜー?さぁいこう!」
「わりぃ、俺今日はやめとくわ」
「ん?なんか予定でもあんの?」
「ちょっとな」
「なら仕方ないか。俺は心霊写真が撮れるまでプリクラやってるとするわー。じゃあまたなー」
…こいつならホントにやってそうで怖い。
……俺もそろそろ行くかな。
今朝の話
机の中にこんな手紙が入っていた。
『椎名命くんへ。ミコトくんに大事な話があります。放課後屋上に来てください。待ってます。』
…どこかで見たことがある字だな。
赤神のいたずらか?
いや、あいつの字じゃないな。
これはーーー
……。
ま、どうせ暇だし行ってみるか。
ってことで、俺は屋上に向かった。
階段を登る途中、厄介な奴に見つかってしまった。
「ミコトぉーっ!!おーいっ!!ちょっと待ってってばー!!」
3階の廊下からワンサイドアップのショートヘアをした小柄な女の子が俺の名前を呼ぶ。
「よお結衣。そんなに慌ててどうした?」
彼女の名前は高峰結衣。
こいつも小学校からずっと一緒の幼馴染だ。
俺と赤神と結衣の三人は家が近くて昔からよく遊んでいた。
「どうした?っじゃないわよ!!!……もしかしてミコト、あんた今日あたしと当番なの忘れてるでしょ?」
「あっ」
「はぁ〜。あたしが黒板消すのも、日誌書くのも、戸締りするのも、全部やっといたんだよ?」
「かたじけない…」
「この借りは返してもらわないとね〜」
彼女は笑う。俺は笑わない。
「なっ、何をすれば…」
「ギャラクシービックバンオーバースーパーデスジャンボパフェ。奢って♪」
……確か7800円の、頭おかしいんじゃねーかって思うほどでかいパフェだ。
事前に注文してからしか食べることはできなく、常連しか頼めない裏メニューだとかなんとか。
てゆーかなんだよ『デス』って。
殺す気じゃねーか。
「確か、それって常連しか頼めないんじゃ…」
「安心して!!!あたし、常連だから!!!」
ですよねー。
てか明らかに当番の仕事すっぽかしただけの借りに対して釣り合ってねーだろ!!!
7800円だぞ⁉
勿論反論する勇気はないけどな!!!
「……御意」
「じゃあ日時は追って知らせるから!!!絶対忘れないでよね!!!」
またねーっ♪と笑顔で去っていく結衣。
それを見送って俺は屋上へ足を進める。
「……誰もいねーじゃねーか」
屋上には誰もいなかった。
やっぱりいたずらか。
呼びだすだけ呼び出して放置ってのもなかなかどうして投げやりないたずらだ。
こんなことなら赤神とゲーセン行けばよかったかなぁーーーー
「声をあげるな」
……背後から声が聞こえた。
さっきまで確かに誰もいなかった。
どこから出てきた?
いや、それよりも、なんだこれは?
俺みたいな素人にもわかるこのーーー
殺気は
「何も動くな。何も発するな。何も怖れるな。お前はただ俺の言葉を聞くだけでいい。」
男は言う。
男はまるで自分に言い聞かせるように、
強い口調で言う。
「これから起きることを目の当たりにしても、強く生きろ。絶対に諦めるなよ。救いは必ず存在する」
……?
こいつは何を言ってるんだ?
「わからなくてもいい。いずれ理解した時に思い出せ。それとーーー」
「今度は、泣かせるなよ」
そう言うと同時に殺気が消えた。
いなくなったらしい。
だが俺はしばらく動くことができなかった。
あいつは何が言いたかったんだ?
何者なんだ?
ただデタラメを言ってるようには聞こえなかった。
不吉だ。不吉だ。不吉だ。
「……帰るか」
屋上から下りる途中、男を捜してみたが、よく考えると声しか聞いてないから姿が分からないので諦めて学校を出た。
家に着くと玄関の前に誰かいた。
それは、透き通るほど綺麗な銀髪の女の子だった。




