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転生したら剣だった。  作者: 矢田 悠進
9/9

最終話

満身創痍ながらも、最初に立ち上がったのはワードだった。

「フレソディア……お前、凄い能力を隠し持ってたんだな……」

「いや、俺自身も知らなかったんだ。悪いな、もっと早く気づけなくて」

「いや、いい。お前のおかげで、誰も死なず、兄さんを止めることができた。ここから先は、俺や、リィラでどうにかしなくちゃな。フレソディアは、少し休んでてくれ」

ワードは俺を持ち上げ、ラッキーにしまった。

「お疲れ様っす!兄貴!」

何故かその声は、ただ勝利したことへの労いじゃなくって、もっと大きなことに対しての言葉みたいに聞こえて、それで……。











「ん……」

次に目を覚ました時、俺は何か柔らかくてあたたかい感触に包まれてた。

「お、お兄ちゃんっ!?」

「んん……?リィラ……?」

「りーら?私だよ!妹の璃々!名前ちょっと間違えてるし、やっぱりどこか頭に悪いところが……まってて!今お医者さん呼んでくる!」

「まってくれ、ここどこだ?」

「病院だよ!お兄ちゃん線路に落ちて電車に轢かれて……覚えてない?」

あ、思い出した。俺は電車に轢かれて、それで、そのまま。そのままどうしたんだ?死んだと思ったが死んでいなかったようだ。うーん、それでそのまま長い夢を見ていたような……。

「でも本当にラッキーだったね、後少し早く落ちるか、電車が遅く止まってたら、死んでたって……」

「ラッキー……そうか、ラッキーだったのか……」

ラッキーという言葉にムズムズする。

「ん……?」

俺は妹の座っていた椅子にあるものが置かれているのに気づく。

「あ、これ?お兄ちゃんの好きなクロスワードだよ?けっこう難しいね……」

「クロス、ワード……クロスワードか……ん、ここは、サンスーシだぞ」

「うぇ、よくこんな高難度のできるね。ん?やっぱり頭に異常は無いのかな?あ、お医者さん呼ばなきゃ!待っててね」

「おう、ありがとな璃々」

妹の璃々は中学生だ。学校帰りにお見舞いに来てくれたのだろうか。ところで、璃々に良く似た少女と最近出会った気がするのだが、誰だったか。年齢も、名前も似ていたような覚えがあるが、朧げである。

俺はぼんやりと病院の天井を見つめながら、妹が医者を連れてくるのを待った。



それからしばらく入院生活を送り、体にも異常無しと認められたので退院することになった。

しかし、退院する日の朝、ちょっとしたハプニングが起こった。なんと、起きようとしたら金縛りにあったのだ……!

「あ!?あんだこれ!?体が動かねえ!?目も開かねえし!」

すると、脇から声がする。

「そりゃお前、剣だからな。まず目なんて無いだろ」

「でもフレ君、一人で動く能力持ってるんじゃなかったの?」

そちらに意識をやると、仲間の顔がある。

「ワード、リィラ……!そうだ、あの後どうなった!」

「どうなったじゃないぞ、お前突然喋らなくなるんだからな」

「記憶喪失になる前とおんなじだったっす!今回はちゃんとオイラたちのこと、覚えてるっすか?」

「おおラッキー……お前も元気か?」

てか、俺が転生する際、前の人格はどっかいっちゃったってことか?気にしたら負けかな……。

「あの後、兄さんは正気に戻って、罪を償うことを約束してくれたよ。俺たちもできる限りサポートしていくつもりだ」

「やっぱり聖剣を騙るあの剣が黒幕だったみたい。私たちの怪我もだいぶ治ったし、一件落着かな」

それを聞いて、ぐっと肩の荷が降りる。

「それはよかったぜ。……じゃあ、俺はそろそろ行くな」

「どこかに行っちゃうの……?」

リィラが不安そうな面持ちで尋ねてくる。

「ああ……待ってる人がいるんだ」

「そうか……また誰かを救うのか?お前はきっと、本当の聖剣なんだろう」

ワードは曇りのない顔をしていた。

「そんなんじゃねえよ……あの魔法、絶対俺は邪剣だろ!突然お邪魔するかもしれねえぞ?」

「兄貴なら大歓迎っすよ!」

「そう言ってもらえると嬉しいぜ。ラッキー、それまで俺の体、大事に守っておいてくれ」

「任せてくださいっす!」


「そんじゃあな、リィラ!ワード!ラッキー!」

「うん、またね」

「世話になったな」

「兄貴との日々、楽しかったっす!」



「ッ!」

俺は目を覚ました。腕や足があって、顔にパーツがあって、それらを動かすことができる。

「夢……なのか……?」

この奇妙な出来事は、夢なのだろうか。それとも本当に、俺の精神は異世界を旅していたのだろうか。



・・・と、当時はそう思った。当時、というのは、実はこれは6年前の出来事で、暇ができたのでノートに書き起こしているのだ。

もうあんなに前の出来事を、つい昨日のことのように覚えている。あの時の胸の熱さを、さっき起きたことのように思い出せる。

だから俺は、彼らとの出会いと別れを、本当にあった出来事だと信じている。ーーーーー




〜終〜


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