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第3話 トレーニングルームで練習中

 固い床の感触と同時に視界が開ける。

 目の前に広がるのは一定間隔で格子状に区切られた床と壁で囲われただけの無機質な部屋だった。

「おー……これが噂の不評酷評で有名なトレーニングルームかぁ……」

 確かに評判通り、世界観ぶち壊しである。

「いらっしゃいませ、ハル様。来て早々、中々の言い様ですね」

 周囲を見渡しながら呟いていたらどこからともなく女性の機械音声が響いた。

「おぉー、この声もファンタジーぶち壊しだねぇ」

「ここはトレーニングルームなので」

「冷めてるなぁ」

 私は肩をすくめ、声の主に呼びかけた。

「でもまぁ、しばらくは通うことになりそうだから仲良くしよう。名前とかあるの?」

「いいえ、私はただのシステムメッセージですので」

「じゃあ、システムさんと名付けよう」

「かしこまりました」

 まさかの了承してくれた。

「それじゃあ、システムさん。早速練習したいんだけど」

「はい。空を飛ぶ練習ですね」

「何も言ってないんだけど」

「システムさんですからね。会話ログもしっかり把握しています」

「こわっ」

「怖くないですよ。とりあえず、こういう練習はどうでしょう」

 システムさんの言葉に反応して、格子状に区切られていた床の一つがせり上がり、しかしそれはちょっと突き出た高さで止まった。感覚でいえば階段の一段分くらいだ。

「まずはこの高さに乗り降りしましょう」

「ジャンプで乗れない?」

「翼を広げた状態でジャンプで乗ってみてください」

 言われたとおりに翼を広げる。すると両腕の重さがずしっとかかるような感じがする。

 そのままジャンプしても上手く飛び上がらず、何とか段差の上に乗れたものの、着地したときもバランスを崩して危うく倒れそうになった。

「おっとと……なるほど」

「翼の関係で重心が変わっていますので。まずは感覚やバランスを覚えていきましょう」

「思ったよりしっかりとしたメニュー考えてくれるね」

「折角頼ってくれていますので」

「頼もしい限りだ」

 そういうわけでまずはシステムさんの言うとおりに翼を広げた状態でちょっとした段差をジャンプで乗り降りする。

 最初は安定せず、着地のたびにふらついていたが、何度かやっていくうちに安定してきた。

「だいぶ良くなりましたね、そろそろ次のステップにいきましょう」

 システムさんの声が響くとせり上がっていた床が再び動く。今度は私の膝くらいの高さで止まった。

「これまた、絶妙な高さだねぇ」

「ええ、次はこの高さで乗り降りしてみてください」

 先程と同じようにジャンプで乗り降り。高さが変わっただけで結構ふらつく。数回こなして慣れてきたところでシステムさんから提案が。

「飛び降りるときに羽ばたいてみてください」

 言われたとおりに降りるときにひと羽ばたき。すると身体が大きく傾いた。

「うにゃっ」

 そのままべちゃっと全身で着地。痛くはないがなんともみっともない。

「右の羽ばたきが強いみたいですね」

「……冷静な分析ありがと」

 起き上がってもう一回。次は力加減を意識しながら。しかし、これも上手くいかずに全身で着地した。

「まだ右が強いですかね」

「……うーん、難しいなぁ」

 左右均等に動かさないと身体が大きく傾く。ひと羽ばたきでこんなになるなんて。

 三回目。今度は何とか足で着地することができたが、前につんのめりそうになり、数歩前に歩み出て踏ん張った。

「上手くいけましたね」

「採点あまあまだねぇ」

 しかしちょっとコツがわかってきた。その感覚を忘れずに練習を続け、ふらつきはするものの、なんとかその場で着地できるようになった。

「いい感じですね。ではそろそろ次のステップへ進みましょう」

「スパルタだぁ」

 いやはや、練習するだけだったのに楽しくなってきた。

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