第1話 只今、キャラメイク中
「ふーむ……」
今、私の目の前に全身を映すほどの鏡が鎮座していて、そこに私のゲームでの姿が映っている。
髪色を変えたり伸ばしたり。鏡に映る姿を確認しながら手元に表示されている設定ウィンドウをポチポチと弄る。
「……黒よりかは明るめがいいかなぁ」
色々と弄ってひとまず茶色に落ち着ける。髪の長さは……リアルだと短いから長めにして、でもそのままだと鬱陶しいから後ろにまとめてポニーテールにする。
私が今行っているのは、今日から正式サービスの始まったVRMMORPG『アセリア・オンライン』というゲームのキャラメイクの真っ最中だ。
「よっと」
顔を大体決めたので次に翼。改めて腕を持ち上げると、自身の身体を覆い隠せるほどの巨大な翼が腕の代わりに生えている。
私は『ハーピィ』という種族を選んでいるのだ。ファンタジーではちょいちょいモンスター側で出てくることでお馴染みなあのハーピィだ。
こんな珍しい種族が選べるのがアセリアの面白いところだ。
さて、改めて腕兼翼を広げる。
「いやぁ……思った以上にでかいわ重いわ」
感覚としては腕とマントが一体化してるようだ。それと完全に翼になっている……というわけではなく、途中で指が生えていて、物を掴んだり持ったりすることもできる。
「骨格とか関節とかどうなってるんだろ……というのは、聞いちゃいけないお約束か」
果たしてこの翼で飛べるのかどうか不安になる。とりあえず動かせるから今はこれでいいとする。
さて翼の色を決めていくのだけど、ひとまず髪の色に合わせて茶色をベースに。そこに白と黒もちょちょっと……と、なんだか雀チックなカラーになってきてるなぁ。
そんな感じで、キャラメイクで四苦八苦しているとメッセージアプリの通知が届いた。アプリに繋ぐと聴きなじみのある声が聞こえてくる。
「やっほー。ハル」
通信先の人は通称赤さん。私のゲーム仲間だ。
「やっほー。赤さん」
「アセリア、ログインしてる?」
「今キャラメイク中。もう少しでできるよ」
「了解。じゃああたしのキャラのスクショ送るね」
メッセージアプリから画像が届き、私はそれを開く。そこには赤い毛並みのワーキャットの自撮り画像が映っていた。
「おー、ワーキャットにしたんだ」
「久々に魔法職をやってみようと思ってね。あと、名前は『スカーレット』だから」
赤さんが赤さんたる理由は、この赤へのこだわりだ。大体赤毛だったり、名前が赤に関するものだったり。
「ハルはハーピィだっけ?」
「うん」
「大丈夫そう? バードマンとハーピィは結構ピーキーな性能だって聞くけど」
「知ってる。ベータテストのレビューは色々読んだからね」
「まぁ、ハルなら何だかんだ使いこなせるとは思うけど……大変ならキャラ変えるのも考えなさいよ」
「はーい。まぁ、何とかなるでしょ」
とまぁ、そんな話をしているうちにキャラメイクも終わった。結局雀チックなカラーで落ち着いた。
「よし、完成……かな。今から行くよ」
「オッケー。お城の近くで待っておくね」
一度赤さんとの通信を切ってメッセージアプリを閉じる。
そして最後の微調整と、キャラクターの名前欄に『ハル』と入力。これで私の『アセリア・オンライン』での姿が完成した。
茶色の髪を後ろに束ね、腕の代わりに巨大な茶色と白色の翼、差し色にちょんちょんと黒を添えて。
次に視線が行くのは下半身。太ももらへんまで茶色い羽毛でモフモフとしており、膝から下がシュッとした鳥脚となっている。
服装は動きの邪魔にならないようにタンクトップとホットパンツみたいな服を選んだ。何とも健康的な服装だ。
「改めて見ても雀チックだなぁ……うん、雀チック」
鏡で自分の姿を見て何度も雀チックとつぶやく。何だかんだで気に入っているのだ、雀チック。
「それじゃ、始めますか」
私はそう呟くとゲームウィンドウを開いて『start』のボタンを押した。




