ヴァレットプルーフ・ハート その1
「……リル、コリオ、この2人に繋がらない。まさかとは……思うがな」
「おかしな事を考えるのはよしましょう。今はとりあえず、スカイフォール国立研究所の詳細な情報を調べることが任務です」
「といっても……今、目の前にあるこのクソッタレ研究所の情報がそこらへんに転がってるとは……思えねーけどな」
ルクセルとフィオリの目の前には、色とりどりの宝石が飾られた二つのショーウィンドウと、その間に挟まれたガラス張りの扉がある。中は見る限り豪華絢爛で眩しい。
スカイフォール国立研究所、なんと信じがたいことに地図に記されていた研究所の位置は何度試してもこの店だった。
「これどう見ても宝石店ですし、誰かさんのせいでもう政府機関には入れませんし、とりあえずは周辺の地理を確認しておきましょう。激戦は免れません」
仲間を待ち、数で制圧する。それが一番手っ取り早い。下手したらアメリカを敵に回す可能性のある事だが、それ以上の価値はある。
「それしかやることが無いってのも暇だな。しょうがないのは分かってるけどなぁ」
時刻は四時半。開店中の店がほとんどで、周囲に一般人は多く、ここで戦闘を行うのは少々難しいかもしれない。他に研究所へ入れる場所があるか探しておかなければ。
「ここが研究所っていう確証があるのかい?そこのお二人」
二人の視線が突然現れた一人の男に集中する。路地を我が物顔で進み、微笑みながらこちらて歩んでくる。
腰の引き締まった白衣を纏い、琥珀色の髪にフードを被っている白人の男。細い鼻と虚ろげな瞳が妖しいオーラを醸し出す。
「そこで止まれ。近づくんじゃあねェッ!」
「…お互い……自己紹介といこう、私はラービー・ナナナ、能力の名は『ケミカル・ロマンス』。そちらは何か言いたいことはあるかい…?Mr.オーギュスト=フランソワ・ルクセルとMs.スティリード・フィオリ……」
ラービーという男はルクセルの注意を聞かずにどんどん近づいてくる。どうやらそのつもりらしい。
名前も、本当の性別も知っている奴に問答は不要。
「あんたがそのつもりならこっちも覚悟は充分だ。十中八九敵ッ!否応なしに先手必勝だ!」
鋼鉄のワイヤーが左フックの如くラービーに迫る。
奴がどのような能力か。それを知るためには挑戦は必要だ。
「………」
何食わぬ顔で、体を横に動かしただけでラービーはワイヤーを回避した。
必要最低限の動きで攻撃を回避する瞬発力が、能力によるものだろうか。それともただの奴の才能か。
「暴力は嫌いだ、話し合いでもしよう。何か質問はあるか?」
優越感に浸ったようなその顔が実に気にくわない野郎だ。
周りの一般人がこちらを見ている。やはり外で特異能力を使用すること=犯罪という意識があるせいか、離れていく物や、携帯を取り出し、どこかに連絡するものやカメラを向ける者がほとんどだ。
「クソッ……人が多いぜフィオリ」
二人は焦り始める。
これは見世物ではない。このままこの場に留まっていれば警察沙汰だ。
「……人目につかない場所でぶちのめす…が定石ですかね」
「隕石が使いやすい場所なら大賛成なんだがな」
「さてと……逃げますか」




