オーディナリー・ワールド その5
アーリー・エクトスには一つの趣味がある。
それは『ペイパー・ゴッド』によって紙にした女性、その他の生物を額縁に入れて飾ること。家には無数の紙が額縁に入れられ飾られている。
アーリー・エクトスには二つの特異能力がある。
一つは『ペイパー・ゴッド』。触れたものを紙にする能力。もちろん紙になったものは意思はなく、動くことも話すこともできない。紙に触れれば元に戻る。
そしてもう一つ、それが『オーディナリー・ワールド』。不死の能力だ。
なぜ二つ持っているのか、それは「ある男」から、大金をはたいて買い取ったのだ。社長のため金は十分にある、より「目的」を早く果たすために買い取った。
アーリーの手と頭は花が開花したようにグロテスクに再生し、不敵な笑みを浮かべる。
アレクは現在の『ファイネスト・アワー』の効能を解除し「紙にならない」という望みを叶えることもできるが、不死という能力を有し、もちろんアレク以外の物も紙として封じることのできるアーリーには結局は無力なわけだ。
今の状況ではアーリーを殺すことはできない、永遠に動けないように封印することも不可能。
「…………」
アレクは歯を折れそうな程に噛み締める。
「君たちはユノを助け出そうとしているのだろ?家庭の事情に手を出すなという戯言は言わないが…なぜそんなに自棄になってまで助け出そうとするのかが不思議でしょうがないのだよ。死ぬ前に一つ、説明してはくれないか」
「…簡単な事だ」
「…?」
「受け継がれる正義の意志…ってルクセルは言ってたぜ。……用は、困った奴がいたら助ける、それだけだ…それだけの単純な話だ」
アレクの視線は一瞬、アーリーの背後に移った。
背後から忍び寄る気配、策は練られている。
「そうか、この男のように単純で幼稚だ」
腕を掴んだ。
背後から迫る者、残った一人のくせに心もとないが、それはフェリックス・ジョーンズだった。
細めの丸太を両手に握り、振りかざしていたが、安直すぎた。
アーリーに腕を掴まれてしまった以上、もう防ぐ術はない。
「うおりャァァァァァア!!!!」
しかしジョーンズは紙にならず、丸太でアーリーの脇腹を殴り抜けた。
「!……既にあいつの能力がかかっていたか!」
ジョーンズには既に、アレクの能力によって「紙にならない」という望みを叶えていた。といってもジョーンズはただの教師、貧弱な力ではアーリーには勝てなかった。
アーリーは片腕でガードし、少しよろけただけで、全くダメージが入った様子はない。
アーリーは即座に胸ポケットから畳まれている紙を取り出す。
「低脳がァッ!!」
紙は瞬時に膨らみ、黒く煌めく姿を露わにする。
バンッ!!!――
「ッ…………!」
訓練でもしたのか、拳銃から放たれた弾丸は額に命中し、ジョーンズは人形のように地面に落ちた。
動く様子や苦しむ様子はなく、ただその場に倒れるのみであった。
だがこれだけが策ではない、続きは勿論ある。
「テメーの望みを言ってみなァッ!!!」
いつの間にか近づいていたアレクが、アーリーに触れた。
ただの賭け、死ぬか生きるかの山勘。
極限まで追いつめられたアレクがとった策は生か死かの賭けだった。
これほどのイカれた奴ならば望みが変わることはない、そう確信しての行動だった。




