戦の準備
リアス達はかなり広めのヘリ内でただただ休む。
「お前は今無力だリアス。ノミみてぇなもんだな」
「……」
リルはだらしない格好のまま腕だけを動かし、大きなアタッシュケースのようなものをたぐり寄せた。
「そこでこれだ。ホントは部外者には触れることさ許さねぇが、今回はしょうがねぇ。売ろうなんて考えんなよ?」
リルはアタッシュケースを寝転がった腹の上で開いた。
「何…?これ。変なの」
中には様々な物が梱包材のような物に固定されていた。
見た目はただの指輪やピアスの物、そしてあのペン型の銃に似た物。
「どこ製とかなんで持ってるとかは訊くなよ。まあ…ぜーんぶ特異能力対策つーか、対抗できるように製造された道具だ。ほら…あの…映画とかで見るだろ?」
全く想像のつかない物をリルはおもむろに、アタッシュケースごと渡してきた。
「それぞれの説明は面倒だからフィオリに訊いてくれ」
「…姉ちゃんは一体…何をやってきたの?」
「何をやったつーか…それも訊くな。さ、早めに慣れとけよ」
リルは誤魔化すように言うと、体を横に向けて目を瞑った。
リアスは諦めてアタッシュケース内に目をやる。
指輪に腕輪、ボタン電池のような物やUSBメモリに似た何か。ふと、リアスの脳内に一つの確信に近い憶測が芽生える。
「スパイ道具だ…」
一方、アレク達。
星の輝く夜空で、熾烈な争いを繰り広げる4人の視界から今度は失せないはずのものが消え失せた。
スラックの人間味溢れる断末魔が響いたところで、その場にいた全員は目を疑った。
「……!?」
死ぬ事を覚悟していた3人にやってきた希望が砕け散る。
傾いていたはずのジェット機が跡形もなく消えていた。
暗闇の夜空に姿を消したのか、はたまたスラックの新たな能力なのか、そこにあるはずの物が一瞬にして消え去っていた。
「ッ!…クッソォ!」
空中でアレクは歯を噛み締める。
「!……ぁ!?」
そしてスラックは驚いた表情をし、無意識に喉を鳴らす。
ジェット機が消えたことに対しての驚きも少なからずあったが、それ以上の驚愕の感覚が襲ってきた。
自らの不甲斐なさを槍で突くようなその人物。呆れているのか情けをかけているのか分からない顔が目に明確に入る。
「……寝言を吐く暇は与えない。死んでも仕事は遂行してもらう…逃げられると思うな。君は逃れられない袋の鼠…神の奴隷だ…さあ、3人をやれよ…」
爽やかな声から出される少々傲慢にもとれる態度はスラックの頭上から現れる。
スラック以外からは面識もなく見慣れない男だったが、遠目に映る姿からそれが誰かは不思議と理解できた。
ヘリコプターから横目で睨む若々しく凜とした顔立ちの男。スーツの下にはアクセントなのか、奇抜なファッションが顔を出す。
「まさか…あいつが…!なんでここに…!」
アレクとその男は目を合わせた。
「ユノの友達かい…?まあ、関係はないが…」
「アーリー……エクトス…!!」




