学校祭準備と呼び出し
「あたしのクラスではお化け屋敷やるんだー!めっちゃ本格的にやるから、楽しみにしといてね!ちなみにあたしがお化けやるのは一日目の午後なんだけど、一日目の午前は二人組で受付してるから、同伴もオッケー!だよ!はいっ、整理券!」
はつらつとした語り口の翔子ちゃんからは、お化け屋敷なんておどろおどろしいものの想像がつかない。お化け屋敷(物理)って感じだ。暗がりでいきなり背中蹴ってくるとか。あ、それは涼子ちゃんか。
「ああ?おれのクラス?……リス喫茶だよ……ちげえよリスじゃねーよ!アリス!アリス喫茶だよ馬鹿!あんた耳腐ってんのか!?……ふん、渡す奴もいねーからやるよ、それ。い、言っとくけど、おれは仕方なく協力してやったんだからな!どうしても人が足んねーっつーから、二日目の午前中だけシフト入ってやってんだからな!暇だったら売り上げに貢献しろよ!!」
涼子ちゃん絶対アリスだ。間違いない。あのサラサラヘアーに愛らしい容姿、おまけに抜群のスタイル。クラスの子たちもうまく丸めこんだものだ。だいぶ素直ではない感じだったが、整理券はくれた。これは晴れ姿をカメラに収めてあげなくては。よし、また実家に連絡だな。
「あたしのクラス?ふふん、聞いて驚け!じゃーん、コスプレ写真館しちゃうよ!つってもあたしらがいろいろ着るだけじゃなくて、お客さんがコスプレしちゃうんだー!背景とか衣装とかいっぱい用意するから、あたしと一緒に写真撮ろうね、なっちゃん!あたし、一日目の午後なら絶対いるから!はいこれ、整理券!」
アンリちゃんらしいというか、確かにアンリちゃんのクラスは派手目な子が多い気がするから、雰囲気的にぴったりだろうな。アンリちゃんの隣で写真を撮るなんてイベントは回避したいけど、いろいろ着てくれるなんて楽しみ過ぎる。ぜひ軍服とかの制服系にチャレンジしてほしいけど、和服もいいな。
「ちなみに、うちらのクラスが何するか覚えてる?そう、縁日。ナツははっぴが似合いそうだし、メイド喫茶とかよりはよっぽどはまってるよね。あ、別にそんな褒めてないよ。ナツとうちのシフトはそれぞれ一回で、被ってないから一緒には回れないね。えっと、ナツは二日目の午後かな」
射的とヨーヨーの他に、焼きそばの販売もすることになった。クラスに実家が居酒屋をやっている子がいて、焼きそばの道具や作り方は練習できるようだ。八人の焼きそば戦士が選ばれたが、材料がなくなったら終わり、というあっさりとした仕様で、楽しくやろうと気楽に準備している。ちなみにあたしは射的班で、延々とやたら複雑なゴム鉄砲を作っている。こいつがなかなかの威力なのだ。
あたしが出来上がったものの銃口あたりをかるく吹きながらアンニュイな顔で「ゴッドファーザー」とか言って射的班を笑いのるつぼに突き落としていると、教室の入口あたりがにわかに騒がしくなった。
「蒲原さーん、お客さん!先輩!」
「えっ、はーい、ただいま!」
自宅か!と腹を抱える射的班を尻目に入口に行くと、目を引く二人組が待ち受けていた。ちなみに、薫先輩、ではない。ちょっと期待したけどね。
「悪いね、蒲原。もしかして今、忙しかったか?」
「いや、全然です!どうしたんですか、竹本さん」
「ちょっと頼みたいことがあるんだ。なあ桃井」
「ええ、ちょっとここじゃ話せないことなんだけど、一緒に来てくれない?」
体育委員長こと竹本千春さんと、生徒会副会長の桃井理恵さんが、一介の元鬼女に何の用だろうか。内心首をかしげながらも、もちろん大丈夫ですと頷いて、持っていたゴム鉄砲を近くにいた栞ちゃんに預け、教室を後にする。
連れてこられたのは、今は懐かしい委員会棟のたいへん狭い体育委員会室だった。




