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0 異世界漂流の巻 7

異世界に「忍」と読める漢字があるかどうかだが、まぁそう見える模様が書かれていたという事でいいだろう。

書いてからそう思いついたのでそういう事になった。

 緊張しながらも身構える吉良(きら)

 だが男は剣を無造作に肩へ担ぐ。警戒している様子は無い。


 剣というよりは刀か。鎧はどことなく和風である。

 猫背なせいもあり、大きくは見えない。

 メガネをかけた陰険そうな目。頭は無毛で禿げているが、太く長い毛の束が何本か垂れ下がっている。


 奇怪なその男は、値踏みするように吉良(きら)を見た。

「召喚されたのか、お前ら。その格好‥‥もしかして日本人で、学生か?」

「え? あ、はい!」

 驚きながらも頷く吉良(きら)

 すると男は刀を下ろす。

「ふぅん。ならワケを話してみな」



――かくかくしかじか。吉良(きら)達がいきさつを説明すると――



 禿頭の戦士——サイシュウ、と彼は名乗った――がふむふむと頷く。

「なるほど。状況からして、嘘じゃねぇんだろう」

「あの、俺達の同級生を見ませんでしたか?」

 訊ねる吉良(きら)に、サイシュウは肩を竦めた。

「何人か死んでたぜ。だがお前の話よりは少ないな。脱出して、魔王軍残党に連れていかれた奴らもいるんだろう」


 同級生達が悲痛な顔を見合わせた。

 級友の死と、危険への恐怖が、彼らの心に暗い陰を落とす。

 それを感じつつ、吉良(きら)はサイシュウへ頭を下げた。

「あの‥‥すいませんが、助けてくれませんか?」

「ああ、いいぜ」


 あっさりと出る承諾。

 吉良(きら)の方が面食らってしまう。

(冒険者なら、お金を取る筈だけど‥‥)

 藪蛇になるかと思いつつも、やはり今訊いておいた方がいいだろうと吉良(きら)は質問した。

「お礼は、その、ここまでに拾ったお金が少々‥‥でも足りるかどうかはわかりません」

 だがサイシュウは平然としたものだ。

「お前らの話だと無一文だったろうからな。まぁ気にするな、人里までは案内してやる。その後どうするかはその後の話だな」



――吉良(きら)達一同、サイシュウの先導で部屋を出た――



 石造りの通路を進む吉良(きら)達。

 部屋を離れると、(たお)れている同級生を時折目にした。皆は目を背け、悲痛な顔でその側を通る。


 さらに、モンスターが立ち塞がった。だがゾンビもスケルトンも、サイシュウの刀が一閃するとことごとく倒れる。

 無造作に見える剣筋だが、今の吉良(きら)にはわかった。自分のような()()()()()の技量ではない。

(相当な手練れだ。刀ってああ使うのか‥‥)



——その後、別の部屋で——



「来たぜ。右側は任せた。俺が加勢するまで持ち堪えな」

 ゾンビの群れを前にそう言って、サイシュウは左側へ斬り込んだ。

 吉良(きら)は群れの右側へ向かって剣を振るう。


(こう‥‥か?)

 サイシュウの剣筋を見て、戦い方を意識する吉良(きら)

 ゾンビは身を切り刻まれるのも構わず、掴みかかり、噛み付こうとしてくる。

 だがそれらを次々と斬り捨てる吉良(きら)。完全に一方的だった。

 しかもじきに自分の担当した敵を全滅させたサイシュウが加勢に来てくれたのだ。

 ほどなく、ゾンビの群れは全てが死者に戻った。


(ひや)っとするわね。心臓に悪いわ」

 ソフィアは溜息をついた。



――その後、別の広い部屋で――



「来たぜ。右側は任せた。俺が加勢するまで持ち堪えな」

 スケルトンの群れを前にそう言って、サイシュウは左側へ斬り込んだ。

 吉良(きら)は群れの右側へ向かって剣を振るう。

(やっと掴んだ気がする‥‥)

 防御を主体に、攻撃は敵の踏み込みを狙ってのカウンターを心がけた。

 知性の無い骸骨には有効だったらしく、脆い白骨を砕き、徐々にではあるが数を減らす事に成功する。

 敵の剣を受け流し、危険を感じたら大きく飛び退く吉良(きら)

 しかもじきに自分の担当した敵を全滅させたサイシュウが加勢に来てくれたのだ。

 ほどなく、スケルトンの群れは全てバラバラの白骨となって散乱した。


「なんか‥‥ずいぶんと上達したような」

 ソフィアはぽかんと呟いた。



――その後、さらに別の広い部屋で――



「来たぜ。右側は任せた。俺が加勢するまで持ち堪えな」

 ゾンビとスケルトンの混合部隊を前にそう言って、サイシュウは左側へ斬り込んだ。

 敵の動きを見つめて、吉良(きら)は群れの右側へ向かって剣を振るう。

(わかるぞ。剣の、自分の体の使い方が‥‥)

 動きの鈍いゾンビの首を剣で叩き落とす。

 盾で身を守るスケルトンにゾンビの胴体を押し付け、バランスを崩した敵に飛び足刀! 頭蓋骨を蹴り飛ばされ、スケルトンが崩れ落ちた。

 鮮やかなトンボ返りで敵の単調な攻撃を避ける吉良(きら)

 必殺の剣とカラテで攻撃を繰り返し、低級な不死の魔物(アンデッド)どもを全滅させると、サイシュウが「おっ、やるじゃん」と褒めてくれた。

 吉良(きら)は剣をおろし、汗を拭って頷いた。


「え‥‥? な、なんで? 映画のニンジャみたいな動きになってるけど?」

 呆然とするソフィア。


(忍者みたい、か。あの金貨の力だろうけど‥‥手裏剣みたいな模様と「忍」の文字が刻まれていたあの金貨は、俺に一体どんな力を与えたというんだ‥‥)

 吉良(きら)はその謎に頭を悩ませていた。

【登場キャラ解説】

先輩冒険者 サイシュウ

 神獣・空亡の獣人。

 そのため特殊な力を秘めており、それもあってかつてはヘイゴー連合最強部隊の一人であった。

 最近壊滅した魔王軍との戦いにおいても最終決戦まで参加。魔王を討った勇者達とも知人同士であり、四天王最強最後の一人と戦った一員でもある。


 彼もまた別の世界から召喚されてきた転移者だが、故郷となる世界ではいわゆる「転生者」であった。

 そのため彼の主観では、この異世界インタセクシルは「二つ目の異世界」という事になる。


 乗機Sサンライザーは出力と装甲重視の、DD式分類方によるところの攻撃・防御型機。

 魔王軍との戦いの後、勇者パーティのツテで作成してもらった物。

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