2 状勢激動の巻 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
『どうするどうする? 君ならどうするゥ?』
人質をとったニスケー王タイコウサンは、得意げに、歌うように訊いてきた。
「助けろぉ‥‥」
剣を何本も突きつけられた機体の中で呻くアリン。
腕組みしながらマンドリオはそれを見下ろしていた。
『良い方法ではないが仕方あるまい。あやつの命でも惜しかろう。抵抗はやめてもらおうか』
彼らを前に、キラーは静かに呟く。
「わかった」
そして目も眩む速さで放たれる手裏剣!
それは甲高い音を立ててタイコウサン機の頭部に突き刺さった――!
『ウキーッ!? 話聞いてないのか?』
衝撃で揺れる操縦席で悲鳴をあげるタイコウサン。
だがキラーの声は、静水のごとく静かだった。
「戦闘を職業にする者は皆、死は覚悟の上で戦っている。あたら情けをかける事は、それを穢す事になる筈だ」
「え? え? ええっ!?」
一人驚きの声をあげるアリン。
だがキラーの声は、静水のごとく静かだった。
「アリン。お前の仇は俺がとる。全身全霊をもってな」
「全身全霊で助けろー!」
アリンが叫んだ。ちょっと泣いてた。
だがサイシュウがニヤリと笑い、機体をキラー機の横に並ばせる。
「へっ、覚悟を決めたら小賢しい理屈はいらねぇか。オレも手を貸すぜ、キラー!」
「やーめーろー! 私は何も決めてないー!」
アリンが叫んだ。泣きべそかいてた。
だがキラーとサイシュウを見てマンドリオが唸る。
『ぬう‥‥奴らは武士ですな。なるほど、人質など通じますまい』
『やむをえん。人質にトドメをさせ。その後、奴らを全力で迎え撃つのじゃ!』
タイコウサン王の指示が飛ぶ。
男達の強い意志はしかと伝わったのだ。
「昔の劇画みたいな流れやめろー! その話のどこに人質を始末する必要があるんだー!」
アリンが叫んだ。涙も鼻水も流れ放題だ。
だが全く気にせず、刃を突き付けていた兵士達の機体が、剣を振りあげた。
「うわー! 呪ってやるー!」
アリンが叫んだ。もう白目まで剝いていた。
その時‥‥キラーの肩で、ストライクが「シャー」と息を吐いた。
直後、戦場に響き渡る音が!
ヴォーヴォヴォー‥‥
「この法螺貝の音は?」
その音を聞いて訝しむサイシュウ。
皆が音源の方を振り向いた。
そこは森でも最も背の高い樹木の頂。
そこには‥‥何もいない!
『は?』
王とマンドリオを含めたニスケー兵達が一様に首を傾げる。
と、兵の一人が叫んだ。
『クマの奴がいねーぞ!』
見ればクマーベアーは鎖で絡めとられ、遠くの茂みへと引っ張られている。
鎖を手に茂みから立ち上がった影を見て、ニスケーの兵達が驚き叫んだ。
『ニンジャ!?』
そうとしか形容のできない紫カラーの機体——ヒエイマルが、マフラーを風になびかせて、ベアーを手元に手繰り寄せていたのだ。
※音とは反響するもの。ニンジャはそれを利用し、音を立てる時は必ず方向を誤解させるよう仕組む。
ニンジャの全ては虚、実を露わにする事無し。
ニンジャの世界では常識など一切通用しない——常識は通用しないのだ!
「は、はは、助かった。ニンジャの起源がコリーン国だからだな!」
嬉しそうにはしゃぐアリン。
※コリーン国の大王城壁画には、半裸の男達が組みあっている姿が描かれている。
コリーンの学者が唱える説によれば、これはニンジャの起源の証拠である。
ベアーを手繰り寄せると、ヒエイマルの五体はバラバラに分裂する!
肩へ腕へ、踵へ靴底へ、胸部へ背中へ、そして頭へ――ベアーの五体にそのパーツが装着された!
「おお! ニンジャが鎧になったぞ!」
浮かれるアリンは、モニターに表示されるHPが完全に回復するのを見た。
※この世界の機体には、データを数値化してモニターへ表示する機能がある。
その中には機体の損傷度を可視化した「HP」という数値があり、それで状態を把握できるのだ。
「ウェーハッハ、全てのステータスが上がっている! 覚悟しろ猿ども、三度の土下座を三回繰り返せ!」
勝ち誇るアリン。
そしてベアーが動いた!
振り回されるベアークロー! その精度もパワーも先刻以上、次々と兵士達の量産機が吹き飛ばされる!
「ウェーハッハ、ハ‥‥は?」
なぜか戸惑うアリンの声。だがベアーの動きは依然変わらない。
「‥‥操縦、利かない‥‥」
戸惑うアリンの声。だがベアーの強さは依然変わらない。
「なんでー!? 勝手に動くうー!」
喚くアリンの声。だがベアーの獰猛さは依然変わらない!
(操縦権をヒエイマルに奪われたのか? 俺の時となぜ違う?)
遠巻きに眺めながら考えるキラー。
まぁ考えてもわからないので、とりあえず兵士達は任せてタイコウサン王へ向き直った。
「形勢逆転のようだな」
タイコウサン王は顔と尻を真っ赤にして怒っていた。
その猿型機体が両手に金色の円盤を取り出す。
『ええい、こうなったらまとめて吹き飛ばしてやるわ! このSシンバルチンパンが搭載する強力なMAP兵器、爆音魔波でな!』
そのシンバルが叩き鳴らされる時、生じた破壊音波は周囲一帯を吹き飛ばすのだ!
一方、マンドリオは王に加勢しようとはした。
だがその行く手をサイシュウのサンライザーが遮る。
「おおっと、お前にはオレの相手をしてもらおうじゃねぇか」
睨みあう二組。
ハイマウンテンとニスケー、両国の戦いに決着がつこうとしていた。
設定解説
・昔の劇画みたいな流れ
昭和の劇画によると、男らしく生きる事は命より大切な事だ。
格闘技のリングで限界に挑むためには死を恐れてはならない。
むしろ一歩間違えたら死ぬ修行をどんどんやらねばならない。
というか普通は死ぬガチ死闘を男ならば戦い抜きたい筈なのだ。
今読むと剣と魔法の美少女動物園なんぞよりも遥かにファンタジーである。
まぁ面白いかどうかと問うなら確実に面白いのだが‥‥。




