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てんこもり ~帰宅部、異世界を征く  作者: Podos
第二章

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第46話 学術都市セレン

 投稿、再開します。

 今回はセレンでの学院生活一年目の大部分で、字数は15万文字となります。


 ヴェレーネ村を発ってから四日が経過していた。

 途中のイルサナ村を休むことなく素通りし、昨日、馬車は無事にセレン領に入る。

 セレンは一つの都市でありながら、広大な領地を保有していた。規模を考えれば複数の村を置いてもおかしくないのだが、セレンの統治者たちは頑なにセレンだけを守り続けている。

 草原の道を馬車は進む。

 ロランの話では、ほどなくセレンの街に到着するという。ここまで来れば何が起きても遅れることはない。走破せずに済んだようだ。

 胸を撫で下ろし、周囲を眺める。

 街道上には、旅行者の姿がいくつも見えた。

 冒険者の一行もいれば商人もいる。セレンが近い証拠だろう。

 迫る車輪の音に振り返れば、後方から馬車が迫り、速度を緩めることなく俺たちの馬車を追い抜いていく。

 華美な装飾が施された馬車。

 今のは貴族だな。記憶を辿るも、知らない紋章だった。

 どうあれ、この時期セレンに向かうなら俺と同じ入学組だろう。

 視線を草原へ戻す。

 この辺りは大雪に見舞われなかったらしく、進むごとに春の気配が色濃くなった。

 そろそろリードヴァルトの雪も消えただろうか。

 色とりどりの花や陽光の煌めく新緑を眺め、遠く離れた故郷に思いを馳せていると、不意に冬小麦の穂が視界に飛び込んできた。それは辺り一面に広がり、瞬く間に草原を覆い尽くす。

 耕作地――そろそろだな。

 俺が御者台から身を乗り出すのと、ロランが声を張り上げたのは同時だった。


「見えてきましたぞ!」


 街道の遥か先に、うっすらと黒い線が浮かび上がる。

 それは徐々に太さを増していき、聳える尖塔や外壁を越える建物が明瞭となっていく。

 あれがセレンか。

 小さな街ではないと思っていたが、リードヴァルトより何倍も広いな。

 左右に耕作地を従え、馬車は進む。

 近付くにつれ、外観が顕わとなる。

 目を引いたのは外壁の異様さだ。

 高い石壁には、びっしりと彫刻が施されている。鳥や獅子、それに無数の戦士。

 威圧感はあるが……まさかな。

 『鑑定』を発動し、思わず唸る。

 外壁に彫られた人間型の巨像は、すべてゴーレムだった。


「気付かれましたか」


 絶句する俺に、ダニルが話しかけてくる。


「セレンを守るのは壁ではなく、無数のゴーレムと言われています。有事の際は、あれが一斉に反撃してくるとか」

「無茶苦茶だな。攻める奴なんていないだろう」

「ええ。ゴーレムが設置されてからは、一度も戦場になっていません」


 当然だろうな。一瞥したかぎり、十や二十ではきかない。

 それほどのストーンゴーレムが一斉に襲いかかってきたら、どんな軍隊も殲滅される。勝てるとしたら強力な個人やパーティーだが、外壁の内側には魔法ギルドの幹部を筆頭に、無数の魔法使いがひしめいている。やっぱり無理だ。

 それにしても、動物は普通の石像なんだな。

 鳥は分かる。飛べないから動かしても大して役に立たない。他はなぜだろう。獅子に跨がる石の戦士が迫ってきたら、敵兵は泣いて逃げ出すと思うが。

 そんなことを考えていると、馬車が東門に到着する。

 門番はすぐに貴族の馬車と気付き、俺たちを脇へ誘導した。

 ロランが馬から下り、門番と話し出す。

 俺は御者台から門番を観察、少しほっとした。

 門番の装備は普通の武具。魔道具を装備していない。

 いくらセレンでも、一般兵士に供給するほど魔道具は無いようだ。


 門番は手渡された羊皮紙を一読、馬車の裏に回り俺へ挨拶する。

 そして積み荷を点検し入街税を徴収すると、あっさり街へ入る許可を出した。

 リードヴァルトを旅立ってから十一日目。

 ようやく俺は、学術都市セレンに到着する。



  ◇◇◇◇



 留学の(はなむけ)なのか、父が確保していたのは、かなりの高級宿だった。

 あてがわれた部屋で一休みし、階下へ降りる。

 丁度、全員が玄関ホールに集まり、『破邪の戦斧』、『深閑の剣』は出かけるところだった。

 俺が姿を見せると、マーカントが口を開く。


「ギルドに行ってくる」

「オヴェックの報告だな。ヴェレーネ村の皆も心配しているだろう。よろしく頼む。それで、ピドシオスたちも一緒に行くのか?」

「いえ、私たちは手紙の配達です」


 エフルトが応え、手紙の束を俺に見せた。

 実績や信用のある冒険者は移動の際、冒険者ギルドから書類や手紙の配達を頼まれることがあった。小遣い稼ぎができるうえ、ギルドにも好印象を持たれる。どちらにとっても得な話である。


「ついでにゴウサスの仕上も頼んでくるわ」


 ピドシオスが親指でダイラスを指し示す。

 馬鹿でかい袋を担いでいると思ったら、ゴウサスの革か。そういや、なめしが終わってなかったな。革は俺の取り分以外、売却予定である。Cランクにとって、ゴウサスの革は今更だ。それと俺の分だが、特に使用目的を決めていない。売るのはいつでもできるので、ひとまず確保しておくつもりだ。

 しかしオヴェックと違い、どちらも急ぎの案件ではない。

 斥候の性分だろうか。手紙や雑用がついでで、目的はセレンの観察かもしれない。


 ちなみに彼ら『深閑の剣』だが、宿に到着したとき一悶着あった。

 ただの同行者であるため、宿泊の頭数に入っていなかったのだ。それを知ったピドシオスは、薄情だの貴族だのと喚き散らす。結局、ロランに頼んで部屋を用意してもらった。

 ゴウサスの一件を除けば、彼らの探索で余計な戦闘を何度も回避できた。ただの同行者以上の貢献をしてくれたので、宿代くらいは持つべきだろう。父が。


「んじゃ、行ってくるわ」


 そう言って、皆はギルドに向かった。

 セレンの冒険者ギルドには興味あるが――そちらはいつでも行けるか。

 先に用件を済まそう。


「僕たちも行こう。手続きしに」

「では、馬車を回します」

「いらん。どうせ学院に入れば、街を歩き回るんだ」

「普通の貴族は、街でも馬車に乗るんですけどね。歩き回らず」


 うん、聞こえない。リードヴァルトを離れてまで、一々馬車なんぞ乗ってられるか。

 嘆くロランを伴い、宿を出る。

 俺たちが泊まっている宿は大通り沿い、街中央に位置する富裕層向けの一角にあった。

 セレンは東西南北に門があり、そこから中央を目指して大通りが延びている。商店や住居の規模を見るかぎり、危険から最も遠い中央の地価が高く、門に近いほど安いようだ。いくらゴーレムに守られていても、潜在的な恐怖はどの街でも同じらしい。


 カルティラール高等学術院は、セレンの中央西寄りにあるそうだ。

 行政を担う庁舎や魔法ギルドの本部も集まっているというので、その辺りがセレンの心臓部なのだろう。

 行き交う馬車や通行人に混ざり、俺たちは西へ進む。

 すぐに驚いたのは、ショーウインドウが存在したことだ。

 大規模なものではないが、一部の商店は壁に大きなガラス窓を填め込め、外から商品が見えるように工夫していた。おまけに割れにくいように保護魔法《物品護持(プリザーブアイテム)》まで掛けられている。ガラスの質が悪いための処置だろうが、結果としてより贅沢になっていた。

 これでライトアップされたら、前世と遜色ないな。

 歩きつつ、それとなく商品の武器に『鑑定』を発動する。

 やはりというか、魔道具だ。

 切れ味強化や耐久強化、特定の魔物への特効で、値段は金貨五枚から十枚程度。一瞬、手頃に感じてしまったが、前世なら五十万から百万ほど。まったく手頃じゃない。それでも、この価格はセレンならではだと思う。リードヴァルトなら、輸送と希少性の関係で価格は跳ね上がっていくはずだ。

 一応、手持ちで買える値段だが、今はやめておこう。

 まずは手続き。それに既製品を買うよりは、甲犀の剣やスティレットを強化したかった。買うにしても補助武器のダガーかナイフになる。急ぐ必要はない。


 視線を前に戻し、思わず足を止めそうになる。

 大通りが途切れているように見えたからだ。

 振り返れば、まっすぐに感じた石畳も、微妙な弧を描いている。


「どうなさいました?」

「いや、思ったより入り組んでいるんだな。行き止まりに見えたぞ」

「街中なんてそんなものでしょう」


 ロランは不思議そうに首を捻った。

 確かにそうだが、イメージとの落差を感じる。門付近ならまだしも、中央辺りは整然とした街並みが広がっていると思い込んでいた。実際はどこも乱雑。猥雑と言っても良い。枝道を覗き込めばすぐに折れ曲がり、先がほとんど見通せない。酷いときは建物の一部が道路に()り出し、道そのものを変形させていた。そのくせ高い建物が多いので、気を抜けば自分がどこにいるのか見失ってしまう。まるで迷路だ。

 防衛のためだろうか?

 なんとなく、違う気がした。


 アルシス帝国史上、最強と呼ばれる魔法使い、アルファス・カルティラール。

 七百五十年ほど前、故郷のセレンに若くして引きこもった彼を慕い、多くの魔法使いや知識人が集まってきた。瞬く間にセレンは最強の、しかも貴族のお手つきがない軍事力を有してしまう。当時のアルシス帝国領は今より狭く、バロマット王国やハーゼル統一王国との戦争に明け暮れていた。そんな戦乱の時代、独立した軍事力のアルファス一派は、人々に救いと映ったことだろう。

 必然、人口も急速に増加したはずだ。しかもセレンはとある伯爵が領有し、執政官を置いていただけの田舎町だった。たとえ公爵家のお膝元でも、アルファス一派を押さえ込むのは不可能、執政官では尚更だ。そんな状況に加え、人口は際限なく膨れ上がっていく。

 この街並みはその時の名残、執政官の嘆きかもしれない。


「この辺りのはずですが……」


 ロランの声に思考を中断する。

 いつの間にか商業区画から出たらしく、周囲の雰囲気が変わっていた。

 見回すも、それらしい建物はどこにもない。学院と言うからには、かなりの大きさのはずだが。

 ロランが通りすがりの男に尋ねると、枝道の一つを指さす。

 その道は馬車二台がすれ違えるほどの幅だったが、相変わらずの乱雑振り。どこに繋がっているのか、まるで分からなかった。

 男に礼を言い、俺たちはそれを進む。

 そしていくつかの角を曲がっていくと、ようやく雰囲気が変わる。

 小規模な飲食店や安宿、雑貨店が立ち並び、通行人にも若者の姿、学院生らしき姿が増えてきた。それらを眺めながら直角の道を折れたとき、道の先に巨大な建造物が出現する。

 あれがカルティラールか。

 両脇の建物に切り取られても尚、その大きさが想像できた。

 無言で進み、正門に到達する。


「少し見直したぞ、セレン」


 言葉と裏腹に、俺はその威容に圧倒されていた。

 正門から延びる石畳の先には、天を突くような尖塔を二基備えた学舎。その左右にも大きな建物が並んでいる。見渡しても全景が一望できなかった。

 奥行きもかなりありそうだ。

 敷地内では上級生らしき男女が並木の下で談笑し、まだ若い少年が付き人らしき男を連れて建物に入っていく。

 広大な敷地に巨大な学舎や施設。

 緑と灰色のコントラストを、俺は感慨深く眺めていた。

 これが七百年の歴史を誇る学院か。

 この先の数年、ここに通う。

 すり減った石畳を見つめ、人生の大きな区切り、その第一歩を俺は踏み出した。








●セレン到着時のステータス

 upは、ハンターフィッチ戦、直前との比較


名前  :アルター・レス・リードヴァルト

種族  :人間

レベル :18     (4up)

体力  :92/92  (25up)

魔力  :225/225(52up)

筋力  :13     (1up)

知力  :16

器用  :15     (1up)

耐久  :13+2   (2up)

敏捷  :17+2   (38:倍加)(1up)

魅力  :15


【スキル】

  成長力増強、成長値強化、ステータス偽装、言語習熟、高速移動、多重詠唱

  精神耐性5(1up)、氷結耐性2、鑑定4、調合6、追跡3、隠密4、気配察知3

  片手剣6、体術6(1up)、短剣術5、弓術3

  火魔法4、水魔法4、風魔法5、土魔法6(1up)、無属性魔法4、

  氷結魔法1、雷撃魔法2、変性魔法5(1up)

【魔法】

 ●初級

  火炎の短矢(ファイヤーボルト)鋭水の短矢(ウォーターボルト)疾風の短矢(ウィンドボルト)土塊の短矢(アースボルト)魔力の短矢(マジックボルト)

  氷柱の短矢(アイスボルト)雷衝の短矢(ショックボルト)

  火塊の槌撃(フレイムブロウ)水弾の槌撃(ウォーターブロウ)一塊の槌撃(ストーンブロウ)

  水流の盾(ウォーターシールド)旋風の盾(ウィンドシールド)魔力の盾(マジックシールド)礫土の盾(アースシールド)

  筋力上昇(フィジカルアップ)脚力上昇(ムーヴィングアップ)

  溶液作成クリエイトソリューション

【称号】

  転生者、帰宅部のエース(耐久+2、敏捷+2)、リードヴァルト男爵家の次男




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― 新着の感想 ―
軍用のライフルとかの値段考えたら50〜100万はまさにお手頃価格な気もする
[気になる点] 筋力は上がり幅が少ないですね。やはり地道な筋トレが必要なんでしょうか
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